第227話 勝機
化け物相手に数分間戦ってわかったことがある。まず、物理攻撃は皮膚が硬すぎて効果がない。魔法攻撃も物質系のものは物理攻撃同様効果がない。それ以外のものは俺に使えるものはないが、おそらく何かしらの耐性がある。見た目は皮膚が溶けて流動しているように見えるのに皮膚は金属並みに硬いとか反則だろ。
そしてこいつの攻撃力だが、基本的には俺の{不壊}を貫通することはできない。ただ、 {不壊}が発動していない時には一撃必殺クラスの威力を誇っている。
「ヴァァァァァァァァァァァ」
おっと攻撃は回避しとこう。
さて、こいつにこれまで有効だったのは{大地の覇者}の付随効果である地震のみだ。あれで重心が揺らぐには揺らぐが剣山大地によるダメージ自体は入っていない。
この状況から察するにおそらくダメージを与えることができないエネミーだ。何か他の勝利条件がある。ただ、倒してみろと言っていたことからおそらく時間経過が勝利条件になることはないだろう。魔のものと言っていた以上星属性の攻撃が有効な可能性はあるが、今からハンスを連れてくることなんてできない。というかこのエリア転移もチャットも完全に禁止されていて外と通信する手段がない。
さっきから何か隠されてないか見て回ってはいるが何も見つからない。こうなったら超高火力をぶつけてみるしかないか。{虐殺者}のクールタイム終了はまだまだ先だし。
回避しつつあちこちにアイテムを設置して回る。そしてそれら全てに線を繋ぎ、俺のいる場所まで繋ぐ。そして・・・
爆音が轟き、その跡地にいたのは先ほどまでとは全く姿の違う化け物だった。
設置したのは先生が作成した火薬を限界まで圧縮した爆弾だ。20個もあれば街一つ壊し尽くすことができるはずだ。ただ、そんなものを10個もしかも近距離に設置して倒すことができていない。それだけガードが硬いってことだ。ただ、状況から察するに耐性も弱点も変わってると考えた方が良さそうだ。外側のあの流動していたものがなくなって中身が見えたという感じか?
見た目は鬼だが、ところどころ皮膚が腐ってる。溶けてはいないが、さながら鬼のゾンビと言ったところか。
だが、未だ動かないのはなぜだ?こちらの出方を伺っているのか?いや、そういう雰囲気でもないな。
「ヴォォォォォォォォォォォォォォ!」
なんだ!衝撃波による全体攻撃か?いや、違う!
これはおそらく即死系統の魔法攻撃だ!ただ、こういう系の魔法では俺のことを生物として扱わない。つまり効果はないはずだ。
やはり効果はないが、こいつ速い!さっきまでもそこそこだったが、圧倒的に素早くなっていて、俺のAGIと対さないくらいの速度だ。ステータス解放されてないとはいえAGIには割と特化させたビルドだぞ?
攻撃はさっきまでとあまり変わらない。ただ問題は・・・
「スキル{影渡}」
さっきまでと違ってスキル詠唱が速い。まぁ、人間からしたら普通なんだが、隙のないそれも高速戦を仕掛けてくるような相手がスキルを普通に使ってくるのは普通にやばい。それもこいつ{影渡}以外のスキルを見せようとしない。おそらく隠して戦ってるんだろう。
ただ、こっちにもいいことはある。物理魔法ともに攻撃が通るようになっている。もちろん防御は硬いが多少ダメージは通っている。おそらく外側のアレが攻撃を吸収してたんだろうな。
これならこっちにも勝機はある!




