第210話 レガシースケルトンの異常性
いったいなぜあのタイミングでネイが入ってきたのかというとそれは戦闘開始から20分ほど経った時点まで遡る。
戦闘開始から20分時点で俺は脱出の望みをかけてネイにとあるチャットをしていた、
『なんでもいいから結界を張れるスキルを使えるようにできる装備を持ってきて』
と。
言葉足らずではある。ただ、ネイならこの糸を組んでくれると読んでのことだ。それほど長時間チャットを入力するほどの余裕はない。だから“使えるようにする”という表現を使用した。
そしてさっき、絶望の墓場に急いできたネイが、いまだデスポーンしていなかったスケルトンクイーンを発見し、再び条件を達成して例のブツを持ってきてくれたというわけだ。
「ネイ、ありがとね。」
「無事で良かったよ。まさか助けを求めてくるなんて。」
「アイテム効果が無効だったんだよ。付与するものは大丈夫だったけど、それ以外は全部無効。」
「それでギルド転移もできなかったと。」
「そ。それにしてもよくあんな早く来れたね。」
「スケルトンクイーンがデスポーンしてなかったのよ。多分あのエリアにプレイヤーがいる限りは消えないんじゃないかな?」
「そうかもね。まぁ、色々わかったから早速共有するよ。」
「それにしてもよくあんなんと戦えたな。俺たち瞬殺だったのに。」
「それに関してもネイが2回目にきた時になんとなくわかったから話すね。まずはあのエリア、《絶望王国》について。これはエリア名しかわからないけど、状況とか見た感じアンデッドの王国とその王様って感じだったかな。」
「レガシー・スケルトンってスケルトン以外も操るの?」
「なんかスキルで召喚できるみたい。」
「厄介だな。人間のアバターだとゾンビとスケルトンが入り混じるだけで、相当厄介だぞ。」
「もっと厄介なのはその数。スケルトン以外のアンデッドはさっき言ったように召喚によって出てくるんだけど、スケルトンは思いのままに思いのままの数を召喚するって感じ。種族、数、武器とかまで自由自在だね。」
「クイーンとどっちが多い?」
「圧倒的にレガシースケルトンだね。入った時点ではほぼいなかったけど、すぐ埋め尽くされたもん。」
「一度の召喚制限もないのね。なんというか、まだ本体の強さ聞いてないのに無理ゲーに感じてきたんだけど。」
「まだここからなんだけどね。まずはスキルかな。現状分かったのは読み方は省くけど、{死者の軍勢}{死の讃歌}{同胞の呪い}{魔力斬}かな。」
「それぞれの効果は?」
「{死者の軍勢}はその通り大量のアンデッドを召喚する。これがあいつがスケルトン以外を召喚できる方法に当たるかな。で{死の讃歌}これがおそらくだけど、15分間アイテム効果が使用不可になる。厄介なのは常にこれがかけられていること。」
「どういうことだ?」
「12分毎にかけ直すっていう意味とこっちが中に入らずとも常に12分毎に掛け直してるんだよ。しかもこれはフィールドにかかるスキル。」
「なるほどね。それで私の蘇生アイテムが機能しなかったんだ。」
「そういえば持ってるって言ってたな。ただ、アイテム効果が無効化されてるとなれば納得もいく。」
「だね。ただ、厄介なのは次なんだよね。{同胞の呪い}。これが一番厄介で効果がわからないんだよね。」
「なんで?何かしら分かったでしょ?」
「いや、何も。本当に何も起こらなかったし、わからなかったんだよね。」
「そう・・・それは仕方ないわね。」
「うんごめんね。で、最後の{魔力斬}これはシンプルで不可視の斬撃、というよりは座標指定の斬撃に近いかな。多分だけど、基本は対象を選択するタイプだから回避不能なんだけど、こっちが結界にこもってれば座標指定で中に飛ばしてくる。」
「最後の最後に。エグいのきたわね。」
「正直これが一番しんどかった。ネイがきてくれるちょっと前にうっかり{反撃領域}使っちゃったんだけど、その中に飛ばしてくるし、向こうもそれでしか攻撃を通せないって分かってるんだろうね。」
「なるほどね。それで、私たちが瞬殺された理由っていうのは?」
「そうだったね。それに関してもこの{魔力斬}を使用してるみたいなんだけど、ちょっと特殊なんだよね。」
「というと?」
「あのエリアっていわば天井に穴が空いて私たちはそこから落とされるわけじゃん?」
「だね。」
「その私たちからすれば入り口になる位置にセンサー式のトラップがある感じだね。自動的に{魔力斬}が発動するみたい。」
「なるほどね。」
「あくまでも憶測だけどね。でも切られ方的に{魔力斬}で間違いはないよ。」
「色々ありがたい情報も多かったわね。ともかく私は疲れたし、一旦落ちるわね。」
「私もー。1時間も戦うことになるなんて思ってなかったし。」
「そうね。それじゃお疲れー。」




