第21話 情報共有と計画
「ということで、《古代の遺物》と戦ってきたわけだけど、ゲルマにはまだ何も話してないし、キキョウも詳細は知らないから順に話すね。」
「戻ってこなかったから2人で心配してたんだぞ。なぁ、キキョウ」
「あぁ。まぁそれは昨日も言ったしいいか。それで詳細は?」
「暴走するまでは2人も知ってる通り。そして2人がやられてから10分くらいの時にひたすら耐え続けてて暇だったから、ステータスの確認をしてたんだけど、『フィールド効果により本来のステータスを開放中』って表示があったんだよね。私、本来のステータスなら人型になれるから人型になったわけ。そっちの方が動きやすいからね。その瞬間《古代の遺物》がしゃべり始めたんだよ。ちょうど15分が経過したところだったから、条件が人型のユニークプレイヤーがいることなのか、ユニークプレイヤーがいる状態で15分耐久することなのかはわからない。でも、相手のセリフからしてユニークプレイヤーが必要なのは確定だと思う。今後のアップデート次第では通常プレイヤーも挑戦できるかもしれないけど、今は無理だね。」
「ユニークプレイヤー、もしくはそれに準じた何かしらの力を持つ者限定でチャレンジできるクエストか。キキョウ、どう思う?」
「俺は昨日ちょっとだけ話聞いてるんだけど、その時に古来の力とか言う単語が出てきたんだろ。ユニークプレイヤーは古来の力を取り込んだことによってモンスター化したプレイヤーって感じなんじゃないか?」
「私も同意見だね。それで続きなんだけど、突然動きが速くなって、私の制限されてない方のステータスのAGIで何とか見切れるくらいだったんだよね。で、回避しながら、スキルで攻撃して何とか倒したんだけど、問題はそのあとであのゴーレムを倒した後、第二形態に入ったんだよ。あのエリアにあった砂。そのすべてを操って10個の歯車による攻撃を仕掛けてくるって感じかな。歯車を破壊するたびに少しづつ相手の操れる砂が減っていく仕様だったみたいで、だいぶ時間掛かっちゃった。10個が最大数で最小数みたいだったね。最後とか小さすぎて見えなかったし。」
「それはそれでムリゲーだな。それを攻略するパンドラも化け物だけどよ。やっぱお前らしいな。」
キキョウが呆れているような口調で言ってくる。
「でも負けたってことは第三形態があったのか?」
「さすがゲルマ、鋭いね。全部の歯車を破壊したら第三形態に移行。《地底の遺物》の状況からして、あれが最終形態だと思う。エリア全体の砂が一つになって流動し始めた。それにその大きさがエリア全体を覆いつくせるほどの大きさ。おそらくだけど、砂のある場所にいる限りすべてが自己補完の範疇になる。だから、一撃で体を吹き飛ばさなければならないっていう鬼畜仕様。それに生物だと、呼吸できなくなって死ぬと思う。合体した後の奴の大きさはもともとある砂の量よりもはるかにでかかったし。」
「その言い方だと何かつかめたんだろ?」
「そうだね。キキョウの言う通り何となくではあるけど、あいつの背景がつかめた。ただ、攻略法は今のところ分からないかな。設定がカギになるとも思えないし。」
「そうか。それで、《地底の遺物》の背景っていうのは?」
「確定ではないんだけど、他の古代文明がらみのエリアは分からないけど、地底王国跡地は私たちでいうところのユニークプレイヤー、つまり彼らの言うところの古代の力によって滅ぼされたんじゃないかな?それだったら、ユニークプレイヤーと認識したときのあの異常な強さにも説明がつくし。それに一つ第三形態で気になることがあったんだよね。」
「気になること?」
「うん。明らかに表情がおかしかった。顔らしきものは確認できたんだけど、その顔がなんていえばいいのかな。怨念というかそんな感じのものを感じさせる表情だったんだよね。これは本当に考察でしかないんだけど、あの状況自体が地底王国が滅んだ瞬間を表している。そしてそこで滅んだ人々の残滓が《地底の遺物》であり、《地底の遺物》は国を滅ぼした相手を模した形をしているんじゃないかな?」
「つまり、あいつと似たユニークプレイヤーがいると?」
「私はそう考えてる。」
「俺も同意かな。」
「キキョウまで。俺はゲームのストーリーとかあんまり考えずにプレイしてきたから何とも言えないかな。」
「ちょっとまた攻略法は考えるね。次に行ったときに状況が変化してるかもしれないし。」
「それはあり得るな。むしろそっちの可能性の方が高そうだ。」
「それで、何であそこに行ったか覚えてる?」
「なんでだっけ?《地底の遺物》の攻略じゃなかったっけ?」
「ゲルマのレベル上げだよ。結局1も上がってないし。」
「そうだったな。俺のレベル上げだったな。それは心配しなくてもいいんじゃないか?」
「どうして?」
「ギルドシステムの開放翌日にイベントがあるらしいんだよ。それも新規参入の人にうってつけの。」
「どんなの?」
「参加希望のすべてのプレイヤーをイベント中の一時受け入れを許可したギルドに振り分けて、そのギルドでのモンスターの討伐数を競うってやつ。俺とキキョウは一緒にレベル上げをしてパンドラで討伐しまくれば上位も狙えるんじゃないか?この期間中はパンドラのステータスも完全開放されるらしいぞ。PKはだめだけど。」
「それは良いね。そのモンスターっていうのは?」
「赤豚っていう赤い豚型のモンスターと、幸運の金豚っていうモンスター。LCKが高い人の周りには幸運の金豚がポップしやすいらしい。赤豚が1匹1pt、金豚が1匹100ptだそうだ。」
「なるほど。経験値はどんな感じ?」
「赤豚は強さのわりにだいぶおいしい感じだな。幸運の金豚は赤豚よりも弱いにもかかわらず、お前から聞いた地龍ガイアの経験値の8割くらいある。赤豚はその10分の1だ。」
「凄っ!それに赤豚もかなりおいしいね。それなら、それまでレベル上げに専念する必要もなさそうだし、私とキキョウはギルド資金稼ぎ、ゲルマは自由行動って感じでいいかな?」
「俺は良いけど、ゲルマは何するんだ?」
「俺はアイテム制作でもしとこうかな。だから2人にはいろいろ素材も集めてほしいんだけど。」
「それは良いけど。アイテム制作って熟練度的なのあるのか?」
「そう。熟練度に応じて作れるものが増えたり、取り扱えるものが増えていくんだよ。」
「生産職にもいろいろあるんだね。それじゃキキョウ行くよ。お金と素材ね。しばらくはこれでいろいろできそう?」
そういってゲルマにアイテムを譲渡する。
「おぉ。十分すぎるくらいだ。それじゃ、ギルド資金の調達頼んだぞ。」
「うん」
「おぉ、行ってくる」




