第19話 古来の力?
ゴーレムの暴走から10分が経過。周囲を見てはいるもののそれらしきオブジェクトは見当たらない。特にイベントフラグとかがあるわけじゃないのかな?それか普通に倒すことで別のフラグが経つとか?これまで倒されたのは一回だけらしいし、その人たちが秘匿にしている可能性もあるかもな。
攻撃に関しては{不壊}を突破するようなものはない。地龍ガイアのように何かしらのスキルか特性でないと突破できないはずだからこれは安心して大丈夫だろう。動きさえしなければ大丈夫だ。あとさっきから感じてるんだけど、ちょっと動くときとかに妙に体が軽い気がするんだよな。気のせいか?いや、AGIが通常よりも高い気がする。ステータスの確認でもしてみるか。
UniquePlayerNo.1パンドラ
種族:エルダーミミック(パンドラ)
スキル:{不壊}{毒霧}{大物殺し}{神速}{暗殺者}{大地の覇者}{不屈}{虐殺者}
フィールド効果により本来のステータスを解放中
Lv.1
HP(体力) 20(30)
MP(魔力) 338(500)
STR(筋力) 676(1000)
VIT(防御力) 338(500)
INT(魔法攻撃力)338(500)
RST(抵抗力) 338(500)
AGI(素早さ) 2027(3000)
DEX(器用さ) 933(1380)
LCK(運) 872(1290)
SP0
やっぱり!本来のステータスが解禁されてる。ってことは人型にもなれるのか。せっかくなれるならなっとかないと勿体ないよな。ちょっとリスキーではあるけど、やる価値はある。
人型に変化。もちろん《地底の遺物》の攻撃は見切っている。動きやすいし、装備は以前のものがそのまま引き継がれている。ユニークプレイヤーの戦闘以外でも古代文明関連の隠しエリアでの戦闘中は解放されるとみていいかもな。
ただ、一つ気になることがある。俺が人型になった瞬間、動きが止まってなんだか、グギギとかゴガガとか鳴っている。暴走からちょうど15分のタイミングだから、それで止まった線も捨てきれないが、一番可能性が高いのはこの姿だろうな。ユニークプレイヤーが最上位まで進化した姿を確認したことで何かしらのイベントフラグが経ったとみていいだろう。
「コ・・・ライ・・・ノ・・・チカ・・・ラ・・・ヲ・・・ウケ・・・ツグ・・・モノ・・・ヨ」
やっぱりイベントフラグか。古来の力を受け継ぐ者よ?どういう意味だ。古来の力ってなんだ?ここまでそんな設定全く出てきてなかったはずだ。そもそも古来っていう単語自体初出じゃないか?
「ワレ・・・ノ・・・テデ・・・ホウ・・・ムッテ・・・クレル」
おいおい、殺意しかないじゃねぇか。でも多分これがイベントの回収に必要な条件。古来の力とか言う条件を満たす力を持っていることが条件。そしてユニークプレイヤーは元からそれを持っているということだろう。
っと、危ねっっっ!!!
なんだこいつ!急に速度が段違いに速くなりやがった。今の俺がギリギリ回避できるレベルっておかしいだろ!ほぼ同レベルのAGIに加えて、高い攻撃力と防御力。これは厄介な相手だ。
ちゃんと観察さえしていれば攻撃の回避自体はそう難しいことではない。ただギリギリなのに違いはないから気を抜けば一撃喰らってしまう。
厄介なのはこういう場合のために温存している{虐殺者}が意味をなさないことだ。範囲内の好きな生物を即死させるスキルである以上、無生物である《地底の遺物》に効果はない。今の俺にできる最大火力の攻撃は{神速}で敵の視界から消え、{暗殺者}の効果で補正のかかった不意打ちの{大地の覇者}を喰らわせるものだ。これならうまくいけば足を砕けるかもしれない。
「スキル{神速}」
暗殺者は自動で発動するスキルだ。スキルを唱える必要はない。今の俺がしなければならないのはタイミングを見計らって{大地の覇者}を発動させること。《地底の遺物》が俺を探し回っている。片足が浮いた瞬間、今だ!
「スキル{大地の覇者}」
その効果で地震が発生、そして5秒後に剣山大地も発動!{暗殺者}のバフもかかってかなりの高威力だ。下手すると地龍ガイアもワンパンできるんじゃないかな?まぁ、属性相性的に無理かもしれないけど、そのくらいには高威力で入った。もちろん奴にもしっかり突き刺さっている。足には穴が開き、腕や心臓部の歯車もボロボロだ。これはさすがに倒せただろ。
《地底の遺物》の体が崩壊していく。それと同時に奴の足元にかなりの量の砂がたまっていき、それが新たに形を成す。それは大量の歯車を作り出し、それらは地面に落ちたままだ。エリアが切り替わらる、もしくはそれに準ずることがないということは戦闘が終わっていない、もしくは何かしら見落としていることがあるとみていいだろう。となるとやっぱり怪しいのはあの歯車だな。まるで金属でできているかのように光沢をもっている。どうやってその金属光沢を土だけで出しているのかはわからないけれど、見事なものだ。
ん?さっきよりも数が減っている気が・・・・・・
痛っっっ!!!
なんでだ。何で歯車がひとりでに動いて肩に刺さってるんだよ!しかもその歯車はもう形を失って砂に戻っている。つまりはこのフィールド内にある砂、そのすべてがこいつの体であり、本体なんだ。これをどうにかして全部除去するか、どうにかしてコントロールを失わせないとこいつを倒したことにはならないってことだな。さてどうしようか。ますます楽しくなってきたよ。まだHPは残ってるんだ。仮に死ぬとしても、みっともなくあがかせてもらうぜ。
さっき出来た歯車は全部で10。おそらくこれが奴の操れる歯車の限界の数だ。どこかにコアが埋まっているのか。それともこの砂すべてが奴を構成する要素であり、一つでも残っていれば再起可能なのか。どちらにせよ厄介な性質を持っていることに変わりはない。
ゲームバランス崩壊してるだろこんなもん。まぁ現状だとユニークプレイヤーしか戦うことができないモンスターだけど、それでも十分バランスブレイカーだ。しかも絶対ストーリー進行フラグを持ったモンスターだろ。もしかしてこれ攻略順違ったのかな?
そんなことを考えている暇はない。今そんなことを考えて居たら殺されるだけだ。今俺にできるのは歯車の攻撃をいなしながら、敵の隙を伺うことだけだ。そしてその出来た隙にどうにかしてここにある砂を全部場外へと送る。
問題はその方法だ。俺が使うことができるのはギルドホームへの転移だけ。無生物をどうこうするスキルは現状持っていない。だから、今の俺にできる最大限のことをやる。
「スキル{大地の覇者}」




