第186話 全滅
どこから現れやがった!?こいつ、確か『完璧』のギルドマスターの・・・・
「おっと、他の方々は初対面ですね。初めまして。私は『完璧』のギルドマスターであるパルフと申します。」
おいおい、パンドラの情報とえらく違うじゃないか。ここまで紳士的な態度をとると逆に不気味でしかないぞ。
「それはどうも。我々はギルド『パンドラの箱』のメンバーだ。それで、目的はPKか?」
「いえいえ。そんな野蛮なことをするつもりはありませんとも、キキョウ殿。」
何かを企んでいるのは見え見えだが、その腹の底が見えねぇ。俺に対して敬称をつけてるのも気持ち悪くて仕方ねぇ。
「それではなんのようで私たちに接触を図ったっていうの。まぁ、なんとなくわからなくもないけど。」
「流石ネイ、話が早いようだね。現在私たちのパーティーはモンスターを大量に狩っている。どうせパンドラのことだ。LCKの値の高さゆえにモンスター狩りに苦戦していることだろう。このままではランキングを落としてしまうだろう。そこで提案だ。」
「聞くだけ聞こうじゃないか。」
「イベント終了後ネイをこちらに引き渡せ。そうすればパンドラの箱に手出しはしない。ただ、引き渡さないというのならお前ら全員をここで殺し、貴様らのギルドホームを破壊する。」
「できるのか?お前ら如きに。」
「お前ら?はて、私は一人で来ているのだが?」
「惚けるなよ。周囲から殺気をビンビンに感じてるさ。確かにこれだけの数を用意すれば対等に戦うことはできるだろうな。でもよおっさん、俺たちのこと舐めすぎだぜ。どうせあんたらは自分のパーティー以外のギルドメンバー全員を殺してそれでポイントを稼ぐつもりだろう?だったらここでこれだけの人数を殺されて被害が大きいのはおっさんの方だろ?」
「勘の良いガキは嫌いだよ。その通りだよ。今も私のメンバーたちが討伐数を稼いでいる。そいつらは全員私の餌になるのさ。」
「せいぜい数百人の餌ね。」
「なんだと?」
「いや、なんでもないさ。さて、さっきの交渉への返答だ。きっと、というか間違いなくうちのマスターはこういうぜ。そんなことするわけないだろ。」
「そうか。では死ね。」
チッ、襲いかかってきやがった。ざっと100人ってところか?たかが4人を始末するために集める人数じゃねぇだろ。
「みんなパルフ以外の雑魚は任せた!俺はパルフを相手する」
無言で戦いの火蓋が切られた。おそらくネイ以外は全滅だ。ハンスなんてあっという間にやられちまうだろう。
「なぜ君が私の相手を?」
「お前はネイを相手したいだろうからな。今のネイは俺なんかよりも圧倒的に強いさ。だからこそ俺がお前をぶちのめす。うちのNo.2を出すまでもねぇ相手ってこった」
「ここまで馬鹿にされたのは久しぶりだな。そうだな。お前らのマスターにやられた時以来の屈辱だよ。」
「そうかよ。存分に噛み締めてくれ。ほらやるんだろ?」
「殺してやるよ」
パルフは俺と同じ両手剣使いだ。決定的な差があるとすれば防具だ。パルフは俺のようなフルプレートの鎧を身につけてはいない。リンと同じように比較的軽装、その分機動力が段違いに高い。
ただ、先生の作ってくれたこのフルプレートならあいつの攻撃だろうと大した威力にはならない。おそらく切り札である{筋肉増強}を使わざるを得なくなる。
「ノロマだな!そんな動きでこの俺様にかてるとおもってんのかよ!」
パルフの攻撃が命中するもフルプレートに弾かれる。やはりダメージは一切通せないみたいだな。カウンターは躱されたがこれなら勝機はある!
「良い鎧つけてんじゃねぇか。パンドラの箱に生産職がいるって情報はねぇ。だが、その鎧、市販のものでもなければうちで抱えてる生産職でも作れないほどのものだ。つまりこのゲーム内で最高の生産食を抱えてるってこった。こんなとこでそんな情報出して良いのかよ?」
「その程度は覚悟の上だ。それにこの程度大したものじゃない。」
「それのどこが大したものじゃないって?」
「見せてあげましょうか?」
パルフの横でネイが剣を突きつける。やっぱり速かったな。たった100人程度ネイにかかれば数分もかからないよな。例のユニークウェポンはプレイヤーが耐えられる威力じゃないらしいし。
「は?」
「流石速かったな。リンとハンスは」
「私は無事!だけど、ハンスは・・・・」
「流石に守りきれなかったか。リンが生き残ってくれただけでも十分だな。」
「なぜ・・・・!あれだけの人数を相手にして生き残っている・・・?」
「だから見せてあげましょうかって言ってるじゃない。馬鹿なあなたの目にも見えているでしょう?この刀が。」
「そんな刀なんだという・・・の・・・・・・・だ」
流石に刀の輝きを見て驚きを隠せないみたいだな。
「これは緋緋色金を使った刀よ。入手方法もうちの生産職についても秘密だけど、一つだけいいことを教えてあげる。これユニークウェポンなのよねー。どこかの誰かさんが持ってる貧弱なものと比べると強すぎるかもだけど。」
「何を言ってやがる!ユニークウェポンだろうが100人を相手取って勝てる証明にはならないはずだ!」
「それはこの子の能力に触れることになるから教えてあげないわよ。それで、あれだけ煽ってたけど、言い残すことは?」
「ふざけるなよ!この程度で私が諦めるはずがなかろう!」
ネイの剣の射程外に動きつつ、剣を構えつつこちらに向かってくる。
また返り討ちに!
いや、待てよ。ここでそんな馬鹿なことをするか?ネイの剣を回避しながらネイに切り掛かるほうが確実なはずだ。それにさっき走り出す直前に左手が妙な動きをした気が・・・・・
「ネイ!リン!逃げろ!」
「今更遅い!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン
チッ、爆弾を仕込んでやがった。俺のHPはギリギリ残ったが、防具は全損だ。これじゃもう戦えない。これだけの威力だ。ネイもリンも死んだだろう。
だれだ?森の方から誰か来る。煙でよく見えねぇ。
チッ。なんでこうもいいタイミングで暗殺師団のパーティーに出くわすんだよ。メッセージ機能を開き・・・・
ザッ
俺は切り裂かれ死んだ。




