第17話 古代文明
3人で家具を買いにイロアまで行き、いい感じの家具を買いそろえた。もちろん家具の代金は全額キキョウ持ちだ。買ったのは楕円形の大きな円卓、ギルドの最大数である25人分の椅子、大きめのソファ、ゲーム内で食事をすることもできるので食器類。大体はこんなところだ。あとは各々の個室にほしいものがあれば自分で買うということで買い物を終えた。
「キキョウありがとうね。それじゃ家具の設置も終わったことだし、今後の方針を話したいんだけどいいかな?」
「方針?」
ゲルマが不思議そうな表情でこちらを見ている。というか、2人ともミミックがこの口調なのになれるの早いな。
「うん。しばらくの方針としてはほかのギルドとかもそのうち生まれてくるだろうから、それまでにゲルマとキキョウのレベルを最大まで上げたいかな。私がサポートするからどんどんレベル上げしようよ思うんだけど、どうかな?」
「それには賛成だけど、どこでやるんだ?俺はともかくゲルマは戦闘ステータスに全く振ってないし。」
「同じパーティーにいるだけで経験値ってもらえるでしょ?もちろん私のレベルも上がって、{大物殺し}が発動しづらくはなるけど、それは仕方ないと思うんだ。だから、3人で経験値効率のいいモンスターとの連戦をしようと思うんだけど、それがいいのがいないんだよね。」
「俺が知ってる限りだと、イロアの町の次に立ち寄るプレイヤーが多いヲシャって町があるんだけど、そこの近くにある《地底王国跡地》ってエリアにポップする特殊モンスターが一番経験値が高いな。確かレベル50とかのやつでも1体倒すだけで3レベルくらい上がるらしいぞ。まぁ、レアすぎる上に回想が適応できないらしくて実質の経験値効率はめっちゃ悪いけどな。まぁ、そこのボスもそこそこいい経験値もらえるし、範囲技がない奴らのパーティでもレベリングには向いてると思うけど。」
「まぁ、そこが一番手っ取り早いかな。キキョウ、その特殊モンスターって何なの?」
「エリア内が迷路みたいになっていて、確率で特殊な扉が出現するんだ。そこに入ると、エリアが特殊エリア《失われし古代の王国・地底》に変わって、特殊モンスター《地底の遺物》との戦闘が始まる。その勝利条件は《地底の遺物》を10分以内に破壊すること。もし10分以内に破壊できなければ《地底の遺物》が暴走し、手を付けられなくなる。そしてエリア全体を対象にした結界系の魔法を貫通する一撃必殺の衝撃波を放つ。一応防御系のスキルなら生き残れるが、その後も暴走を続けるから暴走している《地底の遺物》を倒さないといけなくなる。もちろん制限時間の10分間も《地底の遺物》は動いているし、攻撃してくるから結構厄介なんだよな。」
「確かに、戦闘の状況的には特殊勝利系っぽいのに破壊が条件なのは厄介だな。」
ゲルマも賛同している。確かに10分後に暴走を開始する上に特殊モンスターという肩書を考えても特殊勝利系、それも特定アイテムの破壊、もしくは特定のアイテムの獲得とかが条件になりそうだけど。
「今のところ経験値と戦闘の状況以外に関する情報はあんまり上がってないんだよな。そもそも1回しか倒されてないんだよ。あまりにも固すぎて攻撃が大して入らないし。もしかしたら本来は別のクリア方法が用意されてるのかもしれない。エリア名的にも何か隠されていてもおかしくなさそうだしな。」
「それをクリアすることで特別なスキルやアイテムを獲得出来たりするかもしれないし、何かのストーリーが進行するかもしれない。やる価値はあるかもしれないね。私はスキルのおかげで自分の意志で動かなければ死なないから暴走するまでに倒せなかったらここまでポータルで転移すればいい。」
「あぁ。経験値もおいしいしな。ゲルマを最大限かばって俺たち2人で撃破を目指そう。ゲルマもそれでいいか?」
「もちろん。」
「それじゃ決行日は明日でいいか?各々可能な限り情報を収集してから挑もうぜ。」
「そうだね。私も少し情報を収集してきたいし、ちょっと気になることがあるんだよね。その《失われし古代の王国・地底》ってエリアなんだけど、確かこの《ディクティオンの百穴》も古代の遺跡といわれてるんだよね。ユニークプレイヤー以外にもストーリーとかの進行フラグがあるのかも。」
「それは確かにあり得るかもな。それじゃ各々調べたいことを調べてくるってことで。俺はそろそろ落ちるわ。明日も学校だし。」
「そうだね。私もそろそろ落ちるよ。ゲルマはどうする?」
「俺も落ちようかな。明日は何時集合にする?」
「21時かな。ね、キキョウ。」
「そうだな。それじゃまた明日。」
キキョウはログアウトして、俺もそれに続いてログアウトした。まだ寝るには早いし、《地底の遺物》について少し調べてみようか。ほかにもエリアの詳細とか見ても面白いかもな。
《地底の遺物》
遥か昔、古代文明の時代に地底にて栄えた、名も忘れられた王国の遺物であるということ以外詳細不明のゴーレム。
戦闘開始から10分以内に撃破しなければ暴走をはじめ、基本的には撃破不可の状態になる。暴走をするまでは殴るくらいしかしてこない上にAGIも非常に低いため対して脅威ではない。ただし、魔法に対しての絶対耐性に加え非常に高いVITを持つため、撃破は困難を極める。
《失われし古代の王国・地底》
遥か昔、古代文明の時代に地底にて栄えた、名も忘れられた王国。残留品や遺物から機械が発達していたと考えられている。ただ、その詳細は一切不明であり、それを知るクエストの受注なども確認されていない。
《ディクティオンの百穴》
古代文明の遺跡といわれている。洞窟内に数多くの穴が開いており、それらはすべて洞窟の外へとつながっている。どのようにしてできたのか、何者かが意図して作ったものなのかなど詳細は不明。
《古代文明》
ユートピアオンライン内にてたびたび目にする文明の名前。はるか昔に栄えた文明であること以外は不明であり、運営が公開しているワールドマップの説明文にこの名前が登場するエリアは全部で8か所。《地底王国跡地》《ディクティオンの百穴》《暗黒の古城》《罠の迷宮》《絶望の墓場》《天空王国跡地》《龍国跡地》《虹の樹海》
それ以外にも《地底王国跡地》と《虹の樹海》にある隠しエリア《失われし古代の王国・地底》《反転の樹海》でも確認されている。
なるほどな。これだけ見ると何のことかさっぱりわからないが、正直何かしらのストーリーが存在しているとみて間違いなさそうだな。それにユニークプレイヤーの人数とエリアの数が同じだ。何かしらの関連性があるとみて間違いないだろう。それにしてもユーオンの世界はかなり広い。これだけの数のエリアでもほんの一部にすぎないほどに大領のエリアが存在している。しかし、この8エリアだけは別枠とみて間違いないのだろう。
ユニークプレイヤーとこれらのエリアが対応しているとは考えづらい。俺の場合は《罠の迷宮》だろうが、サタンがわからない。《暗黒の古城》っぽいから《暗黒の古城》だと仮定できるけれど、《ディクティオンの百穴》だけ異常なほどにモンスターにつながる要素がない。
ほかのエリアはそれぞれ何となくではあるがモンスターの種類や特徴が連想できる。《地底王国跡地》はゴーレム系統、《絶望の墓場》はアンデッド、《天空王国跡地》は悪魔族以外の飛ぶことができる種族、《龍国跡地》はドラゴン、《虹の樹海》は植物か虫系統のモンスター。《ディクティオンの百穴》にはモンスターに直結する要素がない以上、これだと決めつけるわけにもいかないだろう。
ほかに何かヒントになりそうなことがあればいいんだけど、ネットで得られる情報はこれが限界っぽいな。




