第167話 人見凛とユーオン
綿密な作戦会議を終えた俺たちは一旦解散し、明日の夜再び集まり、そこから隠しエリアエンカ耐久をする約束をしてそれぞれログアウトした。
おおまかな作戦としてはこれまで話していた通りだ。
第一段階はキキョウとネイが少し削り、俺が{大地の覇者}で削り切る。第二段階は先生のくれた装備で守りつつ、歯車を撃退する。第三段階は分かっていることがほとんどないため、大海の錬水玉を使いつつ臨機応変に対応する。
大海の錬水玉に関しては10個、1個あたり8分として2個ずつ使えるから約40分。歯車の撃退に時間がかかることが想定されることから第二段階スタート時から錬水玉による水の生成を始める。第三段階開始時にリセットされる可能性も考えて第二段階にどれだけ時間がかかったとしても4つまでしか第二段階では使わないようにする予定だ。
第三段階では身の危険を感じたら即時ギルド転移を使用してギルドに戻る。誰か1人が撤退を選んだ時点で、全員が撤退する。状況にもよるが基本的には全員での勝利を目指す。誰かが死んだ場合も同様だ。ただ、どんな場合でも状況次第で臨機応変にと言う方針は変わらない。
キキョウが死のうと倒せそうならそのまま続けることになるだろう。でないと、今回のリベンジにかけたコストに見合わない。
さてと、作戦についてはこんなとこだな。
「みくにぃ、ちょっときてー。」
「ほーい。」
俺が戻ってきたことを察知したのか俺を呼びつける存在がいる。
「どうしたー?こんな遅くに。」
時刻はすでに0時を回っている。そして俺を呼びつけたのは
「いいじゃん。みくにぃ、どうせゲームやってたんでしょ?」
「まぁ、そうだけどよ。それで、何か用事か、凛?」
俺の妹である人見凛である。現在中学2年俺と3歳差だ。
「みくにぃってユーオンやってんの?」
「やってるけどどうかしたか?」
「いやさ、学校でめっちゃ流行っててさ、乗り遅れたくないから凛もやりたいんだよね。」
「買えってか?」
「さすがみくにぃ!話がわかる!VRメットと合わせて買って欲しいんだけど、だめかな?お母さんたちはお金厳しいからって買ってくれないんだよ。こないだバイト代入るって言ってたじゃん。」
「まぁ、買ってやってもいいんだけどよ。」
「ほんと!?」
「マジだよ。バイト代それなりに高額だったし。」
ファザオンのイベントの報酬について話していたんだったな。さっきまで確認してなかったんだが、さっき確認したら入ってたし、可愛い妹の頼みだしな。
この年齢の妹がいる高校生男子としては珍しく、俺たちはかなり仲がいい。最近はユーオンにハマりすぎて話す時間もあんまり取れてなかったけど。
「ちなみにどのくらい?」
「7.5]
「エグっ。それ大丈夫なバイト?」
「大丈夫だよ。ちょっと俺の得意なことを活用して稼いだだけだよ。」
「それならいいけど。ほんとに買ってくれるの?」
「本当だって言ってるだろ。それにお前から言い出したことだし。」
「まぁ、そうだけど。みくにぃがそんな快諾してくれるって思ってなかったから。」
「可愛い妹の頼みだしね。」
「それとさ、もう一ついい?」
「金がかかるものはもう無理だぞ。」
「そうじゃなくて、私VRゲーム初めてだし、できれば未来にぃに案内して欲しいなーって思うんだけど・・・」
少しもじもじしながらそう言う。最近こんな感じなんだよな。どう言う感情なのかわからん。
「そのくらいだったらいいよ。ギルドはどうする?俺がいるところ、って言うか俺のギルドくるか?そうなるとちょっと話すこととか秘密にして欲しいこととか色々あるんだけど。まぁ、案内する時点で話さなきゃなことはあるんだけどさ。」
「いいの?」
「もちろん。うちは人数少ないから歓迎だぞ。ただ、お前があんまり好きじゃない恭平もいるけどいいか?」
「みくにぃがいるならそんなのどうだっていいよ。」
「それならよかった。瑠奈さんもいるから安心して。」
「瑠奈さんも!?やったー」
こうやってはしゃいでるのを見るととても中学生には見えないな。まるで小学生みたいだ。
「それじゃどうする?ネットで買っとこうか?」
「みくにぃって明日暇?」
「明日から学校始まるけど、明日は午前だけだし、日中は暇だよ。ただ、夜はギルドメンバーとちょっとやることがあるから夜は無理かな。」
「そっかー。それじゃさ、お昼のうちに買いに行って帰ってきてすぐ案内ってできない?」
「できなくはないからいいぞ。」
「ちなみに夜のようって私はついていったらダメ?」
「ダメっていうか、怖い思いすると思うぞ。ほぼ確実に死ぬし。」
「そうなの?」
「まぁ、めちゃくちゃ強いボスと戦いに行くからな。」
「そっか。ちなみにそれって女の人いるの?」
「変なこと聞くな。まぁ、いるけど。」
「へー。みくにぃって女っ気全くないと思ってたのに。」
「そんな仲じゃないって。恭平も一緒だし。」
「そんないっぱいで行くの?」
「いや、3人だけだよ。その女の人と、恭平と俺。」
「そうなんだー。そういえば女の人って何人いるの?」
「えーっとね。俺ちょっと訳ありでアバターも女だし、女のふりしてるから、他の人の視点からしたらどうかわからないけど、実際の性別で行くなら4人だね。今日一緒に行く人と、瑠奈さんと、お姉さんが一人と、小学生の子が一人って感じだね。」
「へー。ってか、みくにぃの女装ボイス聞けるんだ。いいね。それだけでもやる価値あるよ。」
「そんな言い方するなって。俺だって好きでやってるわけじゃないんだから。」
「はいはい。それじゃ私そろそろ寝るね。みくにぃも明日学校なんでしょ?」
「あぁ。もう寝るよ。明日買いに行く時にでもうちのギルドで気をつけて欲しいことをちょっとだけ話すよ。」
「うん。それじゃお休み、みくにぃ。」
「うん、お休みー。」




