第16話 新たな仲間
「おーい。パンドラ!」
遠くでキキョウがこちらへ叫んでいる。掲示板に掲載しているだけでも異様な光景なのにそこに声をかけてこないでほしい。
「どうしたのキキョウ?その心当たりのあるって言ってた生産職は?」
「もうすぐインしてくると思う。ほかのゲームで知り合ったやつなんだけど、このゲーム気になるって言ってたからギルドに入らないか聞いてみたら即OKしてくれたよ。どのゲームでも生産系の職業だし、リアルでも手先が器用みたいだから期待していいぜ。」
「そっか。それじゃその人がインしてくるまで待ってた方がいい?」
「そうだな。俺一人だとギルドホームまで確実に連れていける自信がないし、待っててもらえるか?自宅近くにゲームショップあるからすぐにインできるってさ。」
「オッケー。」
それから5分くらいでキキョウにインしたと連絡があった。ユーオンはゲーム内でもリアルの方のメールとかの機能も使えるからこういう時本当に便利なんだよな。
「それじゃ行くか。ゲームを始めたばかりのプレイヤーはお前みたいな例外を除けば始まりの町アンファングからスタートだからアンファングに転移するぞ。」
「オッケー。アンファングってここからどのくらい?」
「アンファングからは草原エリアを抜けて通常プレイヤーだと戦闘がなければ10分くらいだな。まぁ、チュートリアルみたいなもんだから結構モンスターとは遭遇するけどな。」
「生産職ならそれに専念してもらわないとね。」
「あぁ。そのためにもまずは俺たちでレベリングだな。」
「生産職には生産職のステ振りがあるんでしょ?」
「基本的には同じだけど、DEXが異常に高いな。お前以上に。」
「それはすごいね。それじゃ迎えに行こうか。」
「あぁ。転移アイテム『座標転移』」
目の前の景色があっという間に変わり、アンファングの町に来ていた。少し離れたところでこちらに向かって手を振っているプレイヤーがいる。あの人かな?
「あいつだ。行こうぜ。」
キキョウが走っていくので追いかける。すると周囲にいるプレイヤー、そして目的のプレイヤーまでもが俺に恐怖のまなざしを向けてきた。戦闘になったりしないだけましかな。
「驚かせてすまん。ゲルマ。」
「いや、それよりも久しぶりだな、キキョウ。ゲーム内でしかあってないけど半年くらいあってなかったんじゃないか?」
「そうかもな。それで相変わらず生産職なんだろ?俺たちのところに来ないか?」
「それにしても話に聞いてた通り本当にミミックなのか。パンドラさん、初めましてゲルマです。」
「初めまして。パンドラです。こんななりですがちゃんとプレイヤーです。」
「おっと、思っていたよりもかわいらしい声が返ってきましたね。キキョウから聞いているとは思いますが生産専門となりますがそれでも良ければよろしくお願いします。」
「こちらこそギルドシステム自体まだ私たちしか使えませんし、今のうちに優秀な生産職を仲間にしたかったので助かります。」
「そういっていただけると嬉しいです。それにしてもキキョウ、どこでこんないい娘とであったんだ?ひねくれてるお前の知り合いとは思えないほどなんだが。」
「リア友だよ。こっちではそんな感じだけどな。ユニークプレイヤーって聞いた時はびっくりしたよ。」
「そうだよな。俺が同じ立場でもそうだろうし。本人が一番びっくりしたでしょ。ね?パンドラさん。」
「敬称は良いよ。私もゲルマって呼ばせてもらうから。敬称、敬語は無しで行こう!」
「そっか。これから一緒のギルドで過ごすんだしそれもそうだな。」
「それでさっきの答えだけど、進みながら話そっか。大まかなチュートリアルは終わったんでしょ?それなら次の町のイロアまで行こう。」
「そうだな。それじゃ行くぞ。キキョウ。」
「何でおれが引っ張られるような形になってるんだよ。一応お前ら2人をつないだのって俺だからな。」
「もう仲間になったんだから関係ないよ。それじゃ加入申請の画面送るからそこからギルドに加入申請送っといて。」
「了解。おっ、来たね。」
ゲルマはそれから少しウィンドウをいじって
「これでオッケーっと。」
「おっ、来たよ。それじゃ承認っと。これで1回ギルドホームまで来れれば自由に転移できるようになるから。ギルドホームへの転移ってパーティ単位じゃなくて個人単位だから1回自分の足でいかないといけないけどね。それにイロアの町に着くまでは転移できないようになってるみたいだし。」
「2人ともサポートお願い。言っとくけど俺DEXに極振りしてるからAGIも遅いし、戦えんからな。」
「ほんとに生産職を極めるって感じだね。それくらいの方が生産職としては心強いよ。」
「そうだな。ゲルマらしいといえばらしいか。それじゃパンドラに乗っけてもらえ。俺先に帰って休んでもいいか?どうせパンドラがいれば事足りるだろ?」
「まぁ、いいけど何かやることでもあるの?」
「いや、なんか家具でも買ってつけとこうかと思って。」
「それいいね。じゃあキキョウの自腹ね。ありがとー!」
「なんでだよ。お前結構金持ってるよな?」
「えー、あと110万くらいしか残ってないよー。キキョウはもっと持ってるでしょ?」
「それよりは多いけどさー。家具が全部俺の自腹となるとほぼなくなるぞ。」
「また稼げばいいじゃん。私がホーム買ったんだから家具くらいお願い、ね?」
「しゃーねーな。今回だけだからな。」
「ありがと。それじゃゲルマ、始まりの草原に向かお!」
「あぁ。キキョウも大変だな。」
「まぁ、こいつがギルドホームを買ったのは事実だし、それに1000万以上かかってるからな。仕方ないよ。」
「それはたいそういいホームなんだろうな。楽しみにさせてもらうよ。」
「そうだ、家具はみんなで一緒に選びたいし、キキョウは1回転移でホームまで戻って待ってて。ゲルマ連れて最高速で向かうから。」
「わかったよ。それじゃお先に。転移アイテム『座標転移』。」
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「それじゃゲルマ。私たちも向かおっか。キキョウは乗っけてもらえって言ってたけど、それだと落ちいて死にかねないから中に入って。ちょっと揺れると思うけど。」
「中に入る?ミミックの?とても正気とは思えない行動だな。」
「それが一番早いんだから仕方ないでしょ。ほら入った入った。」
「俺の言い分は聞かないのかよ。」
「それじゃ行くよ。」
俺は最高速でイロアへと向かって、そこからディクティオンまで向かった。前ほどAGIが高くないから少し時間がかかってしまったけど、何とか到着できた。ゲルマも何とか生きている。閉じ込められて揺らされるのがいかに苦痛かその表情だけでも伝わってきた。
「やっと着いた?」
「まだだよ。ここからこの洞窟の最深部、ボスの部屋まで向かうよ。」
「それって俺は無事にたどり着けるものなのか?」
「この洞窟は雑魚ばっかだし、私がいれば大丈夫だと思うよ。ボスは鬼畜だと話題だけど。」
「どうすんだよそれ。」
「大丈夫、私が倒してその部屋をギルドホームとして購入したことでポップしなくなってるから。でも、ゲルマは一撃受けたらどんなモンスター相手でも死ぬと思うから気を付けてね。」
「レベル差がひどいんだよな。ここまでで数レベル上がってはいるけど、それでも全然足りてないんだろ?」
「そうだね。ここの攻略の推奨レベルはボスを除いても25レベルだからね。」
「俺今4レベルなんだが。」
「まぁ、私が守るから大丈夫だよ。」
「先に聞いときたいんだけど、パンドラの戦闘スタイルは?」
「うーん、ソロの時はスキルで毒をまき散らしたり、範囲攻撃をしたりって感じかな。パーティを組んでるときは基本これだね。」
「短剣それも双剣か。盗賊とかアサシン系のステ振りって感じかな?」
「まぁ、そんな感じ。腕も結構自在に動くしスキルとの相性もいいから安心してていいよ。ボスがいるとさすがにソロじゃないと厳しいけどね。ボスは状態異常以外に弱点がほぼなかったから。」
「そりゃ理不尽だな。」
「まぁ、その攻撃技は今は私が使うんだけどね。それは今は良いかな。それじゃ最深部に行こうか。」
アンファングの町を出て40分ほどでようやく最深部まで到着した。キキョウは暇そうにしており、俺たちの姿を見てけだるげな声を上げた。
「やっと来たか。やっぱAGIだいぶ落ちてんな。」
「そうだね。前だったらもっと早く来れてただろうけど。」
「それでゲルマ、どうだここは?」
「いいね。とても俺好みだ。ここはどっちが選んだんだ?」
「パンドラだな。俺が外にないか探してたら見つけたって連絡が来て見に来たらこんないいところだったんだよ。」
「確かにここはすごくいいな。時間によって日光も差し込むし、静かですごく落ち着ける空間だ。」
「生産職用の作業場もあるみたいだからあとで見てみて。足りないものがあったりいる者があったら町まで転移して買うといいよ。お金はこっちで持つから。」
「お前は転移アイテム持ってるだろうし金は渡すから自分で言って自分で買って来いよ。」
「わかってるよ。一度行った場所には自由に行けるシステム。これ便利だよな。」
「私はもらってないから使えないけどね。だから連れてってもらうことも多いと思うけど、お願いね。」
「そうなのか。わかったよ。何かあったら言ってよ。お金とか素材に関しては世話になるわけだし。」
「それじゃみんなで家具でも買いにいこー!」




