第147話 パンドラの弾剣とパンドラの拳銃
「さて、昨日ぶりなわけだけど、どう来るのかな?」
「余裕だね。あなたにどの攻撃が効くかは大体分かったしね。大抵の魔法、物理攻撃は意味がない。でも稀にあるアイテムを破壊できる特殊な属性、破壊属性を持つものならダメージを与えられる。」
「そうなんだ。そのあたり私もよく分かってないんだけど。」
「そうじゃないと{時空の矢}を防いだ意味がわからないもの。」
「あれは、見えなかったからとりあえず全方向防いだだけ。」
「マジ?」
「マジだよ。それよりもさっさと始めるよ!{不壊の目}」
「{不壊}でダメージを防げるかを判別するスキルだね。それならこっちは全力で行くよ!」
そう言ってネイが構えたのは一風変わった組み合わせの武器だ。右手には長剣、左手には短剣を構えている。これこそがネイの本気だ。ギルド戦の事前情報でもこれについては知っていたけれど、この状態のネイってやばいんだよね。
「ほんとに本気だね。それにその武器は厄介なんだよね。」
「知ってるんだ。流石あれだけの情報を仕入れてたってことはイグザミナかな?」
「流石、よくわかるね。」
「それ以外ないでしょ。ってことはこの装備での私の本気度合いと装備の効果を知ってるわけだ。」
「もちろん。その長剣には破壊属性に加えて人間特攻の効果がつけられていて対人戦では最強レベルの武器。人間特攻があればプレイヤーに対しても破壊属性を適応できるしね。そしてもっとやばいのはそっちの短剣。そっちには人間特攻に加えて残傷が付与されてる。」
「正解だね。流石。」
「でも私は人間じゃないけどそれで大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。私はね武器に合わせていろんなスキルを持ってるんだ。モンスターと渡り合えなくてどうするよ。{武器性質・反転}」
武器の性質を反転?
「さて、これで、人間特攻がモンスター特攻に変わったよ。それに他の効果はそのまま。これでも余裕でいられる?さらにこれもだよ{神速}」
そう言ってスキル発動と同時にこっちに詰めてくる。ただ、{神速}のステルス効果で視認できない。
「じゃあこっちも{神速}」
「残念私は探知スキルも持ってる。だから見えてるよ!」
「残念だけど、こっちにも見えてるんだよね!」
ネイの斬撃を先生が新たに作ってくれていたパンドラの弾剣で受ける。この剣はパリィのクリティカル率に補正がかかり、パリィにノックバック効果を付与する。さらに10回パリィを成功させることでスキルを発動できる。今の状況ではこれ以上にない武器だ。実際俺にはネイの姿が見えていない。こっちに与えられる情報は足音だけだ。それからおおよその方向、位置を割り出す。そこからの攻撃に気をつけつつ、{神速}のステルスが解除される20秒後まで耐久する!
「まさか探知系のスキルまで持ってるなんてね。まだまだ行くよ!」
ネイは時間のことを気にせずいろんな方向から攻撃を加えてくる。正直警戒して止まってくれた方が嬉しいだけどな。まぁ、パンドラの弾剣のスキルがたまるからいいんだけど。俺が{神速}を使ってちょうど20秒ネイが動きを一瞬止める。
「流石パンドラだね。どんなスキルかはわからないけど、探知系スキルと合わせて完璧にカウンターするなんてね。」
「まぁね。ちなみに私がネイを追えるって分かった時点で止まるべきだったね。ネイの攻撃にパリィをした回数がちょうど10回。この剣はね1時間以内に同じ相手からの攻撃に対して10回のパリィを成功させることでスキルが使えるようになるんだ。」
「へぇ。面白そうじゃん。」
「いや、そうも言ってられないんじゃないかな?{形態変化}」
「ちょっと待って、それは反則じゃない!?だってユーオンでそれってどうやっても作れないよね!?」
「そう。これは先生でもそのまま作るのは無理だったんだよね。だから条件をつけた。ちなみにさ、この剣パンドラのだんけんって言うんだ。だんは弾くって言う字ね。弾くってさ、銃弾みたいな使い方もされるじゃん?」
「だからってこれは許されないでしょ!」
「まぁね。」
そう。俺の手に握られているのは銃だ。元が剣だとは思わせもしないようなサイズ感。普通の拳銃の大きさだ。
この銃の名前はパンドラの拳銃。弾丸の装填が不要な拳銃。打つたびに微量の魔力を消費するのみで、いくらでも打つことができる。パリィの条件を満たした相手が死ぬか、10分経過でもとのパンドラの弾剣に戻る。
おそらく現在のユートピアオンラインにおいて最強の武器だ!




