第14話 ギルドホーム
「ギルドシステムの先行使用権。もう使用できるようにはなってるみたいだけど、どうする?2人で1回みたいだし同じギルドでいい?」
「それには俺も賛成だが、運営から告知されたギルドシステムの詳細を改めて確認しておこう。」
「確かにそれがいいね。あと、ギルドメンバーとはいえ、性別は隠したいから、普段は中世的な感じで行くから慣れてよ。」
「わーってるよ。で、ギルドシステムについてだが、大まかにいうと、プレイヤーがギルドを作成することができる。ギルドは購入したギルドホームによって規模が異なる。ギルドホームの購入条件はレベル60以上のプレイヤーであること。ギルドごとに恩恵を得られたり、ギルド単位でのイベント参加が出来たりする。ざっとこんなところか?」
「そんな感じかな。それでどうする?俺としては大規模ギルドは嫌なんだけど。」
「俺もだ。コミュ障にはちょっと厳しいもんな。」
「それな。それじゃ人数があまり入らないギルドホームを探そうか。ギルドホーム自体は既にマップ上に現れてるみたいだけど、購入権が発行されてるのが俺らだけってことみたいだしな。」
「ギルドホーム購入時の支払いは頼むよ。俺そんなに金持ってないから。」
「わかってるよ。1500万あるし十分でしょ。購入者がギルマスってシステムみたいだし、これで自動的に俺がギルマスな。」
「やむを得んな。ギルドホーム買えるほどの金を集めるのって結構大変だしな。基本的には大規模のホームの方が安いらしい。最安だと150万から買えるらしいぞ。その代わり作りが単調で同じものが多く、街中な分外の音も聞かれやすい。小規模になると街はずれや、モンスターの出現するフィールド上にあるものも多い分そういった問題がないみたいだな。」
「俺は街はずれとか洞窟の中がいいな。」
「俺も賛成。それじゃあちこち見てみようか。不動産屋的な感じで紹介してくれるところがあるらしいからまずはそこに行くか。」
「いや、そこはあくまでも街中の場所しか紹介してくれないらしいし、せっかくなら町の外に構えたくないか?」
「確かに同感だな。それじゃどこか探してみるか?」
「まずはディクティオン方面行ってみようか。」
「確かにあっち方面は森もあるし、いろんなタイプのホームがありそうだな。」
「まぁ、そのためにはこの姿で外に出なきゃいけないんだけどね。」
「いくらAGIが高くても人目には止まっちまうしな。逆に堂々としてたらいいんじゃないか?」
「それしかないよな。普通じゃない挙動をしていたら普通じゃないやつだと思われるだけだし、仕方ないよな。」
「それじゃ探しに行こうか。」
2人で宿屋の外へ出て町の外へ向かう。宿屋の中の時点でそうだったが、ほかのプレイヤーからの視線が痛い。NPCは俺を味方だと分かっているらしく普通に接してくれるが、プレイヤーはそうもいかないよな。
とりあえず、絡んでくる輩もいないみたいだし、さっさと町の外に出てしまうか。
「キキョウ、ディクティオンって座標転移の転移先に登録してる?」
「そういえばしてたわ。最初からそれでいけばよかったな。」
「そうだね。それじゃお願い。」
「転移アイテム『座標転移』」
俺たちは一気にディクティオンの入り口まで来た。さて、ギルドホームって言っても手掛かりも何もないと探すのも一苦労だな。
「どうする?手分けして探すか?」
「そうだね。俺は洞窟内を探すからキキョウは外をお願い。危険な状態に陥った時といい場所見つけたときはすぐに連絡するようにしようか。俺は一回戦闘もどんな感じか試してみたいからガイアとも戦ってくるわ。」
「了解。それじゃ。」
「うん、またあとで。」
俺は洞窟の中に入り、マップを思い出しながら、いい感じの場所がないか探っていた。もちろんギルドホーム自体洞窟内にあるわけもなく、全体を見たうえで地龍ガイアのいる最深部まで来てしまった。見落としはないだろうし、さっと倒して外にいるキキョウと合流しよ。
ガイアとの戦い、なんだか久々な気がしてくるな。最近までずっと戦い続けてたっていうのに。
「スキル{毒霧}」
こいつの攻撃は俺にダメージを与えることができる。しかも今のステータスなら幸運値による食いしばりが発動しない限り一撃必殺だ。爪による攻撃はAGIで回避、剣山大地に対してはどう対処しようか。飛び跳ねるだけだとタイミング次第で回避に失敗する可能性もある。前にエルダーミミックの状態で戦った時も何回か失敗した。種族的に進化するたびに重くなるみたいなんだよね。
まずは爪の攻撃の回避、そして通常の魔法攻撃やブレスは動かなければ{不壊}で防げる。
あいつのHPも減ってきているこのままいけばいけそうだな。お、このためは剣山大地か。ちょっと試してみたいことあったしやってみるか。
「スキル{大地の覇者}」
ガイアがスキルの溜めをしているうちに{大地の覇者}を発動。それと同時に地震が起こる。急な地震に体勢を崩したガイアのスキル発動が数秒遅れる。そして俺の{大地の覇者}による剣山大地が先に発動。もちろん自分のスキルなのでダメージは受けない。それから一拍おいてガイアの剣山大地が発動する。結果としては俺はノーダメージ、ガイアには俺の剣山大地によるダメージが入った。
予想通りだ。地形を変化させたりする要は状態変化形のスキルは先に発動させたものが優先される。
これがありさえすればガイアにそうそう負けることはないな。
そのまま耐久を続け、{毒霧}の効果が切れるよりも早くガイアは倒れた。剣山大地のダメージが意外とでかかったのか。
まぁ、試したいことは試せたし十分かな。ガイア以外にも応用できるだろうし、戦闘能力としては十分かな。混戦だと厳しいけど、個人対集団の構図の時はかなり戦いやすそうだし。
ん?なんだこの表示?ボスエリアの入り口に戦闘中の表示とは別の表示が出てる。
《内覧中》
内覧?もしかしてここってギルドホームになってたりする?エリア名の表示をしてみるか。
《ディクティオン最奥部ギルドホーム(空き家)13800000G》
おっ!やっぱりここはギルドホームなのか。ボスの地龍ガイアを倒したプレイヤーにのみ内覧が許される的な感じかな。俺の有り金全部でギリギリ足りるな。詳細表示できるかな?
ディクティオン最奥
価格 13800000G
登録可能人数 25人
個室 購入時に25部屋自動生成
購入条件 地龍ガイアを討伐した者
ギルドホーム登録者にはギルドホームへのポータルの使用許可
なるほどね。25人までっていう上限もあるしちょうどいいかもな。キキョウは個々に入れないみたいだし、ちょっと写真と一緒にメッセ送ってここでいいか聞いてみるか。
「ディクティオンのボスの間がギルドホームとして出てきたんだけど良くない?情報と雰囲気はこんな感じ。」
写真とさっきの情報を添えて送信した。すぐに返信があり、
「いいかもな。俺もすぐに向かうから待っててくれ。」
「多分討伐パーティーしか内覧には入れないからこの状態で購入を考えないといけないと思う。」
「そうか。まぁ、パンドラがいいっていうんだし、いいと思う。写真の雰囲気からしてもいい感じだし。」
「じゃ購入手続きしとくからこっちに向かってくれ。」
「了解。」
えーっと、購入手続きは、さっき表示したエリア名をタップして下に表示された確認画面の購入するボタンを押せば完了だったっけな。
よし、オッケーだ。これでここは俺とキキョウのホームだ。これからはここが俺たちの拠点であり、第2の家になるわけだ。




