第130話 {反撃領域}にトラップ、おまけに{毒霧}
連合軍はどこからがトラップの範囲かを見定めるためにある程度の犠牲を払いつつ、境界線を判断して行っていた。もちろん定期的にトラップが発動するため人間で境界線に壁を作ることはできないが、それでもおおよそどの範囲がトラップなのかは判断できたようだ。それさえ分かれば大半のプレイヤーは中に入ることができる。しかし、そこからが本番だ。
「確かここですよね?」
「あぁ。そこの岩をどかせば入り口が現れる。」
そう言いつつ俺の目の前にあった岩を移動させた。目の前には宝箱がある。もちろん俺だ。今はイベント宝箱と同じ姿に擬態している。
「これはイベントの宝箱か?こんなところに?」
明らかにリーダー格のようなプレイヤーがこちらを覗き込んでいる。
「パンドラはこんな姿ではありませんし。しかし、あえてトラップの宝箱をここに持ってきて開けさせようとしている可能性はありそうです。」
「開けずに進もう。この先が奴らの拠点なのだろう?」
「はい。」
俺は聞こえないよう小さな声でスキルを発動させる。この位置ならあのリーダ格のプレイヤーも巻き込める。
「スキル{反撃領域}」
一番近くにいたプレイヤーには聞こえていたらしく、
「皆さん逃げてください!」
その言葉を言い終える頃には{反撃領域}が展開され、回避できたプレイヤーはいない。
「パンドラか!」
もちろん{反撃領域}内での俺の攻撃を弾いたり回避したりすることはできず、範囲内にいた10人は撃破ギリギリ範囲外だったプレイヤーは逃げようとしてトラップに引っかかった。
それでも領域が終わった瞬間に物量で押せばどうにかなると思っているらしく、待機している。魔法使いのプレイヤーは見たところ近くにはいない。それに軍の中に魔法使いがいるならこの時点で近くまで来て遠距離からの攻撃を考えるはずだ。
つまり今回の軍は魔法使いのプレイヤーはいないと考えていいだろう。まぁ、聖職者系の魔法使い職はいるかもしれないが、攻撃に軸を置いた魔法使いは連れてきていない。そもそも今うちにいることがわかっているプレイヤーが俺とキキョウだけで、どちらも近接が得意、かつ魔法使い系の職業が相手にならない。
俺は一気に距離を詰めるし、キキョウは持ち前のプレイヤースキルで離れたところからの魔法なんて基本的に当たらない。
それに俺はこれまで負けなしだが、キキョウはこれまで負ける時近接系のプレイヤーにしか負けていない。特に暗殺に弱いことが知られているからこそ、『暗殺師団』のプレイヤーを引き連れているのだろう。見たところそいつらはもう逃げ出したようだけど。極力自分達の犠牲も少なくして順位を保ちたいんだろう。イグザミナの情報でもそこまで人数の多いギルドではないし、1人の価値が高い。大規模ギルドは1人死んだところで生存率が大きく変動することはないが、50人を切るようなギルドなら逃げの戦略を取るのが最善だ。実際うちはこうやって隠れてるわけだし。
領域の時間がきれ、プレイヤーたちが一気に襲ってくる。もちろんトラップにかかるプレイヤーは少ないけれど、その程度でどうにかなる程甘くはない。
事前にみんなには毒無効の効果を付与する装備品を渡してある。もちろん先生が作ってくれたものだから効果は折り紙つきだ。
つまりここであれが使える。近くにある木が枯れて目立たないように範囲を調整して
「スキル{毒霧}」




