第129話 作戦とトラップ
強制ログアウトの時間まで連合軍は行動を起こさなかった。そして強制ログアウト後10分ちょうど、入れるようになった瞬間にログインすると、連合軍の大半も同じようにログインが完了していた。
「みんな揃ったね。」
俺、ユイユイ、レントル、キキョウ、ヴァル、先生の6人であの連合軍との戦いを生き延びなければならない。
「作戦の詳細について先生お願い。」
「あぁ。さっきみんなに仕掛けてもらったトラップで足止め、敵の撃破を行う。こちら側には影響がないトラップだ。壁一面にも仕掛けてあるため、敵が攻め入ってくるにはそこの入り口から入ってくるしかない。
トラップを掻い潜り、ここの入り口に到達できたプレイヤーだけを相手すればいい。その役目はパンドラに任せたい。」
「通路で撃退すれば戦いづらいもんね。オッケー。」
「俺たちはどうするんだ?」
「他のみんなには監視カメラでの監視とトラップの管理をお願いしたい。ヴァルは俺と一緒にトラップの管理、他のみんなは監視な。」
「わかりました。お姉ちゃんもいるしよほど狡猾な敵がいない限り見逃しはしないと思います。」
「うん!私目いいから。」
確かにユイユイの動体視力は人より優れてるみたいだし、大丈夫そうだね。
「トラップの管理って何をやるんだ?」
「何も難しいことじゃない。トラップの発動にはこのボタンを押さなきゃなんだが、1人につき1つまでしか押すことができない設定になってるんだ。だから、俺が地中に仕込んだ分、ヴァルが壁に仕込んだ分のボタンを押すってだけだ。」
「わかった。」
「そろそろ時間だね。」
「おそらく向こうも時間になると同時に動き出すだろうし、私は定位置に着いとくよ。」
「そうだ、パンドラ。」
「なに?先生」
「さっき渡した監視カメラと連動したイヤホンの右耳の方についてるボタンを押しておいてくれ。それで拠点内の音声がそっちに聴こうえるようになる。場合によってはそっちの判断で戻ってきてくれ。そっちの音声も聞こえるから何かあったら言ってくれ。」
装備しているとはいえミミックな以上装備品は見た目に反映されない。一度取り外し、牡丹を押して再度装備する。確かに拠点内の音声がリアルタイムで聞こえてくるな。ラグも全くないし、さすが先生だな。
「確かに聞こえたよ。それじゃ言ってくるよ。何かあったらなんでもいいからこれに聞こえるように叫ぶなりなんなりしてね。」
「まかせろ!」
キキョウが拠点側のリーダーのつもりなのか拳を突き出して自信ありげにそういう。
「何がまかせろよ。遅刻したことについての罰はまた後で課すからね。」
桔梗の悲痛な叫びが聞こえてきたが、無視して拠点入り口付近まで来た。ここから拠点までは大体10mないくらいだ。イヤホンがなくても向こうで何かあって誰かが叫べばそれも聞こえるだろう。でも相手に気づかれないように連絡を取れる手段はとてもありがたい。
「さぁ、4ギルド連合軍のお出ましだね。」
時間になり、森を抜けた連合軍がその姿を現した。
向こうから俺のことは見えていないだろうが、まっすぐこっちにくるあたり、偽装工作はバレてるみたいだな。入り口を露呈させるべく近づいてきたプレイヤーがトラップのある位置まで来たかと思ったら突然立ち止まった。それを心配したのか複数のプレイヤーが近づくが、彼らも同様に立ち止まった。身動きが取れない様子だ。
もしかして牡丹を押して起動とは言ったけど、常時、痺れ罠が展開されていてボタンを押したら攻撃ってこと?
(それじゃやるぞー。)
イヤホンからそう聞こえてくる。いまトラップに捕まっているのは10人ほどだ。そしてその捉えられた10人の体が光を放ったと思ったら消滅した。
厳密にはHPが全損したのだろうけれど、通常の死亡エフェクトが表示されるまもなく消えた。おそらくゲームの仕様上残酷な死亡はエフェクトなしで消えるのだろうが、さっきの光からして雷系の攻撃を相当効果力でぶっ放したのか。そのエネルギーはどこから来てるんだよ。
「これはエグいね。死亡エフェクトが出ないってことはあれ焦げてるんじゃない?」
(だろうな。こっちでも死亡エフェクトは確認できなかったし、まぁ、ある程度の人数がかかり次第定期的に打つよ。これを使うエネルギーは魔石から取り出してるから、魔石がつきたら終わりだし。)
「そこから来てるんだ。ちなみに魔石1個で何回使えるの?」
(1回だな。)
「たいていの魔法を数10回使える魔石の魔力を1回で消費し切るの!?そりゃあの火力になるね。」
魔石といえば俺の知っている魔法、魔法系のスキルの中でもっとも魔力消費の大きい{大地の覇者}でさえ10回打って少し余るくらいには膨大な魔力を秘めているものだ。それを1発で消費するなんて。ゲームシステム的にそんなことできるのかって突っ込みたくなるくらい無茶苦茶なことしてるな。




