第125話 トラウマ?
ビービービービービービー
うおっ!びっくりした。先生の言ってたアラームか。確か2回ジャンプしたら止まるんだよな。
「パンドラ、ジャンプしたってことは寝てたのか?」
ヴァルが煽るようにそう言ってくる。
「流石に眠くて寝落ちしてたみたい。責めの言葉なら後で聞くから今は警戒だよ。入り口正面30mの位置にあるカメラに5人のプレイヤーが映ったみたい。こっちに向かっているようにも見えるけど、みた感じまっすぐ進んでる感じじゃないからここがわかってるわけではないみたい。」
「それじゃ大丈夫だろ。」
「プレイヤーを探知する魔法とかスキルを持ってる可能性もあるから、絶対大丈夫とはいえないし、念の為警戒をお願い。」
「わかってるよ。どんな奴らだ?」
そう言いながらヴァルが横からカメラを覗き込んでくる。
「知ってる?」
「・・・・・・」
「どうしたー?なんかトラウマでもある感じ?」
「すまん。俺は戦えない。」
「なんで?」
「こいつら苦手なんだよ。」
「なんか訳ありな感じ?」
「まぁ、そんな感じだ。」
「それじゃヴァルがここにいるのバレないようにしながら隠れとくしかないね。」
「後多分だけど、ここバレるわ。あいつらプレイヤー探知じゃなくて俺を探しにきてる感じだと思う。」
「そっか。後でいいから事情を聞かせてもらうよ。」
「あぁ。そのつもりだ。戦いを任せることになるが頼んだぞ。」
「5人くらい大したことないよ。それじゃこっちから出向いて行こうかな。」
「中に入られると厄介だ。そうしてもらえると助かる。」
「それじゃいってくるよ。」
ヴァルのあんな表情初めてみたな。多分あれはゲーム内のトラウマとかそんなレベルのものじゃない。おそらくリアルまで絡んだもの、しかも相当ひどい仕打ちを受けた感じかな。
でも友人関係でそんなことあるか?もしかしたら家族関係とかそっち系統かもな。ヴァルのためにもサッと倒してしまって、イベントが終わったら少し調べてみようかな。
あっという間に敵の元まで辿り着き、目の前には5人のプレイヤー。剣士のガレル、ウィザードのネリン、僧侶のバルル、大楯使いのドルーン、盗賊のガルグリンか。名前に見覚えはない。
「ユニークプレイヤーのお出ましか。いつも通り行くぞ。」
ガレルがリーダーのようだね。ドルーンが前に出て攻撃を防ぎ、ガレルとガルグリンは攻撃を掻い潜りながらこっちに攻撃を仕掛ける。そしてバルルが支援、ネリンが後方から攻撃をするといった感じだ。この構成のパーティーのテンプレみたいな戦い方だな。
「私にそんな調子で勝てるとでも?」
いつも通り、超高速での切りつけからの今回は状態異常付与も行う。装備を変更しつつすることで毒、麻痺、残傷を付与する。もちろんヒーラーであるバルルその近くにいてアイテムによる治癒が可能であろうネリンとドルーンは麻痺、ガレルは防御が高めの装備だから残傷、ガルグリンは毒だ。状態異常を散らすことによってバルルの麻痺を解除しても全員の状態異常を消すには時間がかかるし、そのうちに誰かしら死ぬ可能性もある。
まぁ、こんな回りくどいことをしなくてもいいんだけど、ヴァルもあれだけ苦しんでいたんだからこいつらが少しでも苦しんでる姿を見て少しは楽になればいいんだけど。
人の不幸は蜜の味とはよくいったものだし、それが過去に自分を苦しめた「他人」ならなおのことだろう。
「そのまま苦しみながら死ね。」
そう言い残し、さらに全員に残傷を付与する。じつは残傷というのは一般的に対処方法が知られていない。そもそもどういう状態異常かさえも知られていない。麻痺を解除するまでの時間をさらに稼げるし、このままいけばバルルの麻痺を解除できずに全員死にそうだし、放置でいい。
そうして俺はさっさとその場から引き上げてヴァルのいる拠点に戻ってきた。




