第121話 霊体の力
{反撃領域}を発動後、カウンターで倒したプレイヤーの人数は10人程度、最初に倒された10人以外は効果時間が切れるまで待機している。そりゃそうだよな。効果が切れて大人数で攻め込めば誰か1人くらいは中に入れる可能性が高い。そしてうちのメンバーを誰か1人でも倒すことができれば勝ちなんだから。
ただ、そこに一つ過ちがあるとするなら俺が仕込んでいる策がこれだけではないと言うこと。
これまでのイベントや通常のプレイでは仲間以外に隠し続けてきたこの力。
「ゼウスのローブ、効果発動」
{反撃領域}の効果が消える2秒前、俺はその言葉を発する。これまで装備さえせずにひた隠しにしてきた装備の力を今ここで初めて解放する。
{反撃領域}の効力が消え俺の視点はいるもより随分と高い。それに敵のプレイヤーたちはかなりビビっている様子だ。
「ヴァル、どこかから侵入者があってもいけないから中に入ってみんなを守ってて。」
「わかった。その姿のお前ならこのくらい訳もないもんな。あとは頼んだぞ。」
そう。これまで使ってこなかったゼウスのローブ。なぜ使ってこなかったのか。それはこう言った時に初見殺しができると言うのが1つ、そして案外使い勝手が悪いと言うのが1つだ。
5分間と言う制約の中本来のステータスを解放することができる。それはいいのだが、5分間解除不可な上常にローブを着ている状態になる。このローブ以外にも大きく、身長が140cmほどしかないパンドラのアバターでは少し大きい。ほんのわずかではあるものの動きづらいのだ。ただ、今回はそれを加味した上での発動だ。
このローブ、もう一つ効果がある。装備者に条件があるものの、1日にランダムで体質が付与される。それもあってこれまでもずっと装備自体はしていたのだが、さっき日付が変わって今日出た体質は[霊体]だ。この霊体は基本情報としては物理攻撃無効となっている。しかし、人型になるともう一つメリットがある。
それは物理法則の完全無効化。このゲームはある程度の物理法則は無効化されているが、さっき動きづらいと言ったようにローブに対する空気抵抗や地面に擦れた場合の摩擦など、バトルシーン以外での物理法則はほとんどリアルそのままだ。そこで霊体であれば、人型になることで自身とその装備品が全て透けたように見え、物理法則を完全に無視することができる。それだけでなく壁をすり抜けたりなんかもできる。
大抵の人が想像するであろう幽霊と似たようなものだ。しかし、これがあることで壁をすり抜けての奇襲で奇襲の成功率を上げたり、今回みたいに体格に合わないローブのデメリットを消すことだってできる。
さて、そんなことは今どうでもいい。俺が今からやるべきはここにいる敵全員の抹殺。なんだか懐かしいな。こうやって大量のプレイヤーを超高速で倒すのっていつぶりだ?確かキキョウと一緒に参加した第1回イベント以来だよな。それじゃ久々に本気を出すとしますか。




