第120話 侵入者と撃退の策
4時になりようやく3時間ごとの休憩が訪れる。ここまで夜に襲撃があるとか言ったことはなく平和にみんなで喋ったり遊んだりしていた。仮にどこかのギルドに見つかってもヴァルと俺が待機している以上あの洞窟内に攻め込むことは難しい。それにあの洞窟付近に近づくプレイヤーさえ確認できていないし、多分大丈夫だろう。
10分の休憩を終え俺は再びユーオンの世界へと降り立つ。再開まで後5分あるが、メンバー全員が揃って、またさっきまでと同じように遊び始めた。誰か1人が監視カメラの確認をしつつ、他のメンバーが遊ぶというふうにしていたので攻め込まれるだなんて思ってもいなかった。
しかし、再開から5分後、監視カメラに明らかに入り口に向けて歩く集団が映り込んだ。見覚えのある顔がいるな。確か色あの街で無理な勧誘をしてきた『青藍の薔薇』のフレンだったか?メンバーを率いているあたりまだ幹部としてあのギルドに所属してるみたいだな。
「みんな、警戒体制をとって。ハンスは先生と一緒にここで待機してて。ヴァルは私と一緒にきて。万が一中に対処できない数が入ってきたらすぐに連絡して。相手は『青藍の薔薇』のフレン。問題はないと思うけど、数が多いからヴァルも死なないよう気をつけながら戦ってね。」
「わかりました。お気をつけて。」
「ここがわかるってことは相当な手だれだな。まぁ、パンドラもいるしどうにかなるか。」
入り口まで少しだけ距離があるのでヴァルと一緒に慎重に向かう。そんな中でふとヴァルが話し始めた。
「そういえばお前と2人で共闘するのは初めてだな。」
「そうだっけ?そういえば私全然タッグ戦闘したことないかも。」
「だろうな。個対郡の戦闘向きなスキルばっかりだしな。毒無効の装備はゲルマに作ってもらって装備してるから{毒霧}が必要そうだったら遠慮なく使ってもらっていいぞ。実際ゲルマが作れる一番強い毒のポーションも防げたから効果は折り紙付きだぜ。」
「それなら遠慮なくやらせてもらうよ。」
「あぁ。確実に勝つぞ。死んだら元も子もないからな。」
「うん。頑張って生き延びてよ。」
「やってやるさ。ミルナに格好悪いとこ見せるわけにはいかないしな。」
「格好いいところ見せれるわけでもないけどね。」
「そういうこと言うとちょっと萎えるんだけどな。まぁ、お前らしいな。やるぞ!」
俺たちがそう意気込んでいる間に相手は入り口を見つけたらしい。俺たちの拠点の入り口がついに開かれた。
「ヴァルいったん下がってて。しばらくはあれで食い止めて様子を見るから。」
「了解!助けが必要だったらすぐに言えよ!」
「分かってるって。それじゃ{反撃領域}」
この洞窟の入り口は元々そこそこの広さがあったのだが、ユイユイとミルナの土魔法で無理に埋め立てて入り口は1箇所。それも人2人がすれ違うのがギリギリの幅しかない。これなら{反撃領域}がある限り敵が入ってくることはできない。
敵を撃退するために講じていた策の一つ目がこれだ。こうすることで最低でも領域を使用した時点で半径1m圏内にいたプレイヤーは倒すことができるし、みんなの準備が整っていなければ準備が整うまで時間を稼ぐことができる。
ただ、{反撃領域}も万能ではない。クールタイムが25秒あるため、その間に攻め込まれては元も子もない。だからもう一つ仕込んであるんだよね。




