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ユートピアオンライン~ミミックのアバターを強制された俺はなんだかんだでゲームライフを謳歌する~  作者: 雲英侑李
第3章 ユートピアオンライン2

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第116話 意外な決着

俺の攻撃を受けて怯んでいるパルフに対してさらに追撃を仕掛ける。ネイはカウンターを警戒してこちらが距離を取るだろうと読んだのだろうが甘いな。そう読むところまで考えての追撃だ。ネイは判断ミスから行動がわずかに遅れ、再びパルフに10連撃が決まった。

大規模ギルドのマスターといえど流石に20連撃分の攻撃は耐え切ることができず、パルフはHPが全損し、光の粒子となり始める。ここから5秒間が蘇生が可能なタイミングだ。それを過ぎると光の粒子が霧散してしまい蘇生が不可能になる。


「しまった!」


ネイがその言葉と同時に蘇生アイテムを取り出す。やっぱり持ってるよね。そっちは1人分死んだ人数のカウントが増えたところで割合としてはそこまで増えないもんな。


「それを許すと思った?{反撃領域}」


{反撃領域}はスキル自体に5分間の移動制限という大きなデメリットが付随していることでクールタイムが30秒と非常に短い。すでにクールタイムは終了し、使用可能状態なのだ。そしてこのスキルは領域内に他のプレイヤー、飛び道具などの攻撃、モンスター、アイテムなど何かしらの物質が侵入した瞬間AGI無限が適応可能になる。それをしないことも選べるが、今回使用したのは戦闘のためではない。


「ここで{反撃領域}?バカなの?ほっ!」


そういって俺の背後からパルフの粒子に向かって蘇生アイテムを投げつける。この蘇生アイテムはアイテム自体が粒子に触れることによって効果を発揮する。つまり、触れさせなければいいだけの話。そこで{反撃領域}だ。

おそらくネイは俺が領域によって引き上げられたAGIに振り回されつつ何とか攻撃を避けていると考えているはずだ。彼女の武器編成からしてこのスキルをとっていないとは考えづらい。このスキルは使ったことがあるプレイヤーであれば勝手が悪いことはよく知っているはずだ。無限のAGIを得ても反射速度が間に合わなければ意味がない。

さっきの発言から考えても間違いなく領域内での動きを制御しきれていないと考えているだろう。これまでの発言とか武器を使いこなしているところとかプロっぽい感じがしていたけれど違うのか?プロのVRMMOゲーマーならこのくらい読み通すだろ。

俺は投げられたアイテムをいつも通り実態のない手で掴みそれを振って煽る。


「{反撃領域}内での動きを制御できればこのくらいは造作もないよ。」


俺が言い終えると共にパルフの粒子が霧散し消滅する。


「さぁ、これでそっちのギルドマスターはいなくなり、ギルドの統制に支障をきたすことになったわけだけどまだ続ける?あなたまで死ねばそっちのギルドは大打撃だと思うけど?」


「続けるわよ。私が死んでもうちのギルドの割合としては大した割合じゃない。ギルドの指揮も他の幹部に任せてあるし。でもあなたは違う。あなたのギルドは1人が死ねばそれだけで上位入賞が厳しくなる。だからこそあなた以外のメンバーは出てこずにあなただけが危険を犯して外に出ているんでしょう?」


「まぁ、正解かな。」


「そしてさっきの巨大化はスクロールで獲得したスキルなんでしょ?それを試しに使ってみたところを見ると拠点はこの近くなのかしら?それともわざと離れている可能性もあるわね。」


「さぁね。そこまでわかってるなら私じゃなくてギルドを狙えばいいじゃない?あなたどうせプロでしょ?そのくらいのことは読めているんじゃないの?」


「よくプロだってわかったわね。そう私はユーオン専門プロチームのメンバーよ。だからこんなところで負けたくはないのよね。でもあなたのそのプレイヤースキル。尋常じゃないわね。あなたがプロではないことは調べてあるけど何でそのレベルでプロじゃないのか不思議なくらいだわ。こうやって話してみてもさらに疑念が膨らむだけだったし。」


「正確には将来のプロかな?私まだ学生なんだよ。卒業したらプロになる予定だし、プロと言っても遜色はないんじゃない?」


「そうね。ファザオンでキキョウに勝ってプロチームから声がかからない方がおかしいわよね。キキョウ私はキキョウにさえ勝てなかったのに。」


「キキョウと戦ったことあるんだ。っていうかお喋りが好きなみたいだね。さっきまでは寡黙って感じだったのに。」


「正直逃げる気もないし、戦う気もないからね。今回キキョウは意地でも殺したいけどね。どこのギルドにいるか情報が全くないんだけど。」


「教えてあげようか?」


「何が狙い?」


「話が早くて助かるよ。そうだね。所属ギルドは教えるけどこちらからの要求を2つ飲んでもらう。2つとも飲めないのなら最低限1つ目と他にもう一つと同等の要求を飲んでもらいたいかな。」


「要求は?内容次第ね。」


「1つ目は今回イベント中キキョウに手を出さないこと。」


「なぜ?」


「私が殺りたいから」


「なるほどね。まぁ、イベント中でなくてもリベンジできればいいし、それはいいわよ。」


「2つ目はイベント終わったらうちのギルドに来てくれない?」


「なるほどね。人数が少ないから勧誘をしたいと。」


「そうだね。ちなみにうちに来た場合、うちの内部の機密情報とユニークプレイヤーに関する情報を教えるし、プロチームないであれば共有してもいいよ。外部に漏らさないことが絶対条件だけど。」


「情報量にもよるね。私はまだ『完璧』にしか所属していないから無断で所属ギルドの変更はできるけど、その権利を使ってまで得る情報なのかを知りたい。」


「そうだね。まず前提としてうちでしか所有していない情報がユニークプレイヤー関連のものを除いて一つある。ユニーク関連だともっとたくさんあるけど。」


「なるほどね。うちでしかってことはどこかと共有している情報があるの?」


「もちろん。具体的なことは言えないけど、とあるギルドと共有している情報。これもいくつかある。もちろんその中にはエクストラモンスター関連の情報も含まれているよ。」


「なるほどね。で、そこまで話すってことは私がそっちに移ると確信しているんだ?」


「そうだね。最後に重要な情報を一つ。うちのギルド私含めて8人中プロもしくはプロクラス、将来的にプロレベルに上り詰めることができるプレイヤーが5人いるよ。」


そう。キキョウと俺はプロ。ヴァルもプロと遜色ないPSを持っている。そしてレントルおそらく将来的にプロになるだろう。残り1人はユイユイだ。ゲームのシステムとかに関してはあまりわかっていないみたいだが、自身のスキルや、それを使用しての戦闘に関するセンスは俺以上だ。ユイユイのことを考えての「将来的にプロレベルに上り詰めることができるプレイヤー」だ。


「!それって本当なの?うちでもプロレベルは数人しかいないのに!?」


「1人はまだまだだけど圧倒的なセンスを持っている。残りは全員プロレベルの何かを持っているよ。」


「なるほどね。まぁ、『完璧』の方も人数が増えてきてパルフは天狗になっているしそろそろ潮時かもね。これも巡り合わせか。」


「さぁ、ギルドを脱退する決心はついたみたいだけど、うちに来るかい?さっきも言った通り、うちに来た場合、こっちが提供するのはユーオン内でもごく一部のものしか知らない情報とキキョウの所属ギルドの情報だよ。これ以上の高待遇はこのゲーム内でもうち以外用意できないと思うよ。」


「それじゃお邪魔させていただこうかな。」


「決まりね。今すぐに何かの情報を渡すのは無理だけど。そっちが正式にうちのメンバーになったら全て教えてあげるよ。」


「わかったよ。それじゃよろしくね。あと、ひとつ聞きたいんだけど。」


「なに?」


「女子は何人?あなたを除いて」


「ネイをいれないで2人だね。」


「私入れてたったの3人か。」


3人?ネイ、ユイユイ、ミルナ、俺でゲーム内での視点だと4人なはずだが。


「あなた性別誤魔化すならもうちょっと頑張った方がいいわよ。」


やっぱりバレてたか。何でプロの人たちってわかるんだろう?


「言い方的にそうかと思ってたけどやっぱりバレてたのか。」


「そりゃね。人型のアバターを見た時から固定アバターだろうとは思っていたし、それで中身が男だったら女のフリはするだろうし。」


「よくわかるもんだな。今のところギルド内でこのこと知ってるの2人だけだぞ。」


「逆に2人いることに驚きだけど。見抜いといて何だけどクオリティは高かったし。」


「まぁ、2人ともリアルで繋がってるからな。今度実質的なオフ会も予定してるからよければこいよ。」


「まぁ、そっちのメンバーと馬があえばね。少なくともあなたとは馬が合いそうだわ。ってかあなたはどうするの?」


「まぁ、大丈夫だ。どうにか女子としていくよ。」


「声は?」


「元々中性的な感じだから大丈夫。」


「服は?」


「ギルドにいるリア友のお姉さんが貸してくれるって言ってる。化粧とかも教えてくれるって。」


「ウィッグでもつけるの?」


「髪は今長めだから美容室行ってボブっぽい感じにしようかと思ってる。」


「名前は?明らか男の子の名前だったらバレるでしょ?」


「名前も中性的だから大丈夫。」


「全部中性的なのね。それはずるいわね。」


「できるだけキャラは崩したくないし、頑張って女装していくよ。バレるのはプロとして活動を始める時かな。」


「プライベートなこと聞くのは御法度って承知の上で聞くんだけど、どこか聞いてもいい?」


「まだ確定はしてないし、面談予定が立ってるだけではあるんだけどFASTGAMESだね。」


「マジで!?私もFASTGAMES所属なんだけど。」


「マジ?偶然にも程があるだろ。じゃあ、キキョウを目の敵にしてるのって。」


「ボロ負けした上にあいつがうちに来るから。っていうか何でキキョウがうちに来ること知ってるの?」


「ファザオンで戦ってるし、FASTGAMESと繋げてくれたのもキキョウだからね。」


「あれと仲良いんだ?」


「まぁね。」


「よくさっきまで戦ってた相手とここまで話せるよね。」


「だってあなた裏切るような人間じゃないし、それに漏らして問題がある情報なんて性別だけだし。うちに来た後は女として扱ってよ。バレたくないから。」


「はいはい。ちなみに中身はどっちなの?」


「性別?肉体的には男だけど、中性って感じだね。どっちでもないって感じ。」


「あっそ。話してて感じてたけどあなたって少し変な人なのね。まぁいいわ。それじゃ、フレ登録だけして別れましょうか。」


とっくに{反撃領域}の効果は切れていたのでフレ登録だけして別れた。


「そうだ。うちの拠点この辺だけど、多分見つけられないと思うからメンバーをこっちにこさせないようにするとかはしなくていいからね。筋書きとしてはパルフがやられて戦いにならなさそうだったから逃げ帰ってきた。って感じで。」


「そのつもりだよ。それじゃまたイベント後。」


「うん。すぐにはあえないと思うから、それまではバレないようにそっちにいてね。」


「そっかこのイベント終わったら明後日がファザオンのイベントだもんね。頑張ってねー。」


そう言いながら走り去っていった。何というか気さくな感じだったけど、ひねくれてもいそうだな。向こうも言ってたけど、俺とは馬が合いそうだ。

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