第114話 『完璧』
ヒュッ
風を切る音と共に俺の体に矢が当たる。{不壊}の発動中であったためダメージを受けることもささることもなかったが。どこからだ?全く気配を感じなかったぞ。
弓の角度から絞り出した方向へ走ると今度はモーニングスターでの攻撃が飛んできた。もちろん回避は容易いが、なるほどな。弓にモーニングスターこの2つを扱うプレイヤーなんてそうそういない。だが、俺の元にはそれをするプレイヤーの情報がある。おそらくは
「やっぱりあんただね。イグザミナから情報を買ってなければ混乱していたところだったよ。まぁ、マスターまで同行しているのは予想外だけど。」
俺の前に佇むのはギルド『完璧』の幹部であるネイ。そしてその隣にはギルドマスターのパルフまで同行している。
「よくそんな余裕があるな。ネイの矢をまともに喰らっていたくせに」
「別にダメージはないからね。仮に気がついていても回避なんてしないよ。」
「そう。それじゃ今度は確実に仕留める。」
パルフは相手を積極的に煽っていくタイプ、ネイは寡黙なタイプって感じかな。
「仕留められる自信があるならやってみな。こっちは死ぬわけにはいかないんでね。」
「君を倒すのは通常プレイヤー側からしたら大きなデメリットになるだろう。それでも、このギルド戦で勝ち残るために倒させてもらうよ。」
「心配はいらないよ。今回のイベントで死んでも通常マップにリスポーンできるらしいから。」
「それなら心配は必要ないな。」
もちろん嘘だ。全力で向かってきてくれた方がこっちとしても都合がいい。もちろんこんなところで死ぬ気はないし。
「それじゃいかせてもらうよ。{大地の覇者}」
先手を取って{大地の覇者}を発動させる。もちろん対策はされているだろう。
予想通り、地震が始まる直前にネイは近くの木に飛び乗り、剣山大地が届かない高さまで登って行った。パルフはうまくバランスをとっている。剣山大地が発動する直前に剣を地面に叩きつけて高く飛び上がった。
さすがうまく回避するね。じゃあこっちはこれで行こうかな。少なくともモーニングスターは壊す!
「{反撃領域}」
半径1mの範囲が光り輝きそこから出られなくなる。
「なるほど{反撃領域}か。たしかにそれならお互いに手出しはできないな。しかし、ネイにこれがあるのを忘れていないか?」
パルフがそういうとネイがモーニングスターを取り出す。そしてこちらに向かって思い切り叩きつけてくる。これを待っていたんだ。
俺は事前に用意していた片手剣を装備し、迎えうつ。
モーニングスターが反撃領域内に侵入した瞬間反撃領域内の俺はAGI無限で動けるようになる。その瞬間にモーニングスターにつけられた棘を全て叩き切る。
今回使った片手剣はごく普通の鉄でできた何のスキルもついていないごく普通の片手剣だ。ではなぜこのような芸当が可能だったのか。
それは俺がこういう事態を想定して事前にモーニングスターの弱点を探っていたからだ。実際に使ってみたり、モーニングスターを使えるNPCに協力してもらったりしてモーニングスターの棘は根本から1cmほどの部分を片手剣で叩き切るようにすると簡単に棘が折れることがわかった。そしてこのゲームのモーニングスターは棘が全てなくなった時点で武器としての性能を失ったとされるのか耐久値が0になったと判断されるのかはわからないが消滅する。
これによってネイがこちらに飛ばしてきたモーニングスターはネイの手元に戻ることなく消滅してしまった。




