第11話 イベント終了と{裏切の制約}
さっきの攻撃は最低でもマッハ10を超えている。それをPSではじき返していることを認めたくはないけれど、そうなのだろう。というか、どうやったらそんな芸当が可能なのか気になるものだな。
「ミソラは隙を見つけて攻撃を仕掛けてくれ。俺はどうにか隙を作れないか頑張るから。最悪俺が死んでもお前がキースを倒せばこっちの勝ちだ。やるぞ!」
「了解。ずっと最高速だとスタミナが持たないから、こっちでも隙を作れないかいろいろ試してみる。お互いの作った隙に攻撃を叩き込んでいこう。」
「それじゃ行くか。」
俺はいったん最高速でキースを挟んでキキョウの対角に来た。キースが警戒しているのは俺だけのようでこちらを見ている。やっぱり、俺の動きを追えているような動きだ。まさかユニークプレイヤーだったりするのか?それだったら俺の視界には表示が出るはずだが。
いや、何か抜け道があってそれで表示されないようにしているのかもしれないな。ステータス値を調整したいところだけど、このイベント中は経験値が入らない。もうステータスに触れるポイントは残っていない。
キースが声の届く位置まで近づいてきた。
「やっぱり君たちと僕の3人が残ったね。とりあえずキキョウ君には退場してもらおうか。」
ヤバイ!
キースが手を振り上げ魔法を発動させようとしたのを見て、俺はすぐにキキョウを守るためにキキョウの基へ向かった。もちろん回り道をせずにキースだけを回避する最短ルートでだ。それにもかかわらず、俺がたどり着いたころにはキキョウはやられていた。肉体の跡形がなく、どのような魔法を使用したのかさえ分からないような状態だ。
魔法の発動スピード、動体視力、そしてキキョウを一撃で倒せるほどの魔法の威力、生産系のスキルを別で所有しているというのにそれ以上に戦闘能力が高い。
「キースさんあなたまさか。」
「気が付いたみたいですね。ただ、ここで情報を開示するのはお互いに好ましくないのでは。このゲームのシステム的に。それにここで殺しあうのは意味がないことだと知っていますよね?」
「それはどうでしょう?私は一般プレイヤー側につきたいと思っています。Unique解説書で見かけた程度ですが、確かペナルティを負うことで一般プレイヤー側につくことができますよね。私はそれを使用しようと思っています。」
この映像は配信されている。なので配信と運営の録画に音声が入らないようお互いに小声で話している。ほかのプレイヤーからしたら奇妙な光景でしかない。
「Uniqueという恵まれた立ち位置にいながらそんなことを望む人がいるとはね。それではここで殺り合いますか?」
「そうですね。お互いにUniqueだということがしれれば私の評判も上がるかもしれませんし。やりましょう」
「それでは二度とこのゲームにログインできないようにしてあげましょう。」
さっきキキョウに使った魔法が来る。いや、詠唱がないってことはもしかしてスキルか。
ヤバイ。俺はすぐに宝箱の姿に戻る。キキョウと違ってAGIの差で超えられなかったらしく、何とか間に合った。スキル{不壊}の効果でノーダメージだ。
ん?動けない。スキルの効果が終わって動こうと思ったが動くことができない。もしかしてスキルの効果が終わっていない?これはまさか重力系か?
「これを耐えるとはさすがの防御力ですね。あなたを圧倒する以上隠せないでしょうし、私も本来の姿に戻らせていただきましょう。」
このユートピアオンラインでユニークプレイヤーに最初に与えられるスキルについてずっと考えていた。{不壊}は正直どういう関連かわからない。ただ、{毒霧}これについては一つ仮説を立てていた。
ミミック→トラップ→毒→{毒霧}
といった風に3段階連想をしていると考えた。そしてこいつの力は重力。逆に連想していく。
重力→落ちる→空中→???
つまりこいつは飛ぶことができる種族。これが俺の考えだが、どうだ?
キースのアバターに禍々しい羽が生え、羊の角のような角が生えた。
「僕はUniquePlayerNo.5サタン。種族は悪魔族の頂点である大罪の悪魔です。」
なるほど。7つの大罪の中でも憤怒をつかさどるといわれているサタンか。重力系なのは飛行能力と関連がある。俺の{不壊}がモンスターではない無機物は基本破壊されないというゲームシステムに由来しているものだと仮定すると、こいつのもう一つの能力は憤怒に関連のある能力で間違いないだろう。
「君はその状態ではしゃべれないんだってね。かわいそうに。それで人型に慣れるまで時間をかけずに頑張ってきたわけだ。それに私よりも今の時点では低レベル。」
俺は一旦人型に戻り提案をする。
「キース提案があるんだが受けないか?」
「提案?戦うといった以上、私の方が高ステータスなのだから君の負けだよ。」
「いや、お前の負けだ。お前は何時間睡眠を耐えることができる?俺に関しては宝箱の状態であれば睡眠をとることができる。なぜならあの状態ならHPが一切減少しないからだ。それでも続けるか?お前が眠ったらその瞬間俺が攻撃を叩き込んで殺すだけになる。そんな意味のない戦いをするのと、ここで運営に申請してリタイアするの。どっちがいいか自分で選びやがれ。」
それだけ言って俺はすぐに宝箱状態に戻る。
「うーん。君の観察眼なら僕が狸寝入りしても見抜きそうだね。それに君のスキルに関してもさっきの感覚からして間違いなさそうだ。そうさせてもらおうかな。」
キースはすぐに運営にリタイアを申請した。かなり合理的な人物のようだ。
「それじゃミソラ。またいつか。そのうち戦うことになるだろうし。」
「次合うときはお互い本気で殺り合うことになりそうですね。」
そしてキースはリタイアが受理され強制転送されていった。
それにしてもすでにサタンというユニークプレイヤーがいたのにもかかわらず俺がログインしたときに初めて通達がされたのは一体どういうことだ?まさか全員がログインしたことでユニークプレイヤーというシステムが公開されたということなのか。それなら残りの6人はこのイベントに参加していない、もしくは俺が殺してしまったことになる。ただ、全体の通達がないことを考えると、参加していないと考えるのが妥当か。
《イベント終了。サバイバル部門優勝ミソラ・キキョウペア。キル部門優勝ミソラ・キキョウペア。両部門同一ペア且つUniquePlayerを含むペアが優勝したため、本来の優勝景品であるUniqueWeaponではなく、ギルドシステムの先行使用権となります。》
開始前にいた場所に転移させられて、全体の通知が来た。
ギルドシステム?まだ未発表の新システムか?確か2週間後に大型のアプデがあったよな。それと合わせて実装予定なのかな?
《ユニークプレイヤーについて》
もう一つ来たな。さすがに隠し通せないもんな。
《先日告知したユニークプレイヤーについての新たな情報です。現在このゲームに存在しているUniquePlayerは全部で8人。すべてのUniquePlayerがログインしています。さらに、ユニークプレイヤーのみができる儀式{裏切の制約}が存在します。これを行ったUniquePlayerは通常プレイヤー側に属することになります。デメリットとして通常プレイヤーを裏切ると即死する仕様に変更され、プレイヤーネームの偽装が不可となり、すべてのステータスが全ステータスの合計が5880を最大として変化します。それぞれのステータスに振り分けられた値の全体に置ける割合でステータス値が算出されます。ただし、他のUniquePlayerとの戦闘中にのみ元のステータスが解放されます。これは集団戦の場合でも相手の集団にUniquePlayerが1人でもいれば適応されます。{裏切の制約}を行ったUniquePlayerにはプレイヤーキルについての制限やペナルティが追加されます。》
ついにUniquePlayerについて最低限の情報が開示されたといったところかな。これでようやく{裏切の制約}を実行することでプレイヤー側につくことができる。




