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第1話 アバターはミミック!?

俺は人見未空(ひとみみく)。ごく普通の高校生だ。友達は1人しかいなかったけれど、楽しくやっていた。しかし、3日前を境にそいつと一緒にいる時間が激減してしまった。その原因は


「お前も始めろって、『ユーオン』。絶対ハマるからよ。」


「またその話かよ。俺はゲームは評判を見て自分に合うか見てから始めるタイプなんだ。金欠高校生には高い買い物なんだから。まだ発売して3日だろ。」


「そうだけどさー。絶対お前に合ってると思うぜ。何年一緒にいると思ってるんだよ。」


「お前がそこまで言うならやってみてもいいけどさ。」


こいつの名前は如月恭平(きさらぎきょうへい)。俺の唯一の親友だ。もう10年くらいの付き合いになるな。


「じゃあ放課後に買いに行こうぜ!」


「わーったよ。それじゃまたあとで。」


今はクラスも違うし、昼休みももう終わるところだったから恭平は戻っていった。

『ユーオン』、正式名称『ユートピアオンライン』。最新のVRMMOで、ファンタジーの異世界を舞台としたゲームだ。自由度が高く、プレイヤーの職業は戦闘職だけでなく、生産職や商人まで様々なものが選べる。フルダイブゲームとしては3作目にして最高傑作だと言われている。発売日当日にはプレイヤー数100万人を突破し、さっきスマホのニュースで今日1000万人を突破したと流れてきた。確かに大衆向けでプレイヤーの層も厚いためやりこみもありそうだし、とりあえずやってみようか。


あっという間に放課後になり、俺は恭平と合流してゲームショップに来ていた。ユーオンは予約だけで数百万件来ていたらしく、転売対策も兼ねて初回に大量生産したらしい。そのため、プレ値になることなく普通に買うことができた。


「未空、あえてお互いの情報を明かさずにやってみないか?」


「それも面白そうだね。じゃあさ、プレイヤーネームだけお互いに共有して遭遇したらパーティーでも組もうぜ。」


ユーオンでは頭上にプレイヤーネームが表示されるので遭遇さえすればお互いに気づけるだろう。


「決定な。俺のプレイヤーネームは『キキョウ』だ。」


「お前いっつもそれだよな。それにしてもよくそんなありきたりな名前使えたな。同じネームは設定できないんだろ?」


「そりゃサービス開始前に予約してたのを受け取りに行ってサービス開始と同時に設定開始したに決まってんだろ。」


「さすが無類のゲーム好きだな。俺もあんまり人のこと言えないかもだけど。」


「お前のいつも使ってるネームは多分使えないと思うけどどうする?」


「そうだな。設定完了してから連絡するよ。『ミク』なんて本名オンラインゲームで使いたくないし、そもそも誰かが使ってるだろうしな。」


「そうだな。それじゃ帰ってすぐに設定しろよ。」


「あぁ。それじゃまた明日な。」


「おぅ。」


恭平はあっという間に走り去っていった。相変わらずだな。さて俺も帰って設定をしてみようか。

帰り着いた俺は水分補給をしてすぐにゲームに向かった。どうせ今後使うからと恭平に押されて買っていたのでフルダイブ専用のVR機器は一通りそろっている。ヘルメット型の専用デバイス『VRメット』。何ともダサい名前だが、これの技術力は確からしい。それじゃ設定やりますか。

アクセスするためのカセットをセットし、VRメットの電源を入れる。


【Welcome to Utopia Online】


ここの演出はネットで見たから知ってるんだよな。スキップもできないし。


「特殊ソフト[Pandora]の読み取りに成功しました。専用演出へと移行します。」


なんか音声で聞こえたな。特殊ソフトってなんだ?それにパンドラって聞こえたけど。そんな演出あったか?

音声案内が終了すると同時に正面の文字が背景ごとひび割れ出した。なんでだ?まだ設定もしていないのに何でイベントが始まってるんだよ!


【Welcome to Unique Player】


ユニークプレイヤー?また知らない単語が出てきたな。ソフトに何か加工でもしてあったのか?


「それでは設定画面に遷移します。顔・体のビジュアル、職業の設定ができます。ステータス値の割り振りはゲーム開始後に行えるようになります。」


とりあえず設定画面にはいかせてくれるみたいだ。職業に応じて初期武器ももらえるみたいだし。とりあえずは安心して始められそうだ。っていうかプレイヤーネームは後で設定なのか?普通最初な気がするけど。


とりあえず、身長は低めの顔は隠すつもりだからモブ顔、職業は盗賊だ。俺が一番好きな職業なんだよな。やっぱり双剣で戦う盗賊ってめっちゃかっこいいよな。身長が低めなのは物陰に隠れたりするときに有利なのと、現実の体と似た体形にすることで体の感覚をつかみやすくするためだ。

これでビジュと職業の設定は完了だな。たしか初期設定はこれとプレイヤーネーム、スキルの選択だけらしいけど。


「以上にて設定は完了です。専用プロローグを表示します。」


おい、音声案内さんよ。俺はプレイヤーネームを設定していないんだが?そのままプロローグに入りやがるし。

神みたいな人が出てきて字幕付きで何か言ってる。正直聞き取れないから字幕がありがたい。確かこの演出は通常のプレイヤーにもあったな。


【UniquePlayerNo.1パンドラ。貴殿はこの世界のバランスを壊すことのできる最強の存在である。そのため、貴殿に最初に与えるのはたった二つのスキルと、この世界に関する一部の知識、そして通常よりも少ないステータスポイントのみ。この世界で貴殿が生き残り、貴殿らユニークプレイヤーのユートピアを創るもよし、通常のプレイヤーと共存をし、平穏な通常プレイヤーのユートピアに浸るもよし。好きなように生きるがいい。】


話を終えた瞬間、俺はまだスキルも選んでないってのに真下に穴が開いて落とされた。普通に考えておかしいだろ。スキルくらい選ばせてくれよ。それに通常はスキル4つもらえるはずだろ!高い位置からの落下じゃなくて森の中に投げ捨てられたから良いものを。

何はともあれ、設定も完了したし、俺の容姿確認と行きますか!初期装備も気になるところだし。

たしか念じればプレイヤーの視点移動ができるんだよな。その間体を動かせないから無防備になるけれど、こういった場面で役に立つ。さっそく視点を移動させて俺の目の前に置く。

ただ、そこにいたのは人間ではない。どう見ても生物でさえない。そこに置いてあったのはたった一つの宝箱だったのだ!


え?どういうこと?マジで意味が分からないんだけど。俺容姿の設定したのに全く反映されてないじゃん。もしかしなくてもこれミミックだろ。プレイヤー名もパンドラだし。パンドラの箱を開ける。つまり俺を開けると災いが降り注ぐって言いたいのか!

なんか箱の中から手は出せたし、とりあえずポーズ画面を開いてみようか。確か空中に手を置きながらポーズ画面を開こうとすれば開けるらしい。このゲームはやりたいことを組んでくれるから非常にありがたい。ミミックでも視界がふさがれていないのは幸いだけど、中に人型モンスターがいるんじゃなくて宝箱自体がモンスター扱いだから、これからの俺のユーオン人生、ずっとこのままなんだろう。一応ステータスとかも見れるみたいだし見とくか。

UniquePlayerNo.1パンドラ

種族:ミミック

スキル:{不壊(ふかい)}{毒霧(どくぎり)

HP(体力)   30

MP(魔力)   0

STR(筋力)   0 

VIT(防御力)  0

INT(魔法攻撃力)0

RST(抵抗力)  0

AGI(素早さ)  0

DEX(器用さ)  0

LCK(運)    0

SPステータスポイント30

初期装備:Unique解説書


こんなところだな。スキルの{不壊}は俺が自分の意志で動いていない間HPが減らないスキル。{毒霧}は周囲に毒霧を発生させるスキル。使用条件が宝箱の蓋が1㎝以上開いていること。使用後再使用までのクールタイムが2分で霧の持続時間は1分20秒。自身に毒は効かず、魔力等の消費もない。もちろん自分で開けることもできる。

初期HPが30で与えられてるステータスポイントが30か。確かに少ない。通常のプレイヤーの場合、HP量はランダムではあるけれど、合計がちょうど100になるように与えられる。

ただ、その分初期装備によくわからない解説書と、チートレベルのスキルのセットを得てるってわけだな。この2つのスキルがあればどんな相手でも負けることはない。スキルの使用は動くこととみなされないらしいので動かずに{毒霧}を使い続ければそのうち相手は死ぬかあきらめて逃亡するだろう。

そしてこのUnique解説書とやらかなり有用な情報がかかれている。これほかのプレイヤーたちも知らないんじゃないか?

まず、チュートリアルの町で知ることができる初期情報すべて。これは載っていて当然だろう。森の中からスタートしたんだから。そしてUniqueの名を冠する者について。

この世界にはUniqueの名を冠する存在が8人。そのすべてがプレイヤーでその全員がモンスターのアバターを使用したプレイヤーらしい。ただ、それ自体はカセットに特殊暗号として仕込まれているため。そのカセットを使用してプレイするプレイヤーが現れなければ、8人になることはない。ユニークプレイヤーはゲームの初ログイン順に番号が付けられる。つまり俺は最初のユニークプレイヤーということだ。

そしてこのゲーム、『ユートピアオンライン』。そのタイトルの真の意味も書かれていた。

運営は一般プレイヤーに対してUniqueと敵対するようイベント等で仕向けるらしい。もちろんUniqueを見分けるのは困難ではあるが、それでも通常プレイヤーたちを敵対させ、勝利した方の理想郷を築き上げる。その理想郷を築き上げる者を決めるための戦いのゲームそれがこの『ユートピアオンライン』だ。


そして最後におまけ程度にとんでもなく重要なことが2点書かれていた。

1点目。通常プレイヤーはプレイヤーキルをした際にペナルティとして1週間のステータス10%減、プレイヤーネームが緑から赤に変化する。しかし、ユニークプレイヤーはその性質上、基本的にプレイヤーからしか経験値を得ることができない。そのため、プレイヤーキルは適用されない。

次に2点目。通常プレイヤーは死んだ際、登録しているリスポーンポイントにてノータイムで復活する。ただし、デスペナルティとして24時間のステータス20%減が与えられる。それに対してユニークプレイヤーが死んだ場合、1時間以内に蘇生が施されなければ復活することができない。さらにソフトが破損し、ソフトの買い替えをしなければ新たにゲームを開始することもできないようになってしまう。


最後のが一番きついな。つまり俺は実質的に死ぬことができない。このゲームでは倒したモンスターは電気的な光の粒子となって消えていくのだが、俺は蘇生が可能な以上、1時間の間死体がその場に残ることになる。プレイヤーたちはまだ倒せていないと勘違いをして攻撃を続けるだろう。その結果1時間誰も蘇生ができない。

つまり死んだらそこで終わりだ。霊体で使える攻撃スキルとか蘇生スキルがあれば別だけど。

いくらスキルが強いとはいえミミックはミミックだ。自分からプレイヤーを狩りに行くのは難しい。いったんログアウトして、それからステータス構成と、リサーチをしてどこに構えるかを考えよう。しばらくはレベル上げをしていろいろスキルを探さないと、このまま死ぬと、ソフトにかかった6000円が無駄になってしまう。

バイトのできない高校生の6000円の重みはかなりの物なのだ。それなりに楽しまないと損になっちまうしな。

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