第9話:ダブルスタンダード
リリアの強さにとても驚いた。
あそこまで強いとは思わなかった。
リリアの強さに感服した俺はリリアにご褒美を与えることにした。
彼女の頭の上に手を置く。
リリアは自分から頭を擦り付けてくるような動きで俺に甘えてくる。
今回もケモミミを撫でる。
リリアが一番喜ぶポイントだからだ。
耳の内側を丹念にマッサージしていく。
今までの経験からして、多分リリアは耳の表面を軽く優しく撫でられるより、耳に手のひらの熱が伝わるぐらい、じっくりと撫でられる方が好きだ。
気持ちよさそうな声がリリアの唇から漏れている。
「ご主人様……そこすごく気持ちいいですぅ……」
ご主人様としての努めは無事果たせているようだ。
ちなみに今のリリアは変身前だ。
変身後のリリアはスキンシップに羞恥心を抱いているようで、あっさりと断られてしまった。
とても残念だ。
しかし、チャンスならこれからいくらでもある。
いずれ成長後のリリアともスキンシップをしてみたい。
というか、変身前や変身後って文字に起こすと面倒くさいな。
これからは『変身前をリリア』、『変身後をリリア様』と表現しよう。
賢明な読者ならご理解できるだろう。
決して書き分けできなかったわけではないのだ。
リリア様はおっぱいが素晴らしく、スタイルもいい。
ボンキュッボンなのだ。
性格もクールで、おっぱいもでかい。
あのミステリアスな雰囲気に俺の聖剣も虜になってしまった。
とはいえ、今のリリアも好きだ。
かわいげがあって愛嬌もある。
個人的にすごすぎですぅうううっていう直球の反応が好きだ。
リリアもリリア様も同じ彼女なのだ。
そこに格差はない。
ご主人様としての愛情を平等に与えてきたい。
スキンシップを終えた俺達は荷物をまとめる。
大太刀もアイテムボックスに収納した。
「さてと、そろそろ王都に戻るか」
「はい」
俺はマップ画面を開いてカーソルを王都に合わせる。
そろそろ『第二のオプションスキル』を使うか。
「ポータル発動。転移先は王都。対象者は俺とリリア」
俺達を囲むように光の輪が浮かび上がる。
「『テレポート』!!」
目の前の景色が森の中から街へと変わった。
「ご、ご主人様!? いまなにをなさったのですか!!!?」
リリアが驚くのも無理はない。
これは俺の二つ目のオプションスキル。
『ポータル』だ。
地図上に地点を登録しておくことで、そこへテレポートすることができる。
しかもテレポート回数に制限はなく、何度でも使用できる超便利なオプションスキルだ。
俺の自慢のスキル。
このスキルだけは他の冒険者に誇れる。
強いて言うなら難点は三つの場所にしか設置することはできないことだ。
ポータルの再設置も可能だができるだけ消したくないのが現状だ。
リディット大教会 大広間
魔女の館 入口
王都 入口
どれも俺にとっては大事な場所だが、
三か所のうち上二つは確実に固定。
冒険者生活を送る以上、まず消すことはないだろう。
「『ポータル』というスキルを使ったんだ。登録した場所にテレポートできる便利なスキルだ」
「テレポート!!!!!?? まさかあの超Sレアスキルのテレポートをお持ちなのですか!? すごすぎですうううううううううううううううううううううううううううううううううう!」
「なに大したことはない」
「大したことありますよ!!! 誇らしきご主人様は本当に謙虚なのですね!! 尊敬します!!」
ありがとう。
その言葉が聞きたかった。
誇らしきご主人様はリリアの好感度がMAXまで上がっている状態だ。
残念なご主人様→ご主人様→誇らしきご主人様と三段活用で現在の評価がわかる。
「これから冒険者ギルドに向かう。クエストが完了したら報告しに行く必要があるんだ」
「なるほど。結果報告ですね。リリアもお供します」
リリアと共にギルドへと向かう。
ギルドは相変わらず賑やかだった。
受付嬢にクエスト完了の報告をする。
報酬として銀貨100枚を手に入れた。
俺の防具よりも高い報酬額。
ちょっとせつなくなった。
今度は素材買取所へと向かった。
アイテムボックスからゴブリンの角とワイバーンのつばさを取り出し、受付へと引き渡す。
「ワ、ワイバーンのつばさ!? ええっ!? ウソでしょう!?」
「ワイバーンと言えば第一級魔物認定されているほどのとても手ごわい魔物ですよ!!?」
素材所の皆さんが大騒ぎしている。
「リリアよ。お前の事を褒められているぞ」
「ふふん」
リリアは誇らしげな表情を浮かべる。
とてもかわいい反応だ。
大量の金貨を手に入れた。
ワイバーンの素材はとても高い値段で買い取ってもらえた。
空っぽだった財布が硬貨で潤った。
クエストもワイバーン討伐もリリアのおかげで達成したようなものだ。
がんばった彼女にご褒美を与えなければいけない。
リリアを連れてギルドの食堂へと向かった。
冒険者割引が効くので俺もよく利用している。
テーブルまで案内してもらうと俺は席についた。
しかし、どういうわけかリリアは席に座らない。
理由を問うと意外な言葉を口にした。
「ご主人様……。奴隷の私が同じテーブルにご一緒してもよろしいのでしょうか?」
リリアは不安げな表情を浮かべた。
店内を見回してみる。
他の冒険者が従えている奴隷は、まるで動物のように扱われており、床に座って食事をとっている。
なるほど、あれを見たせいで席に座りづらくなったのか。
しかし、俺はリリアに彼らのような扱いをするつもりは一切ない。
「気にする必要はない。リリアは俺にとって大切な仲間だ」
「わかりました。ご主人様は本当にお優しい方なのですね」
リリアは安心した表情で席につく。
その言葉に対して俺は心の中で首を振った。
いいや。俺はかっこわるいよ。
いくら言葉で仲間と言ったところで奴隷と主人という関係は変わらない。
大切な仲間なのに奴隷の首輪をつけたままというダブルスタンダード。
リリアに捨てられたらと考えると怖くて首輪を外すことができないのだ。
複雑な気持ちを抱いたまま料理を注文した。
メインスキル
○地図
・索敵機能
・罠探知機能
オプションスキル
○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。
○ポータル 登録した三地点へのワープ機能
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