表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

第6話:冒険者ギルド

 スキル欄には『超最強ケモミミ少女』と書かれている。

 初めて目にするスキルだ。

 レアスキルってやつなのか?

 もう一度スキルの効果を確認してみる。



 スキル

 超最強ケモミミ少女

 効果

 :ケモミミ少女のステータス補正999999999999999999999999999999999999999999999999999倍



 なるほど。よくわからん。

 ステータスを補正するってことは良くするってことなのか?


 効果がわからないので発動させるのも怖い。

 スキルの中にはマイナスに作用することもある。

 読心、魅了、破壊などは効果が強すぎて持っているだけで畏怖されるほどだ。

 リリアのスキルはいったん放っておこう。



 冒険者ギルドへと向かう。

 ギルドは王都の中心部にある。

 ギルドは活気があった。

 王都というだけはある。

 賑わい方もほかの街とは比べ物にならない。

 多種多様の依頼が壁に貼られている。


「まずはリリアの登録を済ませよう」

「はい!」


 リリアは受付に向かって小走りで向かう。

 リリアの後姿を眺めながら静かにステータスを開く。


 すでに『認識阻害の加護』をかけているが、勘付かれないように阻害レベルを『強』にする。

 これでリリアはギルドの誰からも顔を覚えられない。

 リリアの人権的にもこの阻害レベルは使いたくなかったが、リスクはできるだけ低くしておきたい。



「すまない。少しだけ我慢してくれ」



 カード発行の手続きが一番白狐族だとバレる可能性が高い。

 それだけはなんとしてでも避けたい。


 受付嬢にリリアの冒険者登録をしたいと申し出る。

 形式的な質問を何回かして、冒険者カードを発行する。

 その後、カードに誤りがないか確認していく。

 この時ばかりは流石の俺も緊張する。


「特に問題ないみたいですね。人族のリリアさん。レベル1。所有者はシルヴィル様。これでお間違いありませんね」

「はい」


 セーフ。

 なんとか隠し通すことができたようだ。

 ステータス画面を開きなおして、リリアの認識阻害レベルを元に戻す。


「ご主人様! これで私もご主人様と同じ冒険者です」

「おめでとう。これからはたくさんの場所を一緒に旅しよう。世界は広い。きっとリリアが大好きになる景色もあるはずだ」

「はい! とても楽しみです!」


 リリアは笑顔を見せた。

 ケモミミを撫でると尻尾をフリフリしている。

 とても愛嬌があってよろしい。


「経験者のシルヴィル様がいらっしゃいますけど、ランクの説明はいたしますか?」

「一応お願いするよ。俺が説明すると何かが抜けるかもしれない」

「かしこまりました。では説明いたします」




 冒険者は四つのランクがあります。

 ランクによって冒険できる範囲が変わってきます。

 我らが故郷、メルゼリア王国を中心と置くならば範囲は円周上に広がっていきます。



 Dランク:メルゼリア王国の領地内

 Cランク:セイレーン王国の領地内

 Bランク:シルドマルク王国の領地内

 Aランク:タージアラ教国の領地内

 Sランク:地図の存在しない領域



 最初はDランクからのスタートになります。

 国内なら自由に動くことが可能です。

 雪山でも、魔物の洞穴でも、どこでも行ってもらって構いません。

 しかし、危険度とランクは全くの別物ですので注意してください。

 たとえDランクでもドラゴン討伐などは危険度がかなり高いでしょう。

 自分の実力に見合った依頼をお受けください。

 ギルドは一切の責任を負いません。


 また、現在Bランクの範囲であるロードス王国との国境が封鎖されているため、Bランクの方であってもCランクまでの範囲でしか活動ができません。



 受付嬢の説明が終わる。

 俺たちはクエストを探しに依頼所に向かう。

 ボードには様々な依頼が貼られている。


 Dランク 王都近辺 ゴブリン退治 10体

 Dランク 王都近辺 薬草採取

 Dランク 王都近辺 リザード退治 5体

 Dランク デスマウンテン ドラゴン討伐

 Cランク セイレーン王国領 ライ麦畑の警備

 Cランク セイレーン王国領 山賊退治 

 Cランク セイレーン王国領 ライル川の清掃

 Bランク シルドマルク王国領 薬草採取 ※現在受注不可



 領地ごとにランクが分けられている。

 Dランクでもドラゴン退治は危険度がかなり高い。

 ランクは活動できる範囲であり、危険度とは無関係だ。

 危険度は自分達で判断しなければならない。


「たくさん依頼がありますね。ご主人様はどのタイプの依頼を受けるつもりなのですか?」

「採取クエストだ。討伐クエストはモンスターを倒すまで終わらないから、今は引き受けないほうがいい」

「なるほどー」


 最初はDランクからのスタートなので簡単な依頼を探す。

 薬草採取のクエストを選んだ。

 手ごろでお金もそこそこ貰えるため、

 入門にはぴったりのクエストだ。


「ふむ、この依頼にしよう」

「薬草採取ですか。私は薬草の見分け方がわかりません」

「案ずるな。薬草の見分け方なら俺がわかる」

「本当ですか!? 流石ですご主人様!」


 リリアの表情が明るくなる。

 少しは信頼を回復できたようだ。


「ところでご主人様のランクはなんですか?」  

「俺か? 俺はSランクだ」

「ご主人様すごすぎですうううううううううううううううううううううう!?!?」

「俺がすごいってわけじゃない」

「いやいや、本当にすごいですよご主人様!」


 リリアは興奮する。

 リリアの賞賛はたしかに気持ちいい。

 しかし、勘違いされたままなのも困る。

 俺は本当に弱いのだと説明しなければならない。


「リリア。よく聞いてほしい。

 俺は特例なんだよ。

 俺のスキルは『地図』。

 歩くだけで地図が生成されるから『昔』は超便利だったんだよ。

 今でこそ戦いがメインになった冒険者だが、昔は国の地図を作る事を目的にした職業だったんだ。

 その名残で地図のスキル持ちは自動的にSランクなんだ。

 だから俺がすごいというわけではない」


 現在、地図のスキル持っている冒険者は俺しかいない。

 だから俺のスキルはオンリーワンだ。

 もっとも、このご時世に『地図』なんて持ってても、何に使うんだよって話なんだが。

 俺も200年前に生まれたらちやほやされたのになぁ。


「そうだったのですか……。残念です……」


 ピンと立っていたリリアのケモミミが感情と共にシワシワと垂れていく。


「だからリリアを買ったんだ」

「!!」

「俺は弱い。そんなのとっくの昔に知っている。いまさら落ち込んだりなんかはしない。

 俺ができることはただ一つ。リリアと共に前に進んで行くことだけだ。

 何度でも繰り返そう。俺にはリリアが必要だ。心の底からお前を必要としている」


 リリアに手を差し伸べた。


「リリア。俺に力を貸してくれるか?」

「はい! もちろんです!」


 リリアは俺の手をとった。

 そっと彼女を胸に引き寄せて抱きしめる。


 問題は山積みだ。

 でも大丈夫、

 リリアとなら乗り越えていけるはずだ。

 そう、俺たちの冒険は始まったばかりなのだから。



 さっきのドワーフの店に戻る。

 そろそろ怒りも冷めている頃だろう。


「またお前か。お前らには武器なんて売らないぞ」

「本当に悪かったと思っている。謝りに来た。すまない、この通りだ。許してくれ」


 ぺこりと頭を下げる。

 リリアのためなら頭だって下げられる。


「……仕方ないな。今回はお前の誠意に免じて許してやるよ」

「ありがとうございます」


 ごめんなさいできることの大切さ。

 ドワーフはそれを教えてくれた。


「お前らがいなくなった後で改めて考えたのだが、パワー360なら長剣よりも大太刀のほうが合ってるんじゃないか?」


 ドワーフのお勧めは大太刀だった。


 ためしにリリアに握らせてみる。

 リリアは『片手』で大太刀を持ち上げて、ぶんぶんと振り回す。


 うーん! これはバーサーコング!

 すごいパワーだ。

 本当にすごい。


「すごく振りやすいです! ご主人様!」

 

 リリアも大太刀をお気に召していた。


「武器の値段はなんだ? 言っておくが防具代までしか出せないぞ」

「本来なら金貨二十枚頂くところだが、特別に銀貨60枚で売ってやるよ」

「いいのか? 銀貨60枚だと大損だぞ」

「お客にあった武器を提供するのが俺のポリシーだ。

 お前は自分の防具を売ってでもその娘に武器を買ってあげようとした。

 そのために謝罪までした。

 お前の事は嫌いだが、

 お前の誠意は認めている。

 だから特別なんだ」


 どうやらツンデレだった。

 ドワーフへの好感度がかなり上がった。


 ありがとうドワーフ。

 もし今度ドワーフ族が困っていたら助けてあげよう。 

メインスキル

○地図


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ