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第5話:ドワーフ

 目が覚めるとリリアが隣で眠っていた。

 安心した表情を浮かべている。


 リリアをじっと見つめる。

 とても綺麗な子だ。

 まるで天使の生まれ変わりのようだ。

 なんとなくリリアの白髪を撫でてみる。

 とても肌触りがよくてサラサラしている。


 今日もご主人様としてリリアに応える努めを果たそう。




 リリア起床後、部屋を出る前にスキルを発動する。

 マップ上を見てリリアの状態を確認する。



 人族 レベル1

 リリア


 人族 レベル30

 シルヴィル



 と、マップ上に表示されている。

 『認識阻害の加護』はちゃんと持続している。


 よし、大丈夫だな。


 俺達は部屋を出る。

 リリアの手を引いてチェックアウトに向かう。


「昨日は本当に失礼しました。二度とこのようなことがないように注意いたします」


 受付嬢は改めて謝罪した。


「いいよいいよ。ところでこの子の種族わかりますか?」

「はい? 人族ではないのですか?」

「本当ですねご主人様! 誰も私が白狐族だということがわかっていません! ご主人様はすごい!」

「ええええええええ!? 白狐族!?」


 受付嬢は驚いて腰を抜かした。

 もちろんすぐに嘘だと伝えた。

 受付嬢は胸をなでおろした。

 驚かせないでくださいよと苦笑いを返した。


「また機会があったらホテルに泊まるよ。とてもいいホテルだった」

「ありがとうございます、お客様。またのご利用をお待ちしております」


 俺たちは爽快な気分で宿屋を後にした。


「昨日の一件もあるのでスカッとしましたね。スカッとなろうです」

「まあな。だが許すことも大事だぞ。人間、徳が大事だ」

「流石ですご主人様。ご主人様は本当に素晴らしい方です」

「俺の事は誇らしきご主人様と呼んでもらってもいいぞ」


 ちょっと調子に乗ってしまった。


「誇らしきご主人様はこれからどこへいくのですか?」

「まずは町に行く。リリアもついてきてくれるな?」

「もちろんです。誇らしきご主人様。リリアはどこまでもお供いたします」


 調子に乗りながら中心街を目指していく。

 でも仕方ない。

 リリアは俺を褒める会会長なんだ。

 どんなことも褒めてくれる。

 調子に乗らないほうが無理ってものだ。


 リリアは人間の世界に興味津々だ。

 昨日は気持ちが沈んでいたので反応を示さなかったが今日は違う。

 気になったものすべてに積極的な反応を見せた。


「ご主人様! あの大きな建物なんですか?」

「あれは時計台だ。王都の時間がわかる便利な建物だ」

「ご主人様! あれはなんですか?」

「あれは伝説の勇者像だ」

「伝説って?」

「ああ! それは勇者と魔王が戦った建国伝説さ」

「ご主人様は何でもご存知なのですね!! ご主人様はまるで知恵の泉です!!」

「やれやれ。またリリアに尊敬されてしまった」

「誇らしきご主人様。もっとリリアに人間界の常識を教えてください。ご主人様のためならばどんなことでも知識を吸収いたします」

「いい心がけだ。リリアは本当に偉いな」

「えへへ。ご主人様に褒めてもらいました。リリアは本当に幸せ者です」



 リリアと城下町を見て回りながら『武器屋』を目指す。

 まずはリリアの武器を買いたい。可能なら防具も揃えたい。


「誇らしきご主人様。これからどこに行かれるのですか?」

「これから武器屋に行く」

「武器屋。ああ、なんとなくイメージがつきます」

「今日からリリアには俺の相方として働いてもらう。俺が冒険者ということは昨日も説明したな」

「はい」

「恥ずかしい話だが俺は冒険者としては三流なんだ。一人でゴブリンを倒すことすらままならない。笑えるだろう?」

「誰しも苦手なことはあります。ご主人様の良い所はリリアも知っています。だから自分を卑下しないでください。私の誇らしきご主人様」

「たしかにリリアの言うとおりだ。気を使わせてすまなかったな」

「全然問題ありません! ご主人様の悩みを聞くのも私の役目です!」

「そこでリリアに頼みがあるんだ。単刀直入に言おう。リリアには俺の代わりに戦ってほしいんだ」

「!!」


 リリアのケモミミと尻尾がピンと張る。


「それは私に魔物と戦えということでしょうか?」

「そういうことになる。もちろん俺もできる限りサポートするつもりだ。索敵でフォローするし、戦いの技術も知っている限り教える。だから頼まれてくれないか?」

「もちろんです!! 私はご主人様のためなら火の中水の中、どんな相手だって戦えます!!」


 リリアは自信を持ってそう答えた。


 こんな少女に戦いを任せてしまう。

 男として少しかっこ悪いなと思ってしまった。

 でも、リリアの言葉は本当に嬉しかった。



「ところでご主人様。いまお金が少ないんですよね? 武器を購入するお金は大丈夫なのですか?」

「案ずるな。資金の工面はすでにしている」

「流石です誇らしきご主人様! ご主人様の慧眼には驚くばかりであります!」


 俺の装備を全部売却してリリアの武器を買うつもりだ。

 俺が持っていてもしょうがない。


 武器屋に到着した。

 店に入るとドワーブが出迎えた。

 ドワーフか。

 頑固な性格だから面倒なんだよな。

 気を悪くさせないように交渉しないとな。



「この子にあった武器を買いたい」


 リリアを指差す。

 ドワーフはリリアをジロジロと見つめる。


「ご主人様怖い。この人、リリアを睨んでいます」

「顔がブサイクなだけだ。怖くないよ。ドワーフは頑固だが良い奴が多いんだ」

「お前は俺を褒めたいのか貶したいのかどっちなんだ」

「心情的には褒めているつもりだ。許してくれ、悪気はないんだ」

「口が上手い奴め。ちょっと待っていろ。すぐに相性のいい武器を持ってくる」


 ドワーフは短剣コーナーへと入っていった。

 数分後、短剣を持ってきた。


 リリアでも片手で扱えそうな短剣だ。

 一見すると良さそうだな。


 ただ、アタッカーに短剣はちょっとなぁ……。

 短剣は魔法使いなどがサブで使うもんだ。

 俺的には長剣が欲しかった。

 長剣なら俺も扱ったことがあるから剣の指導もできる。


「これ以外にオススメはないのか?」

「具体的にどういう武器が欲しいんだ」

「正直に言えば長剣が欲しい」

「長剣だと? こんな人間の小娘が扱える武器だとは思えないぞ」


 ドワーフに鼻で笑われた。


「一応客だからご希望の武器とやらは用意してやるが、ちゃんとステータスを確認したのか? 長剣の最低ステータスはパワー20だぞ。それ以下のパワーだとロクに扱えないぞ」


 言われるまで気づかなかった。

 リリアのステータスを確認してなかった。

 マップを開いてステータスを確認する。



 **********

 リリア

 種族 白狐族(注:シルヴィル以外には人間と見えています)

 レベル1

 ステータス

 HP:100

 パワー:360

 スピード:180

 防御力:0

 **********


 リリアのステータスはかなり高水準であった。

 特にパワーがヤバい。

 予想していたより10倍くらい高かった。

 バーサーコングと同じパワー数値だった。


 参考までに俺のステータスを表示しよう。

 リリアのパワーと比べてみてくれ。



 **********

 シルヴィル

 種族 人間

 レベル30

 ステータス

 HP:50

 パワー:23

 スピード:46

 防御力:60

 **********



 レベル1のリリアよりもステータスがはるかに低い。

 もしかして俺のステータスって低すぎ!?


 知っていたけど、やっぱりショックだ。

 俺って本当にステータスがゴミだ。

 ゴブリンにすら勝てないのも頷ける。


 笑えるほど低い。

 唯一勝っているのは防御力だな。


 しかし、防御力は防具の数値なので売却した瞬間に0に戻ってしまう。


「ご、ご主人様。元気を出してください。リリアはご主人様のステータスを見ても幻滅なんてしません」


 リリアにまで同情される始末。

 悲しいなぁ……。


 だが、リリアのステータスが高いのは朗報だ。

 このパワーとスピードならアタッカーを任せても何ら問題ない。

 ゴブリン程度なら余裕で瞬殺できる。


「そういうわけだ。リリアには頑張ってもらう」

「はい! リリア頑張ります!」

「ふむ、『他人のステータス』まで見ることができるなんて珍しいスキルだな」


 するとドワーフが俺のスキルに食いついた。

 客商売をしているから観察眼もあるのだろう。


 基本的にステータスは自分のものしか見ることができない。

 しかし、俺の場合はパーティ登録さえすれば、かなり詳細なところまで見ることができる。

 俺が持つ地図スキルの追加効果だ。


「情報に特化したスキルだからな。『スキルレベル』も『レベル4』なんだ。これくらいはしてもらわないと困るよ」

「なっ!!!? レベル4だと!?」


 ドワーフは俺のスキルレベルを知るとかなり驚いた。

 あれ、また俺なにか変な事言っちゃったか?


「ありえねえだろ!!!!! スキルのレベルなんて高い奴でもレベル3なんだぞ!!」

「そんなこと言われてもしょうがないじゃないか」

「この男……! まさか相当すごい奴なのか!?」


 なぜか俺の事を過剰評価し始めるドワーフ。


「よくわかりましたね、ドワーフさん。私のご主人様はすごいんですよ」


 リリアが好機とばかりに俺を称賛する。

 流石俺を褒める会会長だ。少しでも褒めるチャンスがあれば、すぐにさすごしゅしてくれる。


「ああ。たしかにすげえわ。レベル5なんて神話の勇者でしか聞いたことねえぞ」

「誇らしきご主人様。御身の栄光に心酔できる私は大変幸福であります」

「これは勇者の到来に違いない! お嬢ちゃん、好きな武器を持っていくがいい! 全部タダにしてやろう!!」

「えっ!? よろしいのですか!?」

「もちろんだ!」

「おいおい、まてまて。お前も商売だろ。本当かどうかも分からない言葉で武器を売るんじゃない」


 俺は慌ててドワーフを止めた。

 たしかに無料で売ってくれるのは嬉しいが、俺にもプライドというものくらいある。

 リリアの武器くらい自分のお金で買いたい。


 それに、リリアは俺のために頑張りたいと言った。

 だったら俺も誠意を果たさなきゃいけない。

 金の問題ではない、気持ちの問題だ。

 

「ですがご主人様。タダで譲ってもらえるのですよ」

「リリアは黙っていろ。おいドワーフ。俺は遊びで買いに来たわけじゃないんだよ。本気でリリアの投資に来たんだよ。ふざけた理由で武器を売ってみろ。たとえ善意だとしても許さんぞ」

「~~~~~~!!!?」


 俺の言葉にドワーフは絶句する。


「ぐっ……。たしかにお前の言うとおりだ。お前が勇者かどうかなんて武器を売るのには何ら関係ない」

「わかればいい」

「じゃあ聞くが、お前はどれだけの資金を用意してきたんだ? 金貨100枚か? それとも金貨1000枚か。どれだけでも構わないが、この俺様を納得させるだけの資金を用意できたんだろうな?」

「ふん、俺をなめるんじゃない。俺の答えはこれだ」


 俺はドワーフの目の前に防具を置く。

 俺がさっきまで着ていた防具だ。


「なんだこのゴミ」

「ゴミじゃないんですけどおおおおおおおおお!!」


 なけなしの防御力60をすべて売り払った防具だぞ。

 ゴミ扱いするな。傷つくだろ!


「じゃあ銀貨60だな」

「ゴミやんけ!」

「いや、まさしくゴミなんだよ。こんなボロボロの防具を渡されても困るぞ」

「頼むよドワーフ。これが俺の全財産なんだよ。資金のありったけなんだよ」

「なれなれしく近づくな。人間風情が」

「イラついている、余裕がない、口調が悪い。もしかして怒りん坊だな」

「本当むかつく奴だなお前! 出ていきやがれ!!」


 ドワーフはブチ切れた。

 ハンマー片手に襲い掛かってきたのでリリアを連れて慌てて店を逃げ出した。

 これだからドワーフは短気で困る。


「少し残念になったご主人様。どうか誇らしくなってください……」


 リリアに本気で怒られてしまった。

 今回は真面目に反省しよう。


 リリアのステータスが高いとわかっただけでも良しとしよう。

 仲間の強さに夢が広がっていく。



 そういえば、

 リリアのスキルはなんだろう。

 まだ一度も確認していなかった。


 これから実戦に入るのならば今のうちに確認しておく方がいいだろう。


「リリアよ。お前のスキルを確認していいか?」


 他人のスキルは許可がなければ見ないというのが俺のルールだ。

 むかし、他人のスキルを勝手に見てしまったせいで女冒険者から軽蔑の目を向けられたことがある。

 あのゴミを見るような冷たい目つきは忘れられない。

 未だにトラウマだ。


「もちろんです。どうぞご自由にご覧になってくださいませ。少し残念になったご主人様」


 ついでにリリアの好感度も早く上げないとな。


 リリアのスキルを確認する。


「は?」



 スキル

 超最強ケモミミ少女

 効果

 :ケモミミ少女のステータス補正999999999999999999999999999999999999999999999999999倍



 意味不明のスキルだった。

 

メインスキル

○地図


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 細かい設定まで丁寧に作ってあって、作者様の作品への愛を感じます。 [気になる点] ちょっと私には難しかったですが、動物が好きなので、読んでいて楽しいです。
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