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第14話:エピローグ

 カフカの幽遠を歩き回っていると地図上にリッチが表示された。

 リッチもこちらに気づいているようでものすごい勢いで近づいてきている。

 しかし、リリア様は少しも焦っている様子もなく、クールに地図を眺めている。


「レベル99なのね。少しは楽しめそうじゃないの」


 リリア様は嬉しそうに微笑み、太刀を握る手にも熱が入る。


「それじゃあご主人様。少しリッチのところまで行ってくるわ」

「何秒くらいで倒せそうだ?」


 雪の民がレベル99の相手に言っていた台詞を思い出し、俺も試しに何秒で倒せるか聞いてみた。

 個人的に9秒以下だったら嬉しいな。


「ご主人様が望むなら何秒でも倒せるわ」


 なんと、どのような時間でも問題ないらしい。

 リリア様らしいな。

 愛の力は時間を超越しているのだろう。


 決戦に出かける前のリリア様を引き留めて、こちらからもう一度ハグをする。

 リリア様も快く受け入れてくれた。

 この時間がずっと長く続けばどれほど幸せだろうか。

 できることならいつまでも彼女を抱きしめたい。


 繋いだ手を放して、またこの場所で再会する事を誓い合う。


「それじゃあ『最後の命令』だ。時間は指定しないから無傷で帰って来い」

「任せなさい。アナタに白狐族の本気を見せてあげるわ」


 踊るような白色の三つ編みはすでに戦闘モードに入っている。

 俺との思い出を編み込んでいる彼女の白髪は、本当に美しく、眩しく、いつまでも俺の瞳に残り続けた。 


 リリア様はリッチを一撃で葬り去って、宣言通り『無傷』で帰ってきた。


 やはり、リリア様は超最強だ。

 リリア様に匹敵する存在はこの世には存在しないのだろう。


 彼女がこれほどまでに強い理由は、実は今でもはっきりとはわかっていない。

 最初は、リリアのスキルが単純に強いからだと思っていた。

 でも最近は、なんとなくだけど、違う理由があるのだと思うようになった。


 リリア様はクールに笑みを浮かべて、グッと親指を立てた。

 俺も自然と笑みを浮かべて柄にもなく、リリア様と同じポーズを取った。


 俺の笑顔に応えたい。

 きっとその想いが、スキルのパワーを引き出して、リリア様を最強にしているんだと思う。



 リッチが所有している魔法精霊カードの数は10枚。

 案の定というべきか、その中にシャインのカードは存在していなかった。


「残念だったわね」

「いいや、これでよかったんだ」


 ヘカテーは過去の偉人だ。

 思い出の場所でこれまでどおり眠らせてあげよう。

 現世の俺たちが過去の英雄に触れられたことが奇跡だったんだ。


「きっとそれがいいわ。

 もし、この先私たちが《シャイン》を偶然見つけた時にまた考えましょう。

 生きている限り、私たちにはたくさんの時間があるわ。

 明日も、明後日も、一年後も、ずっと一緒ですもの」


 ずっと一緒か。たしかにその通りだ。

 最初から答えを出す必要なんてなかった。

 俺が思うに、リリアの幸せに応えることが、俺からできる『死者への追悼』だとわかった。

 リリア様の言葉をしっかりと心に刻んで、俺たちは《カフカの幽遠》をあとにした。




 屋敷に戻った翌日。

 俺はリリアの故郷があるという森へと向かっていた。


 情報をくれたのはリリア自身だった。

 これまで、彼女は自分の故郷について話すことがなかった。


 人間達の手によってすでに滅んでおり、彼女にとっても思い出したくない存在だからだ。

 でも、今回のヘカテーの事をきっかけに、リリアも考えが変わったようで、「一度だけ戻ってみたい」と言っていた。

 過去としっかりと決別してから、俺との未来を歩みたいとの事。

 俺も断る理由がないのでリリアに同行している。



 そして今、俺はリリアと並んで森を歩いている。

 俺にとっては変わり映えのない森であるが、リリアにとってはたくさん思い入れがある森のようで、時折涙ぐんでいた。


「少し引き返すか?」

「いいえ、ご主人様が一緒なら全然辛くありません」


 リリアは鼻水をすすり、引きつった笑顔でそう答える。俺はハンカチを渡してリリアの涙を拭った。

 そういえば、リリアが泣いている姿を見るのは久しぶりだ。最初に出会った頃はよく泣いていたが、最近はあんまり泣かなくなっていた。


 感慨深く、昔のリリアの事を考えていると隣のリリアが声をあげる。


「見てくださいご主人様! ゴブリンさんがいます!」


 俺たちの前方には、ゴブリンが出現している。

 ゴブゴブと威嚇しながら俺たちを睨んでいる。

 ゴブリンか、懐かしいなー。

 確か最初に倒した魔物もゴブリンだったな。


「初めてゴブリンを倒した時の事を思い出しますね」


 俺の思考とそっくりそのままなぞったような一言に俺は思わず笑ってしまい、リリアが怪訝そうな表情で俺を見ていた。

 二人の笑い声が混ざり合って、時間がとてもゆっくり流れているように感じた。


 リリアはゴブリンと戦うために自然と太刀を手に取る。

 この時、俺はリリアになにも指示をしていない。


 リリアはもう自分の意思で、変身するか否かを、決める事ができるようになっているからだ。

 彼女が成長するにつれて、俺のサポートは必要なくなっていくだろう。

 

 でも、俺はそれを悲しいとは思わない。

 俺にとって、リリアが幸せになってくれることが一番の幸せだからだ。


 リリアが望むなら俺は冒険者を引退してもいい。

 元々、俺は冒険者向きのスキルではない。

 どちらかといえば、新人を導くための教官向きのスキルだ。

 ギルド職員として勤めるなどして、新人を指導するのが一番適しているだろう。

 曲がりなりにも俺はS級冒険者。それを行う事は充分可能だ。

 現にそのような誘いも何度か来ていた。


 それをやらなかったのは、俺自身が冒険者にこだわっていたからだ。

 孤児院の院長のようなかっこいい冒険者になりたかったから。


 俺のワガママが、別の道の存在を、受け入れようとしていなかっただけなのだ。

 でも、今は違う。

 リリアのためなら、別の道を歩むことも、今の俺なら笑顔で承諾できる。


 冒険者を続けるというプライドよりも、大切なモノをとっくに見つけたからだ。


 でも、リリア自身はそれを望まないと思う。

 彼女自身も、俺が戦えるかどうかよりも、俺と一緒にいることを強く望んでいるからだ。

 これは依存ではなく、一人の冒険者として俺を認めている証。

 リリアは俺のスキルと知識を世界中の誰よりも信じている。


 だから、俺自身もリリアの想いに応えたい。


 数えきれない仲間の中でリリアと出会えたことは奇跡であり、スキルの女神に、リリアとの出会いに感謝している。

 この地図スキルだからこそ見つけられた本当の仲間。

 


 リリアはスキル欄を開き、ボタンを押す。


「変身!」


 リリアの全身を包み込むまばゆい光。


 そして、最強の白狐族が姿を現した。




真の仲間がほしいのでケモミミ奴隷少女を買ったら超最強だった件

これにて完結となります。

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― 新着の感想 ―
なかなか楽しいお話でした。 非ハーレムな、1対1ペアのイチャラブコメディは大好物なのでこういう話はもっと読みたいです。 邪神と同じ種族であまりに謎すぎるスキル持ちのリリアの謎が特に掘り起こされなかった…
[良い点] ロリ多め。今作傑作。 [一言] 読みやすく、面白かったです。
[良い点] 一気に読みました。後日談が読みたいですね。 [気になる点] 客演はありますか?
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