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第7話:帰宅

 ポータルを使って屋敷に帰還する。


「三日しか経っていないはずなのに久しぶりに帰ってきたみたいですね」

「リリアも疲れただろう。お風呂に入るといい」

「ご主人様はどうなさるのですか?」

「俺はヘカテーを寝室に寝かせてから風呂に入るよ。先にシャワー浴びて来いよ」

「わかりました~」


 リリアは大浴場へと歩いて行った。

 俺はヘカテーを背負って寝室を目指す。

 屋敷はたくさんの空き部屋がある。

 寝室も俺たち三人では使いきれないくらいだ。

 ヘカテーのための部屋は、三階の奥から四番目の寝室にするつもりだ。

 理由は特にない。

 奥から俺、リリア、雪の民が使用済みだからだ。


「おかえりでごじゃる~」


 二階へと続く階段を上っていると、二階から雪の民がやってきた。


「ただいまー。俺がいない間に何か変わったことはあったか?」

「泥棒さんがやってきたでごじゃるけど、撃退したでごじゃるよ」

「は? 泥棒さん? どんな奴だ?」

「『不審な男』でごじゃるよ。魔術書を盗もうとしていたでごじゃる」

「そいつはどうなったんだ?」

「今回は捕まえて地下に閉じ込めておいたでごじゃるよ。従者としてあるじに知らせる義務があるでごじゃるからね」


 なんて有能なんだ。


「偉いぞ雪の民。あとでご褒美をやろう」

「サンキューでごじゃるよ」


 彼女のためにお土産をたくさん買ってきている。

 きっと喜んでくれるに違いない。


「ところで主の後ろにいる女性は誰でごじゃるか?」


 雪の民は俺の背負っているヘカテーを凝視する。


「ヘカテーさんだ」

「偉人さんと同じ名前でごじゃるね~」

「というか本人だ。神級魔術師ヘカテーとは何を隠そう彼女の事だ」

「ええ!? 本当でごじゃるか!?」


 雪の民はびっくり仰天した。

 驚くのも無理はない。

 魔法使いなら誰でも知っているようなレジェンドが、俺に背負われているんだからな。


「ただ、色々と問題があってな。彼女はいま魔法をかけられているんだ」

「ふむ、どんな魔法でごじゃるか?」

「スリープという魔法だ。そのせいで1000年近く眠っている。雪の民はどうすればいいかわかるか?」

「シャインの魔法を使うしかないでごじゃるよ」

「やっぱりそれしかないか」


 俺はため息を吐いた。

 シャインは絶滅している。

 発見するのは困難を極めるはずだ。


「ところで雪の民って何歳だ?」

「あ、あるじ!? 流石にそれは禁句ですよ!! 拙者も一応結婚前の乙女なんですよ!!」


 雪の民からごじゃる口調が抜けている。

 これはガチで驚いている証だ。


「言い方が悪かった。この本を読めるか聞きたかったんだ。結構昔の本でな。さっぱりわからなかった」


 ヘカテーをいったん床に下ろして、雪の民に骸骨が持っていた本を渡す。

 雪の民は難しい表情を浮かべた。


「申し訳ございません。一度も見たことがない文字でごじゃる」

「雪の民でも読めないなら仕方ないな」

「メルディ殿に聞いてみればいいでごじゃるよ。彼女は宮廷魔術師でごじゃるから、古代の文字も知っているかもしれないでごじゃる」


 なるほどー。

 メルディに聞いてみるのは盲点だった。

 彼女はメルゼリア王家と密接に繋がっている。

 彼女を経由すれば、俺たちが探している資料も見つかるかもしれない。


 やらなければいけない事はたくさんあるが、目の前の問題から一つずつ解決していこう。






 普通の冒険者なら王国の図書館に直行するかもしれないが、俺にはメルディという王国のお偉いさんとの繋がりがある。

 彼女の力を活用すればワンランク上の情報を手に入れることも可能だ。


 遠くにいる相手と通話ができる『連絡の加護』を使って、メルディに連絡を入れる。


 あの時、メルディとパーティ登録してて良かった。

 心の底からそう思った。


「もしもし、メルディか? 俺だよオレオレ。シルヴィルだけどいま大丈夫?」

『こんな夜遅い時間に何の用だ?』


 めちゃくちゃ機嫌の悪い声が返ってきた。

 アポを取らなくてもいい反面、相手に気を使う必要が出てくる。


 現在の時刻は21:00

 普通なら就寝している時間だ。

 電話した時間が悪かった。


「いま暇か?」

『ぐっすり眠っていたところだ。お前のせいでたたき起こされた』

「それは悪いことしたな。お休みのところ悪いし、じゃあ一旦電話を切るよ」

『待て。こんな時間にわざわざ電話してきたのだ。なにか理由があるのだろう?』

「シャインについて聞きたいことがあったんだ」

『……シャインか。スリープをくらった奴でもいるのか?』

「おお、よくわかったな。流石メルディだ」

『急ぎの用なら今からそちらに向かおう。現在地点はどこだ?』


 メルディの優しさに涙が出てきそうだ。

 本当は今日中に話をしておきたかったが、なんだか申し訳なくなってきた。

 今夜はしっかり休んでもらおう。


「王都の屋敷だが、別に今じゃなくても構わない。明日の朝でもいいよ。話すと長くなるし、お互いの意識がはっきりしている状態で話をしたい」

『わかった。じゃあ明日の7:00にこちらから連絡する』

「随分と早いな。いつもそんな時間に起きているのか?」

『昔の習慣だ。とにかく、用がないならもう切るぞ』

「わかった。また明日な。おやすみ、メルディ」

『ああ、また明日』


 おやすみの挨拶を交わして、メルディとの通話を切った。

 よしっ、メルディとの話し合いの場も設けることができたし、一日目の終わりとしては悪くないな。


「あとは風呂に入って寝るだけだな」

あるじ。一つ忘れていることがあるでごじゃるよ」


 今まで黙っていた雪の民が不意にそう言った。


「忘れていること?」

「はい、ご自身の胸に手をおいて考えてください」


 なんか残っていたっけ?

 ヘカテーの件はシャインが手元にないから保留だし……。


 他に思い当たる節がない。


「うーん。さっぱりわからない。リリアとのスキンシップか?」

「拙者が捕まえた『怪しい男』でごじゃるよ。寝る前にしっかり確認するでごじゃる。スキンシップも大事でごじゃるが、主としての務めを果たして欲しいでごじゃる」



 ガチトーンで叱られる俺。


 シクシク、怒られてしまった。

 ごじゃる口調こそギャグっぽいが、性格はかなり真面目なんだよな。

 多分、この屋敷の住人の中で一番真面目なの雪の民だわ。


「忘れていて悪かったよ。どんな奴だ?」

「うーん……。説明に困るでごじゃるな。とにかく、見て貰ったらわかるでごじゃる。拙者の言葉だけでは主が勘違いするかもしれないでごじゃる」


 怪しい男の正体を確かめるため、雪の民についていく。

メインスキル

○地図

 ・索敵機能

 ・罠探知機能


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。

○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。

○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能

○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能

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