第4話:狐剣
翌朝、俺とリリアはヘカテーの財宝を探してイテリスの森へと入った。
本当にあるのかどうかは知らんが、暇つぶしにはちょうどいいだろう。
リリアも久しぶりに戦闘できるとわかってテンション高めだ。
地図を開いて索敵を行う。
コボルト レベル6
リザードマン レベル12
トレント レベル8
半径三キロ内に三体の魔物が表示された。
リザードマンは危険なのでエンカウントしないようにしていきたい。
森を進んでいるとコボルトと出会った。
コボルト レベル6
避けようと思えば避ける事もできたが戦う事を選んだ。
たまにはリリアにかっこいい所を見せたいからね。
一番柔らかいから俺のパワーでもダメージを与えることができる。
コボルトがこちらに向かってくる。
奴は俊敏なので油断すると痛い目をみる。
剣を抜いて彼の動きを観察する。
左、右、真ん中の順番で攻撃を仕掛けてくると予想した。
案の定その通りの動きを見せた。
最初の二発を素早く避けて、最後の一撃を剣で受け流す。
バランスを崩した所を、カウンターの要領で胴体を真っ二つにする。
コボルトは断末魔を上げて倒れた。
これが『気配を感じる』というテクニックだ。
索敵以外にも敵の動きをある程度『予知』したりもできる。
熟練の冒険者なら誰でもできる簡単なことだ。
魔族ではないので死体はその場に残る。
血の匂いを嗅ぎつけて他の魔物がくるため足早に立ち去る。
「流石ですご主人様! 見事なカウンターです!」
後ろから走ってきたリリアが俺の隣についた。
「来るとわかっている攻撃なんだ。攻撃を合わせる事くらい余裕だ」
「そんなことありません! あそこまで鮮やかなカウンター攻撃、ご主人様にしか真似できませんよ!」
リリアは俺を褒めるのが上手いなぁ。
俺を褒める会会長というだけはある。
なんでも褒めてくれる。
「ご主人様の『狐剣』は、いつ見ても惚れ惚れします」
「リリアが喜んでくれてうれしいよ」
「あの受け流しは達人級です」
「受け流せないと押し込まれるからな。結構練習したよ」
「コツとかあるんですか?」
「受け流したい方向に対して刃を傾けることかな」
「なるほどー! 私も参考にしたいと思います」
「うむ、受け流しを覚えると戦術が広がるぞ」
リリアはやる気満々だ。
今度の敵はリリアに戦わせてあげる。
敵がリザードマンだったからじゃないぞ。
リリアは俺のアドバイス通り、受け流しを一発で成功させた。
そのままリザードマンを葬った。
「リリアはセンスあるよ。今のはすごく良かった」
「本当ですか!?」
「ああ、もちろんだ。その調子で剣術に励むといい」
「やったー!!」
リリアは気づいていないかもしれないが、受け流しを教えたのはこれで四回目だ。
彼女は物覚えがあまり良くない。
「ご主人様、ご主人様!」
「うん? なんだ?」
「ご主人様はなぜ私に『虎剣』ではなく『狐剣』を教えてくださったのですか?」
「虎剣は対人用の剣だ。魔物を倒すという一点に着目したら狐剣の右に出るものはない」
「ちゃんと理由があったんですね。てっきり私が白狐族だから狐剣を選んだと思っていました」
「まさか。そんなアホな理由で剣術を教えたりはしない、たまたま種族が同じだっただけだ」
狐剣。
かつては『世界四大流派』の一つとして数えられていたほどの強力な剣術。
狐剣の特徴は『魔物を討伐する』のための剣だ。
確実に来るとわかっている攻撃に対してはめっぽう強い。
受け流しや高速の踏み込みなど、魔物を倒す上での技がかなり多い。
鷹剣ほどではないが機動力もある。
その反面、対人戦は得意としていない。
魔物戦ではあまり気にならないが、全体的に大振りなので隙が多い。
対人戦ではほとんど負ける。
その欠点が災いして、人間同士の戦争が激化してから徐々に使い手が減っていった。
その結果、今ではマイナー流派と呼ばれるようになった。
戦争は終わっても使い手がいないので、絶対数も少ないという訳だ。
俺のカウンター技も、虎剣としてのカウンター技ではなく、狐剣のカウンターだ。
虎剣ならカウンターから人体の急所を狙うような怒涛の連続攻撃に技が繋がる。
狐剣は思いっきりぶった切っておしまい。
その辺が大きく違う。
名のある剣士達と戦って世界最強を目指すわけじゃない。
俺たちの戦う相手は魔物だ。
だから三大流派は必要ない。
そう割り切って狐剣を伝授した。
仮に剣士と戦う場面があったとしても、リリア様でワンパンすれば終わるからな。
リリア様ほどの強さがあれば流派なんて関係ない。
あの速度と威力はわかっていても絶対防げないよ。
リリア様 is 正義。
二時間ほど森を進むと遺跡が見えた。
森の中にひっそりと存在している。
随分と昔にできたもので、あちこちが倒壊していた。
壁には植物の蔓も伸びている。
遺跡はかなり入り組んでおり、魔物もたくさんいた。
長い年月を経て魔物が住みつき、ダンジョン化しているようだ。
リリアは遺跡に興奮している。
彼女はかつて森の中で暮らしていたので人がいなくなった廃墟が大好きなのだ。
少々危険を伴うが、俺たちは遺跡の中に入る事を決めた。
理由は簡単だ。
???
魔石族 レベル??
なんか変なのがいるからだ。
メインスキル
○地図
・索敵機能
・罠探知機能
オプションスキル
○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。
○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。
○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能
○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能




