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第3話:イテリスの街

 馬車の中で一泊して、翌日の早朝にイテリスに到着した。

 王都と比べると小さいが飲食店や娯楽施設は充実している。

 緑も多く、教会の鐘の音も聞こえてくる。

 自然とのバランスもちょうどいい。

 スローライフを送るならこんな町も悪くない。


 イテリスにやってきたのは今回で二度目だ。

 一回目はティオを仲間にした時だ。

 パーティでやってきた時と、リリアとやってきた時では感じ方も大きく違う。

 あの時はティオに気を使って息苦しかった。


「なんだか安心する町ですね」

「ここはヘカテーの聖地と言われている。メルゼリア王国では珍しく、魔法使いの数も多い」

「へー、そうなんですか。ご主人様は何でもご存じなのですね」

「そうなんだよ。俺は何でもご存じの有能ご主人様なんだよ」

「調子に乗るのはやめてくださいね」

「はい、ごめんなさい」


 1000年前。

 まだ建国前の話だ。

 このイテリスで神級魔術師のヘカテーが生まれた。

 彼女は魔法の常識をいくつも塗り替えて、魔法の発展に大きく貢献した。

 この町をとても愛していたようで、人生の大部分をこのイテリスで暮らしていた。

 そういう経緯もあるので、イテリスは魔法使いの聖地とされている。

 魔法使い姿の人も多い。


「今日はどうなさいますか?」

「今日は一日中観光する予定だ。別に急いでいるわけでもないし、秘宝なんて後回しでもいい。まずはリリアとイチャイチャしたい」

「ご主人様って本当に自分に正直ですね」

「今日は温泉旅館に泊まるぞ」

「本当ですか!?」

「うむ。贅沢は体に毒と言うが、観光で贅沢をしないのも体に毒だ。イテリスには立派な温泉旅館があるんだ」

「いいですね!! 私もそれに賛成です!!」


 リリアも嬉しそうだ。

 鼻歌交じりで歩いているところが最高にかわいい。

 秘宝探しは明日に回して、今日のんびり観光することが決まった。


 まずは忘れないうちに温泉旅館へ。

 しっかり予約を済ませてから観光開始だ。

 リリアと手を繋いで街を歩いて回る。


 大通りに面した魔法道具屋に入ってみる。

 選んだ理由は特にない。

 たまたま目に入ったからだ。


 店の中は混沌としていた。

 魔術書、ローブ、魔法薬、魔法道具、魔法に関連するものなら何でも置いてある。

 流石魔法使いの聖地。

 セイレーン王国の近くということもあり、商品の質が段違いだ。

 王都の魔法店よりもレベルが高い。


 テーブルには金のランプや縦長の笛、その隣には羽根のついた赤いブーツ。

 お値段は均一金貨一枚。

 ランプの魔人や魔笛みたいな効果が備わっているのかな。


 リリアが聖杯を手に取る。


「それは『豊穣の聖杯』だな」

「知っているんですか?」

「魔力を込めれば水が湧いてくる」

「へー、私に魔力がないのが残念です」

「雪の民に買ってあげると喜ぶと思う」

「そうですね。雪の民さんのために買っていきましょうか」


 リリアは聖杯をカゴに入れた。

 お留守番をしている雪の民のためにたくさんの魔法グッズを買った。

 観光だから奮発した。

 良い買い物ができた。


「商品を見ていて感じたのですが、精霊カードがなくても色々な事ができるんですね。てっきり精霊カードがなければ何もできないと思っていました」

「魔力はスキルよりも応用性が高い。

 魔法を使える事よりも、『魔力を感じる』という行為がなにより強いんだ。

 魔法を用いずとも様々な所でアドバンテージを作ることができる」


 軽視されがちだが、魔力は魔法を使う場面以外でも役に立つ。

 魔法道具を使用できるメリット、魔力を探って索敵、魔力による肉体強化。

 数えればきりがない。

 神級魔術師のヘカテーはこういう言葉を残している。


「魔力の基本は創意工夫。

 考え方次第でどんな不可能も可能にします」


 精霊カードを用いずとも魔法を使える方法すらあったほどだ。


 現在、ヘカテーの魔法技術はほとんど残っていない。

 戦争や内戦のせいで大半が焼失してしまったからだ。



 買い物を済んだので街を散策する。

 特に行き先も決まってない。

 リリアは屋台で買ったホットドックを食べながら歩いている。

 右手にはオレンジジュースを、左手にはホットドック。


 これがリリアの観光スタイルだ。

 しばらく街を見て回るとイテリスの教会を発見する。

 教会の頂上には大きな鐘がある。


 カランカランと鐘の音が聞こえてきた。


 一時間ごとに教会の鐘を鳴らして時間を知らせる。

 三回鳴ったから三時だ。

 魔法使いは近代的な文化を使いたがらない傾向がある。

 イテリスに時計台がないのもそれが理由だ。


「ご主人様。あの教会では何の女神様を信仰していますか?」

「クレッセントだ。この町はクレッセントの加護が強いから魔法使いが多いんだ」


 メルゼリア王国はステラの加護が強いが、すべての場所がそうであるとは限らない。

 女神が決めた土地と人が決めた土地は微妙にズレがある。


「あの紋章もクレッセント様のものなんですか?」

「そうだ。月の紋章があったらクレッセントだと思っていい」

「ステラ様はどんな紋章なんですか?」

「ステラは星の紋章だ」

「へー」

「宗教は紋章を好む性質がある。今のうちに覚えておくといい。メルゼリア王国は宗教に寛容だが、タージアラ教国みたいな宗教国は女神を間違えただけで殺されることもある」

「なんだか怖いですね」

「宗教なんてそんなもんだよ」


 ステラは星の紋章。

 クレッセントは月の紋章。

 ラフローグは太陽の紋章。


 ステラとクレッセントとラフローグは世間では『三女神』と呼ばれている。

 とても知名度が高く、各地で見る機会も多い。


 たくさん歩いて疲れてしまった。

 ちょっと早いが、俺たちは温泉旅館に戻ることにした。

メインスキル

○地図

 ・索敵機能

 ・罠探知機能


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。

○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。

○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能

○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能

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