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第2話:リディット大教会

 イテリスは王都から馬車を使って一か月ほどかかる。

 結構距離があるのでポータルを使って移動することにした。


 リディット大教会にカーソルを合わせる。

 このポータルを使えば馬車を使って半日足らずで到着する。

 あとはスキル発動のボタンを押せばテレポートが発動するわけだが、俺の指はそこで止まっていた。


「ご主人様? どうかなさいましたか?」

「なぜこの場所にポータルを置いたのか、改めて考えてみたんだ」


 屋敷の玄関前、リディット大教会、魔女の館。


 現在この三か所にポータルを設置している。

 すべて重要度が高い場所だ。


 リディット大教会の役割は治療だ。

 ここには『七大神官』の一人に数えられる『聖女』がいる。

 彼女と俺は顔なじみだ。

 彼女に頼めば無料で治療してもらう事ができる。

 リリアを治療したスーパーポーションも彼女から貰ったものだ。

 スーパーポーションも残りあとわずか。

 今回のポータルで調達しようと思っている。


 本来ならもっと早く調達しておくべきなのだが、『ティオ』が死んだ手前、教会に顔を出しづらかった。

 というのも、元パーティの一人であったティオは、リディット大教会のプリーストだ。

 わずか10代でハイプリーストと同等の力を秘めていたほどの優秀な人材だ。

 故意ではないにせよ、死なせてしまったわけだ。


「ご主人様のポータルには想いが込められています。そこに間違いなんてありませんよ」

「リリアにはいつも勇気づけられるな」

「ご主人様を導くのも私の努めですから」


 リリアの言葉に後押しされて俺はボタンを押した。

 二人を囲むように光の輪が浮かび上がる。


「『テレポート』!!」


 目を開くと景色が教会へと変わっていた。

 教会内部の大広間にいる。

 椅子がたくさん並んでおり、奥に女神像が見える。

 部屋全体から厳粛さを感じる。


 隣にはリリアもいる。

 テレポートは成功したようだ。


 さてと、まずは聖女を探さないとな。

 結構大きな教会だから見つけるのも苦労しそうだ。


「シルヴィル様」


 振り返ると、修道服を着ている少女がいた。

 露出のほとんどない白を基調とした修道服に身を包み、ベール状のウィンプルをかぶっている。

 目的の人物だった。

 どうやら探す手間が省けたようだ。

 彼女こそリディット大教会のトップ。

 七大神官の一人であり、『聖女』の二つ名を持つコーネリアだ。


「コーネリアか。こうして顔を合わせるのは一年ぶりか」

「最後にお会いしたのはグリフォン討伐の時でしょう」

「時が経つのは早いな」

「シルヴィル様もお変わりなくて安心しました」

「それはこっちの台詞だ。コーネリアも全く変わってないな」

「聖女ですから、アルテナ様の加護も人一倍強いのですよ」


 コーネリアは微笑む。

 彼女の美貌で笑うと人を魅了するものとなる。


「それは羨ましいな」


 素直な感想だ。

 詳しい年齢は不明だが、俺よりはるかに年上であることは間違いない。

 その見た目は10代前半にも見える。

 彼女は女神アルテナの強い加護を受けているため、まったく歳を取らない。


「今日こちらへいらっしゃったのはどのようなご用件でしょうか?」

「ティオの件で謝罪に来た」

「彼女が死亡したことですね」


 やっぱり知っていたか。

 王都から離れているとはいえ、討伐隊が出てくるほどの騒ぎになった。

 知らないわけはないだろう。


「すまない。気持ちの整理がつくまで時間がかかった」

「シルヴィル様、頭を上げてください。私は別に怒ってなどいませんよ」

「だが俺はアンタとの約束を守れなかった」

「私はティオが旅立つ前に言い聞かせました。

 シルヴィル様がいなくなれば、このパーティは瓦解する。

 それを無視してシルヴィル様を追放してしまったのです。

 ティオが死亡したのは、彼女自身が招いた結末です。

 シルヴィル様が気に悩む必要など一つもないのですよ」


 身内が死んだのだ。

 なにか言いたいことの一つや二つあるだろう。

 複雑な感情をグッとこらえて、聖女として俺を許してくれた。


 それでも、けじめは存在する。

 俺は謝るためにここに来た。

 だから彼女に対してしっかりと謝罪をした。


 コーネリアが呆れしてしまうほどだ。

 顔を上げるとコーネリアは苦笑していた。


「シルヴィル様のお気持ち、しっかりと受け取りました」

「ああ、気を遣わせて悪かったな」

「いえいえ。それが聖女の役目ですから。

 贖罪の言葉を聞いてあげるのも私の役目です。

 女神様はきっとアナタを許すでしょう」

「そう言ってもらえると気持ちが楽になるよ」

「シルヴィル様はいつも仰っておりました。

 終わってしまった事にこだわるよりも、これからのことを考える方が大事だと。

 そういう神経の図太いところ、私は好きですよ」


 メルディの時と同じく、彼女も俺の謝罪を望んでいないようだ。

 彼女が望んでいるのは俺が立ち直って前に進むことだけだ。


「ティオのお話はそろそろ終わりにしましょうか」

「そうだな」

「そちらの可愛らしいお嬢さんは?」

「ご主人様の従者のリリアです」

「奴隷の首輪をつけているが、奴隷ではなく普通の子として接してくれると嬉しい」

「あ、わかりました。

 こんにちはリリアさん。

 私はこの大教会の聖女をしているコーネリアです。

 ちなみにシルヴィル様の妹でもありますよ」


 お前はいったい何を言っているんだ。


「えっ!? そ、そうなんですか!?」

「コーネリアの冗談だよ。お前も相変わらずだな」

「シルヴィル様の妹になるのは私の夢ですから。私もアルセーナさんみたいにシルヴィル様に甘えたいです」

「なるほど妹プレイですか。大変変わったご趣味がありますね」

「お前も食いつくな。というかコーネリアよ、お前は俺より年上だろ」

「心はいつでも14歳なのですよ。外見もあれから変わっていません。シルヴィル様、妹が欲しくなったらいつでも私に言ってくださいね」


 どういうわけか、コーネリアは俺の妹になりたがっている。

 このやり取りもテンプレっぽくなっており、俺と顔を合わせるたびに妹宣言をする。

 コーネリアにアルセーナを紹介するんじゃなかったな。


「アルセーナさんもシルヴィル様とお会いしたがっておりましたので、機会があればセイレーン王国まで出向いてあげてください」

「ふうん、ここからなら結構近いし、一応考えておくよ」

「はい、ぜひ遊びに行ってあげてください。きっと喜びますよ」


 その後、コーネリアに案内されて教会内を歩いていく。

 リリアを教会に連れて行ったことはなかったので、彼女は初めて見る景色に目を輝かせている。

 こんなに喜んでくれるとは思っていなかった。

 つれて来て正解だったな。


「もしかしてなんですが、コーネリアさんってすごく偉い人なんですか?」

「ふむ、リリアさん。どうしてそう思ったのですか?」

「すれ違った人がみんなコーネリアさんに頭を下げています」

「ははーん、なるほどー」


 流石にリリアも気づいたか。

 俺はリリアに説明する。


「コーネリアは王家を守護している『七大神官』の一人だ。ここの教会では一番位が高い人だ」

「えっ!? ビックボスってことじゃないですか! ご、ごめんなさい! 私ったらなんて失礼な事を!!」

「大丈夫ですよ。私としては友達感覚で呼んでもらったほうが嬉しいです。敬称で呼ばれると、なんとなく距離を置かれているような寂しい気分になりますので」

「は、はい。じゃあこれからもコーネリアさんと呼ばせてもらいます」


 コーネリアはニコリと微笑んだ。

メインスキル

○地図

 ・索敵機能

 ・罠探知機能


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。

○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。

○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能

○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能

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