第1話:新しい目標
現在、俺は屋敷の書斎で本を読んでいる。
前の持ち主が魔女なので魔術書も多い。
魔力がないとはいえ、知識として仕入れておくことは無駄にはならない。
現に俺は今、エンチャントについて書かれている本を読んでいる。
エンチャントというのは『属性付加』の事だ。
武器に属性を付加することで強力な攻撃を可能とする魔法技術の一つだ。
たとえパワーが低くとも敵に大ダメージを与えることができる。
今のパワーでは下級程度なら倒せるが中級になると効かなくなってくる。
普通の冒険者ならともかく、リリアとやるクエストでは強い敵も多いので指を咥えて見ているだけという場面も多い。
自分の手札を増やすという意味でも、エディアの死を乗り越えるという意味でも、エンチャントを覚えたいと思っている。
エンチャントは、属性を付加してくれる人さえいれば魔力がなくとも使用可能だ。
魔力0でもエンチャントを使えるようになった事例が、過去に何件かあることがわかった。
これは嬉しい事実だ。
現在、身近な知り合いの中で雪の民とメルディがいる。
二人に手伝ってもらってエンチャントの練習を毎日している。
もっとも、成功した試しは一度もない。
理論上可能と言えど、難しい事には変わりない。
スキルを貰っていると魔力の加護を貰えなくなる。
魔力を感じることができなくなる。
もちろん、まったく感じないわけではない。
風の流れや音である程度判断することは可能だ。
だが、エンチャントを成功させようと思えばそれだけでは足りない。
魔力が見える、感じる、流れを操る。
この三つを高水準で満たすことができて初めて成功するのだ。
扉が開く音が聞こえた。
そこにはリリアがいた。
「ご主人様」
リリアが寄ってきた。
「どうした?」
「耳かきしてほしいです。耳がむずむずします」
リリアは自身のケモミミをピクピクと震わせていた。
最後に耳かきしたのは二週間前だったな。
「いいぞ。ほらおいで」
書斎のソファに座り、リリアを膝の上にゴロンさせた。
ケモミミなので仰向けの体勢で耳かきだ。
リリアの目を布タオルで覆う。
アイテムボックスから耳かき棒を取り出してリリアの耳を掃除する。
スキンシップが終わり、ソファーの上でリリアとお喋りをする。
明日の予定を伝えておく。
「明日は『イテリス』の近くにあるフィッツの森へ行こうと思う」
「ええ……。野外プレイですか?」
「キミはいったい何を言っているというのだね」
いくら俺が変態とはいえ、そこまでの上級プレイはしない。
「じゃあなぜ森にいくのですか? 明日は休日ではありませんか」
「書斎にあった魔術書に気になる一文を見つけたんだ。イテリスという街の近くに森があり、そこに神級魔術師の『ヘカテー』が残した『秘宝』が隠されていると書かれていたんだ」
「へえ、なんだか面白そうですね」
「イテリスは『リディット大教会』のポータルを使えば簡単に行ける街だ。リリアにもついてきてもらいたい」
「わかりました!」
リリアは楽しそうに手を挙げた。
よし、決まりだな。
そういうわけで、俺とリリアはイテリスを目指すことになった。
ヘカテーの秘宝か。
いったいどんなものなんだろう。
メインスキル
○地図
・索敵機能
・罠探知機能
オプションスキル
○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。
○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。
○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能
○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能




