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第11話:ラフローグの大迷宮 後編

 俺たちは歩き出した。

 二時間ほど歩くと、雪の民のお腹が鳴った。


「流石に何も食べないのはしんどいでごじゃるよ。主やメルディ殿と違って拙者は動き回ってるからカロリー消費が激しいでごじゃる」

「ふうん、じゃあ食事くらいはするか。だが長くは休憩せんぞ」

「メルディ殿は素直でないでごじゃるなぁ。そういうのをツンデレって奴でごじゃるよ」

「黙れ、アイスクリーム」

「だからアイスクリームじゃないでごじゃる! 温厚な拙者もそろそろ怒るでごじゃるよ!!」


 アイスクリームの憤怒はともかく、メルディも休憩を取ることに賛成したので、俺たちはその場で一時間ほど休憩をとることにした。


 地図を見る限り、周りに敵はいない。


「まずは料理からだな」


 食材と調理器具はすべてアイテムボックスの中に入っている。

 アイテムボックスを見せると、二人ともかなり驚いた。

 初見だとみんな驚くから大好き。

 やっぱりこの反応イイね。


あるじ。ここは拙者が料理するでごじゃるよ」


 雪の民が料理係を申し出てきた。

 彼女の腕前なら俺も知っている。

 彼女に任せようかなと思ったその時だ。


「いや、今回はシルヴィルがやれ」


 メルディが料理係に俺を指名した。


「どうしてでごじゃるか?」

「お前は働いているが、シルヴィルは歩いているだけだ」


 失礼な!

 一応罠チェックとかしてるんですが!

 まあ、他の二人よりは負担が少ないよね。


「でも拙者はあるじの影でごじゃるよ。あるじの身の回りのお世話をするのも役目でごじゃる」

「今回の場合は不必要だ。

 それ以上のサポートは、パーティの『役割』を奪うことに繋がる。

 我々は出会って一日も経っていない。

 だが、それでも上手くいっている。

 お互いの役割を理解しているからだ。

 もし、お前がこいつから役割を奪えば、こいつは役に立たなくなる」


 メルディは、かなり役割という言葉を気にしていた。

 そういえば、エディアもかなり気にしていたな。

 なんでこんなに気にしてたんだろう。


「うむむ……メルディ殿がそう言うのならそうするでごじゃる」

「俺は別に気にしてないぞ。仲間がお仕事しているの見るの大好きだし!」

「黙れ、さっさと飯をよこせ雑用係」


 ひどい、雑用係じゃなくて斥候せっこうなのに。


 俺の料理中、メルディが杖で地面に線を描いている。


「なにをしているでごじゃるか?」

「結界の魔法を張るんだ」

「け、結界!? あの高位魔法の結界でごじゃるか!?」

「うむ。その結界だ」


 メルディがドヤ顔を浮かべる。

 その後、魔法で結界を張った。

 エリアシールドという魔法らしい。

 これも高位魔法の一つだ。


「これで休憩中に魔物がやってくることはない」

「ほほう、便利でごじゃるな。メルディ殿は本当に色々な魔法を使えるでごじゃるね~」

「私の持つ自慢の魔法の一つだ。お前が見たいならもっと見せてあげてもいいぞ」

「おお!! ぜひ見せてほしいでごじゃる!!」

「よかろう。まずこの魔法だが……」


 雪の民とメルディはだいぶ打ち解けている。

 楽しく魔法談義に取り掛かっている。


 仲良くて微笑ましい。

 同じくらいの背丈なので、まるで姉妹みたいだ。


 二十分後。俺は料理を完成させた。

 野菜をふんだんに使ったシチューだ。

 三人一緒に手を合わせて、楽しく食事をとる。


「美味しいでごじゃる! あるじは料理の天才でごじゃる!」

「ふうん、まずまずだな」


 二人も満足そうだ。

 それは当然だ。

 料理こそが俺の本職だからな。

 家事育児料理清掃、すべての雑用は俺にお任せあれ!!


 喜んでもらえて何よりだ。

 美味しそうに食べてもらえることが、料理を作った人にとって一番の幸せだ。


 メルディは野菜をパクパクと食べている。

 その表情はとても幸せそうだ。


 ふと違和感を覚えた。

 違和感の正体はすぐにわかった。

 そうだ! たしかエディアは野菜が苦手だった。


「普通に野菜を食っているけど、メルディは好き嫌いとかないのか?」

「お前は失礼な奴だな」

「すまんすまん。エディアは好き嫌いが多かったもんでついな」


 メルディは不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「姉は偏食家だからな。冒険者の料理は厳しかろう」

「まあな。食えるようにさせるまでにかなり苦労したよ」

「なっ!?」


 メルディはスプーンを地面に落とした。

 彼女はかなり動揺している。


「どうした?」

「あ、ありえない。姉は一度嫌いと言ったら絶対に食べない人だぞ」

「冒険者は食うものがないからな。嫌でも食わざる得ないよ」

「うーん……信じられん。どうやって食べさせたのだ?」

「食えば強くなると教えた。すると渋々食べるようになった」

「おお、流石でごじゃる! 魔法も体力が大事でごじゃるからな!」


 エディアは強くなることへの執着がすごい。

 大嫌いな俺の言葉でも、強くなると言えば全部素直に聞いた。


 せっかくだから。

 俺はエディアとの思い出を二人に話した。

 できるだけ湿っぽくならないように明るい話題が中心だ。


「随分と単純でごじゃるな~」

「だろう? 結構面白かったぞ。絶対強くなると言いながらメイド服を着せた事もあった」

「主が嫌われた理由って絶対そういう所ですよね」

「た、たしかに言われてみればそうかもしれない」

「そこは気づいて下さいでごじゃる」

「強くなる、か……」


 メルディがぽつりと呟いた。


「メルディ殿を意識してたのかもしれませんね」

「それもあるだろうな。私は姉よりもずっと優秀だったからな。私に嫉妬して屋敷を出て行くほどだ」

「そうなのか」


 初めて知った。

 エディアはあまり家のことをあまり語らなかった。


「私のように姉は優秀ではなかった。どこにでもいる、普通の魔法使いだ」

「だがアイツはレベル65にまで上がったぞ。レベルだけならメルディよりも上だ」

「それはそうだろう。姉は私よりも早く、強くなろうと思ったのだ。強さに対しての執着もあった。そして何よりお前に……」


 メルディは俺をじっと見つめた。


「いや、何でもない。今のは聞かなかったことにしてくれ」


 メルディは首を振った。


「よし、そろそろ行くか。今度こそ迷宮を完全攻略だ」

「おお!! 頑張るでごじゃる!!」


 俺たちは攻略を再開した。



 六時間後。

 休憩を挟むことなく、地下二階と地下三階も無事攻略できた。

 三人の気持ちが一つになっているおかげで攻略速度は地下一階よりも遥かに速い。

 不思議と全然疲れていなかった。

 気をつかうという気持ちが消えたからだと思う。

 昔からの旧友のように会話できた。


 地下四階に降りた。

 地下四階は真っ直ぐな一本道。

 道の中央には大きなフロア。

 そこには魔物がいた。



 グラントリオン

 植物族 レベル25



 その先には転移魔法陣。

 間違いない、ここが最終階層だ。


メインスキル

○地図

 ・索敵機能

 ・罠探知機能


オプションスキル

○認識阻害の加護 対象に対しての他者の認識を変化させる。

○ポータル 登録した三地点へのワープ機能。

○召喚の加護 アイテムボックスと接続できる。瞬時に取り出すことも可能

○パーティ共有の加護 パーティの現在位置がわかる。連絡の加護と併用すれば通信も可能

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