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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【童話風世にも奇妙な物語】リンゴ

作者: あめ

とても短い物語の中に混ざる人間の弱さ。

この物語から、何を感じますか?

童話風に仕立てた世にも奇妙な物語です。

ある国にとても貧しい村がありました。

その村には、とたん屋根の家がぽつぽつとたっており、いつでも曇天の空が広がっていました。

人々は皆やせ細り、水一滴飲めません。何度もほじくりかえした道端のごみを漁っては、表情ひとつ変えることなく座り込むのでした。


ある日、その村に住む一人の男が大きな籠を抱えて元気よく叫びました。

「おーい。リンゴが落ちてたぞー。」

その声を聞いた村人は目を輝かせ、みんな男のもとに駆け寄りました。皆嬉しそうに籠をのぞき込みます。

「やった、食糧だ。」

「早く食べさせておくれ。」

しかし、籠の中は、石しか入っていませんでした。

「なんだ、りんごではないではないか!」

「りんごが落ちていたのではないのか!」

皆口々に言いました。

男は、不思議そうな顔をしながら言いました。

「何を言っているんだ。どう見てもリンゴではないか。皆頭がおかしくなってしまったのか。」

村人は言いました。

「どう見ても石ではないか!おかしいのは君のほうだ。」

「あまりに食糧を口にしていないせいで、幻覚を見ているんだ。」

皆男に言うのでした。

「何を言うんだ。どこからどうみてもリンゴではないか。なぜこんなに美味しそうなリンゴを石などと言うんだ。幻覚ではない。」

男は言い張るのでした。

あまりの男の剣幕に村人は考えます。

「もしかすると、これは石ではなくリンゴなのではないか。幻覚を見ているのは私達の方ではないか。」

すると、ある若者が言いました。

「なら、僕が食べて確かめよう。」

石かりんごか分からないそれを手に取ると、一口頬張りました。

「食べられる。これはリンゴだ。男の言っていることが正しい。あまりに飢えているせいで、食べ物が石に見えていたんだ。」

村人はとても喜んで、籠の中のリンゴを食べだしました。久しぶりの食べ物にみんな無言で食べ続けました。

籠の中が空になると、道端に落ちている石を食べました。ごみも食べました。

ただひたすらこれまでの欲望を満たすかのように食べていくのでした。


しばらくして、一人の旅人が村を訪れました。その村は、曇天の空に覆われて建物ひとつありません。石やごみなどはひとつもなく、ただお腹の膨れた死体が転がっていました。





読んでくれた方々、ありがとうございます。

人って弱いですよね。一人の男によって、村人は帰らぬ人となりました。でも誰か1人でも疑い続けていたら誰も死ななかったかも知れません。

さらに、正しいかどうか分からない情報を一人の若者の言葉で信じてしまった。たった一人の若者の言葉でです。


皆さんはどうですか?情報に踊らされてませんか?


もっといろいろ書きたいことはあるのですが、これくらいにしておきましょう。

では。

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