くるり/悲劇のヒロイン
■くるり
緩やかにまわる思いに
酔いしれて
眩しいほど色付くぼくらは
閃光になる
朝焼けに眠る町を眼下に
ぼくらはくるりと宙をまわる
観覧車は退屈
機械に命じられた単純作業
ただまわるだけ
だけれど、
ふいに乗ってみたくなる
この世界の全部を見たくなる
上がって下がってぼくらの思い
くるくるまわるきれいな夢の中
全てが永遠でないことを知らずに
溢れかえる光に目を細めたら、
ぼやけて見えた世界に
きみの姿を探して
いつになったら逃げ出せるか
夢を見せる、この機械から
きみのいる心地良い時間に揺られて、同時に錯綜するぼくは、
心のどこかで思っている
ふたつの思いがこの世界で、
交差するのを待ちながら
■悲劇のヒロイン
私が否定されてしまったから
涙でもひとつ、零しましょうか。
あな苦し。
暗闇に光る幾千の瞳は、
私を照らすスポットライト。
心は悲しみで溢れて、
そこに絶望がまぶされる。
悲劇のヒロインは、
なんて甘い味がするのだろう。
だれも私を見てくれないから
泣き声でも今、上げましょうか。
いと辛し。
離れていくものは、
夜空の星より数多く。
顔は悲痛で歪み、
軽蔑の眼差しで追い討ち。
悲劇のヒロインは、
なんて苦い味がするのだろう。
おとぎ話のお姫様は、
みんな悲劇がすき。
劇的で美麗。
悲劇のヒロインは、
陶酔と恍惚の化身。
自分でまぶした絶望と
軽蔑の眼差しを、
少しなめてみる。
そうしたらいつも私、
やっと世界に気付いて
夢から醒める。