ごめんね
翌朝。かなり早い時間からトールたちは星振りの崖に集まっていた。ライトがさっそく今日の本題を話し出す。
「はーい、今日はご報告があって皆さんをここに呼びましたー!!」
「イエーイ!!!」
カレンが大袈裟に拍手する。するとライトは「静粛に!」と言い、咳払いをした後、溜めに溜めて大きな声でこう言った。
「今日でトールくんとはサヨナラすることになりました!!」
「よっ! 流石ライト、いい判断!!」
カレンがまた大袈裟に拍手し、ライトを囃し立てる。そんな中トールはやっぱりなと思っていた。昨日、大事な話があると言われた時点でトールはある程度予想していた。むしろこんな苦痛な日々から抜け出せるなら願ってもないことだとすら思っていた。
トールはパーティーから追放されたらどうやって暮らそうかを考えることに集中していてたため、真顔になる。
「フンッ、予想できてましたみたいな顔しやがって」
「ライトー、もうとっておき見せちゃったらー?」
「アッヒャヒャヒャ! そーだなカレン見せちまうか!」
「とっておき?」
なんでだろう。とても嫌な予感がする。そしてライトはトールに残酷で悲しい真実を告げる。
「俺とユナは少し前からセッ〇スするような関係でしたー!! そして今彼女公認の2股中でーす!」
「は?」
トールにはライトの言っている意味がわからなかった。ユナがライトと付き合ってる?体の関係も持っている?意味がわからない。情報が入ってこない。いやきっと脳が入れることを拒否しているんだろう。
「ユナ、嘘だよね? ライトが僕を驚かせるために嘘をついてるんだよね?」
トールは縋るようにユナに聞く。
「ごめんね、トール。ごめんね、、、」
しかし彼女の泣きながら謝ってくる姿を見てトールは本能でこれが事実だということを感じてしまう。まだまだトールの地獄は終わらない。
「ユナ、早くするんだ。このカスのことは忘れるんじゃなかったのか?」
「え? それってどういう」
トールが言い終わる前にユナが叫んだ。
「わかりました。わかってるんです。わかってるんですよ!」
彼女の口調はいつもとは違い、怒っているような、それでいて覚悟を決めるような、そんな声をしていた。そして彼女がトールに近づいていく。
「ごめんねトール。ごめんねトール」
彼女は取り憑かれたかのように「ごめんね」と繰り返しながらトールに迫っていく。トールの後ろには高い崖がある。
「え? ユ、ユナ? なんで近づいてくるの?」
トールがそう聞いてもユナは「ごめんね、ごめんね」と繰り返しながら近づいてくる。それに合わせてトールも後ろに下がって行く。そしてついにトールは崖のギリギリまで追い詰められてしまった。
「ユナ? 嘘だって言ってよ。ユナ? 僕、落ちちゃうんだけど」
「ごめんね」
そう言ってユナはトールのことを優しく押した。トールが最後に見た景色はユナの後ろで笑うライトとカレン。そしてユナの美しい涙だった。
裏切られて、落とされて。そこまでされても彼女の涙を美しいと思ってしまったのは仕方ないことなんだろう。なぜならトールは彼女のことを誰よりも愛していたのだから。
きっとユナだって脅されているだけだ。そうに違いない。そんなことをトールが思っていると、いや、願っていると機械のような声が急にトールの頭の中に響いた。
『生命の危険を感じました。条件を満たしたためEXスキル「人形生命付与」を開放しました。「人形生命付与」を開放したためスキル「人形作りの巧み」を開放しました』
「な、何それー!!!」
トールはそれが何かよくわからないまま気を失った。
その頃トールを落とした直後のライトたちは歓喜の声を上げていた。
「アヒャヒャヒャヒャ! やっとだよ、やっと邪魔者が消えてくれた!! ユナこっちに来い」
ライトはユナを呼び、雑にキスをする。
「ユナ、お前はよくやった。お前はもう過去に囚われていない。そして正式に俺の彼女だ」
「は、はいライト様。とても嬉しいです」
ユナは顔を赤くし本当に嬉しそうな声を漏らす。ライトにとってユナの「調教」は本当に楽だった。
最初は「トールのことが好きだから」とライトを拒んでいたユナも無理やり体を重ねるたびにだんだんとライトのことを求めるようになってきた。
そして昨日、トールと喧嘩したことがユナの覚悟を決めるきっかけになった様だ。そして落とした後はもう完全に吹っ切れている。
普通の人なら好きになった人を崖から落として吹っ切れるなんてあり得ないのだが、ユナもまた狂っているのだろう。
ちなみに普通の女に会ったことの無いライトは女はみんなそんなもんだと思っている。ライトがユナの調教の過程を思い出し、ニヤニヤしているとライトたちが荷物持ちとして使っていたトールの大きい人形が崖のほうに走って落ちていった。きっとトールが操って走らせたのだろう。
「アッヒャヒャヒャヒャ!! あいつ最後まで抵抗しようとしてやんのー。どーせ無駄なのになぁ!!」
ライトは高らかに笑う。
「ねぇ、ライトー。ユナばっかりに構ってないで私ともHしよーよー!」
「あぁ、カレンすまん! みんなで楽しもうか!」
そして3人は朝から野外で体を重ね合わせるのだった。
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