カルネーレ平定戦争開幕
次の日の朝、馬車に近づく者が1人いた。カルネーレの調査に行っていたエンラだ。トールとクロノはエンラの報告を聞く。
「報告します。カルネーレには我々が3人以上で戦わなければいけないほどの強敵『幹部』が4人。1人目が『カルラ』青い目をした赤鬼のような姿で片目が潰れているのが特徴です。戦闘面では守りが硬く、殺害は困難なように思えました。2人目は『ウィーラン』黒い髪に赤い目、そして持っている扇子が特徴的です。風魔法が得意なようで、とにかく速いのが印象的でした。3人目が『キャリー』お菓子の髪飾りが特徴的で、手には常にペロペロキャンディーを握っていました。キャリー自体は強くないのですが、キャリーが使う死霊術がとても厄介で、Aランク魔物『ドラゴンゾンビ』の使役を確認しています。そして4人目が『アノルマル』こいつだけはどこかに行ってしまったようで戦闘スタイルが確認できていません」
「そのアノルマルってやつは髪が白くて長いか?」
クロノが聞くとエンラは珍しく驚いた声で言う。
「その通りです! なぜ分かったんですか?」
「僕たちはそのアノルマルと昨日戦ったんだよ」
エンラの質問にトールが答えて、昨日あったことを事細かに説明する。
「なるほど、そんなことが…」
アノルマルの能力である『再生』の話を聞いて、エンラは新しく、2人は改めてアノルマルのチート性能を認識してしまい、しばらくの沈黙が続く。その沈黙を破ったのはエンラでもクロノでもない。かと言ってトールというわけでもない。その沈黙を破った声は馬車の方から聞こえてきたのだ。
「私が!! 私が戦います!!!!」
その声の正体はもちろんイアだ。この宣言にトールやクロノは目を見開き、驚いている。
「無理はしなくていいんだよ?」
トールはイアのことを心配するが、イアの決心は固いようで首を横に振る。
「無理なんてしてないです。私は自分の意思でカルネーレ平定に参加します!!」
クロノが昨日イアにしてしまったことを思い出し、謝ろうとするがトールはそれを止めて言う。
「なら、アノルマルはイアに任せるよ」
そうこうしているうちにカルネーレの門が見えてきた。
「クロノ、エンラ、ここからは歩いていくぞ」
「「はっ!(了解しました)」」
「おっと、その前に前哨戦と行こうか!」
トールたちの前には蛇王教の下っ端たちが300人ほどいた。
「はぁはぁはぁ」
「も、もう無理」
ライカやララたちも戦闘に参加し、下っ端を150人ほど倒し終わったとき、トールとイアは既に体力的限界を迎えていた。
「僕たち、あんなに意気込んでいたのに戦闘になるとやっぱり足手纏いだよね」
「そーね、さすがに戦闘経験が少なすぎるよね」
トールとイアがそんなことを言っていると、どこからともなくエンラが現れて言った。
「ここは我々に任せて主人たちは少し休まれてはいかがでしょうか」
「わ、私はまだやれます!」
イアがそう言ったため、トールもそれに続こうとするが考えを改める。
(疲れ切った僕がここに残ることでさらに足手纏いになってしまうのではないか)
ライカには強くなると宣言したが、ライカの左腕を奪ってしまったという罪悪感がなくなったわけではない。トールの心にはしっかりとトラウマとして刻まれている。トールの頭にライカの腕が吹き飛ぶ瞬間がよぎる。
「僕は先に馬車に戻るよ。下っ端の殲滅が終わったら呼んでくれ」
トールのこの発言にイアは驚いた顔をして、本当にそれでいいのか目で訴えてきたがトールは首を縦に振って馬車に戻った。
(ダメだ、やっぱりまだ怖いなぁ)
トールがそんなことを思いながらトボトボと馬車に向かっていると馬車の方から音がする。
トールは慌てて隠れ、様子を見ようとしたがすでに手遅れだった。
「なんで戻ってくるかなぁ? あの雑魚どもに囮りやってもらえれば馬車をバレずに襲えると思ったのによぉ!」
「その見た目は…カルラか」
「おぉ! 俺も有名になったもんだなぁ、でもお前よェーだろ」
トールはこの言葉に内心ドキッとしてしまう。
「あっっはー! なーに驚いた顔してんだよ、おめェーには覇気がなさすぎんだ」
カルラが腹を抱えて笑いながら言う。トールは何も言い返せず、せめてもの抵抗としてカルラを睨んだ。
するとトールのポケットの中に入っていた黒楽天が光り輝き、頭に機械のような声が響く。
『「カルラ」を敵として認識しました。悪人度 Lv.10 最大レベルに到達したため、ファントムスキル「人格形成」をオート発動します』
その瞬間トールはトールじゃなくなった
久しぶりの2日連続投稿だぁ〜!!
読んでくれてありがとう!!
アドバイスや感想等お待ちしています!!