光と闇の合わせ技
時は少し遡り、助けを呼ぶ声が聞こえて、ララとルルが外に出た直後の出来事。
そこには異様な光景が広がっていた。若い獣人の女の人が見るからにヤバい人に追われているのだ。当然、このヤバい人とはアノルマルのことである。
「あぁ、待ってよ待ってよ!待ってよ!!待ってよ!!! 可愛い可愛い可愛い可愛い獣人の小娘!!!!!! あぁ、なんで逃げるの? ねぇ!ねぇ!!ねぇ!!!ねぇ!!!」
するとアノルマルはララとルルの存在に気づく。元々赤くなっていた顔がさらに赤くなる。
「あぁ、美しい美しい美しい!!!! 若くて美しい物を見ると気持ちが昂る!!!!! 欲しい欲しい欲しい!欲しい!!欲しい!!!欲しい!!!! その若さが、美しさが、、、欲しい!!!!!!!!!!!」
アノルマルが標的を獣人の女性からララとルルに変更する。ララとルルは反射的に魔法を放つ。
「シャイニング!」
「ダークカッター‼︎」
ララが魔法で目を潰し、ルルが首を確実に切り裂くという恐ろしい連携だ。ララとルルはお互いの考えを一瞬のアイコンタクトだけで理解し、完璧な連携をとったのだ。さすが双子と言ったところだろうか。
その双子を相手に無策で突っ込んできたアノルマルに、この連携攻撃が躱せる訳もなく、すんなりと首が落ちる。
「わっはっはっはっはっ!! 余裕だったのだ! これなら戦闘訓練を再開できるのだ!」
ララはそう言って馬車に戻ろうとする。そんなララを無視してルルは獣人に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
ルルがそう聞くと獣人が叫ぶ。
「後ろ!!」
「え?」
「クリアシールド!!」
ルルは冷や汗をかいた。首を切ったはずの敵が何事もなかったかのように立ち上がり、自分に攻撃してきたのだ。ララのクリアシールドがあと少し遅かったらルルは死んでいた。
「あいつは何回首を切っても、何回串刺しにしても再生していくんだ!! だから逃げてきたんだ!!」
ルルはアノルマルのあまりのチート能力に顔をしかめる。
「あぁ良い!! その表情も素晴らしい!!! 可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!可愛い!!可愛い!!!可愛い!!!!可愛い!!!!!」
またアノルマルが無策に突っ込んできて、鋭く尖った爪でララとルルを切り裂こうとする。ルルはそれをジャンプして避けながら言った。
「ララ、合わせるのであります‼︎」
「了解なのだ!」
「今回は光多めで行くのであります‼︎」
そう言うと2人とも手に魔力を込め始める。
「ライトボール!」
「ダークボール‼︎」
「「聖光常闇・ライト!!」」
光をもたらすライトボールと闇をもたらすダークボールが交わったが、闇は光に呑まれてしまった。
しかし呑まれた闇も光となり、光の輝きが増す。その光が追い討ちをかけようとしたアノルマルに当たる。その瞬間アノルマルの表情が初めて歪み、悲鳴があがる。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
光による攻撃が終わる。普通の人間ならこの時点で塵になっているはずなのだが、アノルマルは笑顔を浮かべてそこに立っていた。
「あぁ、良い、あと少しで無くなるところだった!! 惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい!惜しい!!惜しい!!!惜しい!!!!惜しい!!!!! 甘く見てた甘く見てた甘く見てた!甘く見てた!!甘く見てた!!!甘く見てた!!!! 少しー本気出すねー♪」
そう言うとアノルマルはどこからか刀を取り出して構える。するとその瞬間アノルマルの首が落ちた。
「ふむ、思っていたよりも弱かったですね」
馬車を背にして立っていたアノルマルは馬車から降りてきたクロノに気がつかなかったのだ。
クロノがアノルマルを通り越し、ララとルルに話しかけようとする。
「クロノ!! 油断しちゃダメなのだ!! クリアシールド!」
ララにそう言われてクロノが振り返る。そこには切ったはずのアノルマルが立っていた。
「そいつは何度斬っても、強い魔法を浴びせても死なないのであります」
ルルがクロノに説明する。
「なるほど、それは強いな」
「では、私はこれから魔力を溜めますね♪」
アノルマルがそう言うと魔力を溜め始める。
「我は魔力がなくなってきたから魔力溜めの妨害は任せたのだ」
先ほどの「聖光常闇・ライト」で大量に魔力を使ってしまったララが言う。
「了解したのであります‼︎ 暗黒夢雨‼︎」
ルルがアノルマルを串刺しにする。しかしアノルマルの魔力溜め中は自身の再生能力が上がっているようで、一瞬で元の体に戻ってしまう。当然、アノルマルはその間も魔力を溜め続けている。
「攻撃は一旦やめて相手の攻撃に備えるぞ」
防御魔法を使えないクロノがそう言って防御魔法が使えるララとルルに近寄ろうとするとアノルマルが発していた魔力の質が格段に向上するのを感じた。
クロノは間に合わないと思い、ララとルルに守ってもらうのをやめて攻撃を避けることに専念しようと神経を研ぎ澄ます。
「麻痺針♪」
アノルマルがそう言った瞬間、アノルマルの周りに大量の針が現れてクロノたちに飛んでいく。いや、それは針と言うには大きすぎる代物で、棘という表現の方が近いかもしれない。
「クリアシールド!」
「影雲‼︎」
ララとルルが自分自身を守るために防御魔法を使った。しかしその防御魔法は棘から何度か攻撃を受けると、ひびが入り割れてしまう。クロノたちは割れた後もなるべく被弾しないように棘を避けついくが、それでも数発は体を掠り、傷をつける。そして棘による攻撃が止まる。
「よし! 反撃するぞ!!」
クロノがそう言って攻撃しようとするが体が動かない。それどころか倒れ込んでしまう。周りを見ると、ララとルルも同様に倒れ込んでいる。
「あぁ、良い!!! 動けない君たちができることは魔法で攻撃するか私にひれ伏すだけ!!!!! でも魔法では倒せない倒せない倒せない!倒せない!!倒せない!!!! 残された道はただ1つ!!!!!!!! 配下服従奴隷道具食料下僕玩具敬愛私物手駒尊敬改造、、、あ、、、あぁ、、あぁ、あぁあぁあぁあぁ改造改造改造改造改造改造!改造!!改造!!!改造!!!!改造!!!!!」
クロノたちがアノルマルを睨みつける。すると馬車の方から話し声とともに2つの気配が現れた。
「いえいえ、気にしないで」
アノルマルの視線の先にはトールとイアが写る。
「あぁ、ああ良い、、、良い良い良い良い良い!良い!!良い!!!良い!!!!良い!!!!! 素晴らしい!!!!!!!! 若い者が二人も馬車から出てきた!!!! 良い!!!!!!!! あぁ、その若さを!!! 美しさを!!! 私に頂戴!!! 頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴頂戴!!!!!!!!」
そう言いながらアノルマルは真っ直ぐイアとトールの方に突っ込んでくる。
「それ以上は行かせないのであります‼︎ 『暗黒夢雨』」
空から現れた槍はアノルマルを貫くが、アノルマルの体は再生してしまう。貫いたときに飛び散ったアノルマルの血がイアの顔に掛かる。
すると突然イアの頭の中に機械のような声が響く。
『一定以上の傷を負っている状態で、他の人の血を口に含みました。条件を満たしたためEXスキル「血液形状変化」を開放しました。「血液形状変化」を開放したためスキル「吸血強化」を開放しました』
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