アクミ
トールがララとルルにもライカと同じ様な宣言をして、最後にクロノの部屋に行こうとしたら、たまたま廊下でクロノと出会う。
「おぉクロノ! ちょうどよかった話があるんだ」
トールがそう言うとクロノは笑いながら言った。
「イアから伺いました。元気になったようで何よりです」
そう言うと突然クロノが真面目な顔になる。
「俺もご主人様にお話があってきました」
トールはクロノに何を言われるのか全く想像できなくて、ドキドキしてしまう。
「正直な話、この戦力でカルネーレに行っても全滅は間違い無いです」
トールもそれは理解していた。しかしどうしても蛇王教を許せなかった。
「でも、やるしかないんだよ。ここまできたらそれ以外に選択肢はない」
クロノに言ったのか自分に言ったのかわからないがトールはそう言った。
「そう言うと思ってました。なので蛇王教と戦うための提案が2つあるのですが、聞いてもらえませんか?」
「本当か!!」
このクロノの言葉にトールは目を輝かせる。
「はい、本当です。1つ目が新しい人形の作成。そして2つ目が、、、イアの引き抜きです」
「は?」
トールは話についていけず困惑する。困惑しているトールを見てクロノは引き抜きに至った経緯を丁寧に説明していく。
「頬にあるあざ、多すぎる荷物、こんなわかりやすい森で逸れてしまったという嘘。そして彼女もハズレ職ですから、おそらくはパーティーメンバーからいじめを受けているんだと思います」
「そうか、、、」
トールは自分がライトたちに虐められていたのを思い出し、イアも同じような目にあっていると思うと悲しい気持ちになった。しかしそれでも頑張ろうとするイアをかっこいいとも思った。
「僕もイアを引き抜く件には賛成だ。イアを助けてあげたい。でもイアの意見も尊重したい。無理やりは絶対にダメだ。イアと別れるその日がきたら聞いてみよう」
トールがそう言うとクロノは「わかりました」とうなずき、「もう夜も遅いので寝ましょう」と言った。トールは時間を見て「そうだね、ってもうこんな時間か!?」と驚き、ベッドに向かった。
その日、トールは不思議な夢を見た。まるで自分が自分じゃないような。自分が強くなったように見えて、手を出してはいけない何か別の人の力のような。
「ああぁぁぁぁぁぁがあぁぁっ!!!!!!!!!」
「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ」
トールはあまりの悪夢に耐えきれず、悲鳴を上げる。
「ご主人様! ご無事ですか!!!」
たまたま部屋が近かったクロノがトールの悲鳴を聞き、慌てて部屋に入ってくる。
「だ、大丈夫だよ、クロノ。少しうなされていただけだから」
トールがそう言ってもクロノは背中を優しく撫でる手を止めない。
「僕のことはいいから、馬車を動かして新しい人形作りを始めよう」
トールがそう言って馬車を動かす。
そしてトールが人形作りを始めるために立ち上がろうとしたらクロノに止められる。
「人形作りは明日からでも構いません。今日はお休みになられてはいかがでしょうか」
クロノはそう言ってくれるが、明日の夜にはカルネーレに着くことをトールは知っている。
「いや、今日中にスキルから承諾をもらうくらいの気持ちでいくぞ。実はもう案は考えてあるんだ」
そう言ってトールは人形作りを開始した。
その頃ライトたちは戦闘をしていた。
「聖剣斬!!!! 逃げるぞカレン!」
「逃すものか!」
そう言ってカルネーレの門番を任されていた蛇王教の幹部『カルラ』はライトたちを追う。
「あんたみたいな化け物に構ってられるわけないじゃない!! 煙幕!」
辺りに煙が立ち込み、カルラの視界を妨げる。そのうちにライトとカレンは全力疾走で来た道を戻る。
「クッソ、なんなんだよあいつは! 強すぎるだろ!!」
ライトがカルラに向かって文句を言う。
「ユナが犠牲になってくれなかったら全滅だったわね」
カレンが言うとライトは笑いながら言った。
「ティルトに戻ったら新しい聖女でも探すかぁ」
「そうね、ライトが探せば聖女なんてすぐに見つかるしね」
カレンが笑いながら返す。まるで仲間の死をなんとも思っていないかのように。
「ちっ! 見失ったか」
カルラは大きな舌打ちをして、倒れているユナを拾い上げる。
「気ィ失ってるだけでどうせ生きてんだろ。んじゃいつも通り改造すっかな」
そう言ってカルラはユナを大きな機械へと運んだ。
この光景を隠れて見ている人がいた。
トールたちから離れ、偵察に来ていたエンラである。
「あれは、、、まずいな、強すぎる。あのレベルの敵が3人以上いるなら我らは勝てないだろうな」
そう呟き、エンラはどこかに姿を消した。
読んでくれてありがとうございます!!
投稿遅くなりました。ごめんなさい!!