大事な話
2021年から頑張って描き続けます!
小説を書くのは初心者ですが頑張ります!
「い、痛い! やめてよ」
またトールはパーティーメンバーに殴られる。
「痛い? ハズレ職のお前が『勇者』である俺に逆らうと? そういうことだな? 荷物持ちごときが調子乗ってんじゃねぇ!! Fランク魔物も倒せない雑魚が!!」
「そうよそうよ! ライトに逆らえる立場だと思っているの?」
そう、天職で人生が決まるといわれているこの世界でトールは前例のない天職『人形操作』を神から賜った。
この世界では前例のない天職を授かって強かった人間はおらず、ハズレ職とまで呼ばれている。
トールの天職『人形操作』は漢字の通り人形を操れる天職だ。人形なんて操って戦ったところで魔法があるこの世界では戦力にもならない。
だからトールは魔物の中でも1番弱いとされているFランク魔物すら倒すことが出来ない。ちなみにランクは8個に分かれており、強い順にSS、S、A、B、C、D、E、Fとなっている。群れで行動する魔物は単体でのランクは付けられず、群れで遭遇したと仮定してランクが付けられている。
Sランク魔物が現れたら街が崩壊するといわれていてSSランク魔物にもなると現れたら国が滅ぶといわれている天災だ。しかし過去2000年にSランク以上の魔物が現れたのは2回だけでどちらも初代勇者パーティーが討伐している。
トールが所属している現在の勇者パーティーはAランクパーティーでトール以外はAランクに見合う実力がある。本来ならトールがこのパーティーにいるほうがおかしいのだが、なぜトールはこのパーティーに所属しているのか。理由は彼女にある。
「も、もうやめてあげてよライト! トールがかわいそうだよ!!」
「ユナ! またこいつを庇うのか? もういいだろ、いい加減認めろよ!! お前がトールは必ず強くなるとか言うから入れてやってんだぜ? でもどうだ? いつまで経っても、ちっとも強くなんねぇじゃねぇか!! 幼馴染を贔屓するのもいい加減にしろよ!!!」
ユナはトールが密かに好意を抱いている相手で、『聖女』という極めたら無くなった腕すら再生させるといわれている天職を授かっており、勇者パーティーでも大活躍だ。
ちなみに無くなった腕を再生させていたのは初代勇者パーティーの聖女だけなので今はこの世界に存在していない。
以前なら贔屓なんてしていないと反論していた彼女だが、今日は気まずそうに目をそらしただけだった。
「ちっ、しらけたわね。行きましょライト」
ライトの恋人であるカレンがライトの手を引っ張りながら宿に向かった。カレンは『賢者』という魔法使いの最上位に位置する天職を授かっており、大魔法協会と呼ばれる魔法使いの精鋭たちが集まる協会のトップであるエヴァ・ユリウスの娘だ。
「トール、、、トールってもう全然人形作ってないよね? もうかっこいい冒険者になるっていう夢を追いかけるのはやめちゃったの?」
ユナがトールに問う。トールは無理やり笑顔を作りながら答える。
「僕は、、、ハズレ職だからな」
「なんで! 昔のトールはハズレ職だって分かっても諦めずに頑張ってたじゃない! 私はそんなトールのことがずっと好」
トールはその言葉を遮って言った。いや、言ってしまった。
「ユナに僕の気持ちなんてわかんないよ!! 一度ハズレ職になってみろよ!! ユナみたいに『聖女』なんて超当たり職を授かって、最初から人生勝ち組だった奴には絶対、、、絶対わかんないよ!!」
トールはハッとしてユナを見る。ユナは悲しそうな目をトールに向け、「そう」と言って宿のほうに歩いて行った。トールは1人取り残され、ポツリポツリと涙をこぼした。
自分の想い人にあんなに悲しそうな目をさせてしまった事を後悔し、1人で泣いていたトールが夜中になり宿に戻った。ユナはまだ悲しそうな顔をしている。
でもさっきより肌がツヤツヤしているような気がする、、、。気のせいかな。
「何してたの? 遅いんだけど。残念ながら遅かったお荷物君にご飯はありません!」
「そ、そっか。分かった」
今日はトールがいつももらっている少量の硬いパンすらもらえないようだ。当然トールに拒否権はないので反論なんてせず、パーティメンバーの散らかった荷物を整理しようと荷物の方へ向かう。
するとライトが突然トールに話しかける。
「明日、お前に大事な話がある。ダンジョンに入る前に星振りの崖に行くぞ」
「わ、分かった」
星振りの崖というのは星が綺麗に見える崖のことだ。それ以外に見所が全くないので昼は人が全然いない事で有名な場所だ。そんなところに何しに行くのか気になるが、聞いたところで殴られるだけだと知っているトールは素直に返事を返す。
「はーい!」
カレンはニコニコ、いやニヤニヤしながら返事を返す。ユナは目を合わせてくれなかった。
読んでくれてありがとうございました!!
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