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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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準決勝に向けて

 目を覚ましたゼロと、シーナとレナの3人はギルドの食堂で一休みしていた。


「いよいよ準決勝です!ゼロさんもレナさんも凄いです!」


 明日は準決勝である、シーナのテンションも上がっていた。

 レナも香草茶を飲みながら満足気だ。

 ゼロとシーナの前には果実水が置かれている。


「いや、これを言うのも3回目ですが、本当にここまでギリギリでしたから。正直言ってこの辺が限界かもしれません。っていうか、これまででもギルドの依頼は達成でいいのでは?と思ってしまいます」


 弱気なゼロにシーナが発破をかける。


「なにを言っているんですか!ここまできたら優勝ですよ。優勝を狙いましょうよ」

「いや、流石に優勝は・・・」


 それでもはっきりとしないゼロにレナが苛立ちを覚える。


「近くで貴方の戦いを見ていた私には分かるけど、ゼロ、貴方はどんな相手とも互角以上に戦える実力を持っているのよ」


 それでもゼロは腕組みして考え込んでしまう。

 その様子を困り顔で見たシーナだが、レナと互いに目配せして頷いた。


「ゼロさん!」


 シーナに声を掛けられて顔を上げたゼロの表情が凍りついた。

 そんなゼロをシーナが普段の5割増しの笑顔で見つめている。


「わかりました!大丈夫です。明日も全力で戦いますから・・・」

「?どうしたんですか?」

「大丈夫です。何も言わなくても大丈夫です」

「だ・か・らっ、何をそんなに慌てているのです?私はただ、個人的に依頼をしたいなあって思っただけですよ。ゼロさんとレナさんにね。闘技大会で優勝してくださいって」

「流石に無理です」


 立ち上がろうとするゼロの腕をレナが掴む。


「逃げちゃダメよ。私はもうシーナさんの依頼を受けちゃったんですからね」


 シーナの笑顔が10割増しになった。


「大丈夫ですよ、個人的なお願いですから。受けてくれたら風の都市に帰ったら私の美味しい手料理を振る舞ってあげます。これでも料理には自信があるんですよ」

「ゼロ、貴方には選択肢は無いのよ」


 ゼロが肩を落とす。


「わかりました。全力で挑みますが、それで負けても怒らないでくださいよ」


 シーナが満足そうに頷いた。


「そこで、明日の相手ですが、森の都市の冒険者さんですね。重戦士と弓士のペアでどちらも銀等級の方です」

「重戦士と弓士ですか・・・」

「はい、戦鎚を操るドワーフのガンツさんと弓士で精霊使いでもあるエルフのエイリアさんです。ドワーフとエルフのコンビって珍しいですね」


 ドワーフとエルフ、本来は仲の良くない種族同士のペアだが、そうでありながら冒険者として銀等級までに上がり、大会でも勝ち残っているのだ、そこに付け入る隙はないだろう。

 ゼロが再び腕組みして目を瞑る。


「どうしたの?」


それに気付いたレナが覗き込む。


「いえ、どう戦おうかと考えまして」


 話ながらゼロは不敵な表情を浮かべる。


(またこの表情)


 シーナはゼロの表情に自信のようなものを感じ取っていた。


「レナさん、明日は援護に徹してください」

「援護って、守備魔法?」

「それも含めてですが、私からは特に指示しませんので自由に動いてください。明日の戦い、多分それでいけます」


 ゼロの中で準決勝に挑む道筋が出来上がった。


 明けて大会5日目、準決勝2試合が行われる。

 午前中に第1試合、午後に第2試合で、ゼロは第1試合だ。

 ゼロとレナは入場扉の前に立ち、その時を待つ。


 会場に獣人娘が姿を表す。

 道化師の姿の彼女は軽業師のような身のこなしで闘技場横の台に上がる。


「さあ、皆さんお待たせしました!いよいよ準決勝です。彼等が目指すは頂点!最強の称号ただ1つ!」


 獣人娘の口上に会場が湧き上がる。


「さあ、東の門から入場は!彼がここまで勝ち上がることを誰が予測できたか!これまでの戦いで我々が見せつけられたのは禁忌の中の禁忌である死霊術!悍ましき死霊達を率いるは禍々しきネクロマンサー。風の都市から来た漆黒の冒険者ゼロ!サポートは、一撃必殺の雷撃魔法を操る魔導師のレナ・ルファード!」


 口上に続いて扉が開け放たれる。

 ゼロとレナが踏み出すと会場から声援とブーイングが浴びせられる。

 声援とブーイングは半々だが、声援の中にはレナに向けられた声も多い。


「続いて西の門からは入場は!種族間の軋轢など我等には関係ない!冒険者として共に銀等級まで駆け上がった実力に嘘はない!我が鎚は全てを砕き、相棒の矢は全てを射抜く。森の都市の冒険者、破壊力抜群の重戦士、ドワーフのオックス・ガンツ!サポートは彼女の矢から逃れることは至難、エルフのリリス・エイリア」


 門が開かれて出てきたのは重厚な鎧に身を包み、巨体な戦鎚を担いだ戦士ガンツ。

 ドワーフ特有の背は低いが強靭な身体を持っていることは鎧に包まれていてもよく分かる。

 ガンツの後に続くのは、一般的なものよりも大きい弓を手にした長身のエルフの女性、エイリアだ。


 ガンツは闘技場に上がるとゼロの正面に立ち、担いでいた戦鎚の鎚頭を下ろす。

 地響きがしたかのような激しい音が周囲に響いた。


 闘技場の上で向かい合うゼロとガンツ。

 それぞれのサポートのレナとエイリアも配置についた。


「準決勝第1戦!冒険者同士の戦いです。ここまできたら負けるわけにはいかない!互いに一歩も退くことができない戦いだ。ガンツの戦鎚がゼロのアンデッドを砕くか、それともゼロとアンデッドがガンツを打ち負かすか、目が離せません。お待たせしました準決勝第1戦開始です!」

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