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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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死の森の主3

 ゼロ達とエレメンタルイーターは睨み合いを続けた。

 エレメンタルイーターに火炎魔法は効果があるものの決定打には欠ける。

 しかしながらスケルトンナイトに指揮されたスケルトンとウィル・オー・ザ・ウィスプはエレメンタルイーターが反撃に出ようとしたり、逃げ出そうとする度にその出鼻に火力を集中してそれを許さずにその場に釘付けにしている。

 ゼロは魔力の弱くなったウィル・オー・ザ・ウィスプはその都度冥界の狭間に返し、別の個体を召喚して補充するを繰り返していた。


「凄い・・・」


 初めて目の当たりにしたネクロマンサーの術にリズが呆気に取られている。

 しかし、ゼロは険しい表情だ。


「このままだといずれ私の魔力が枯渇します。そうなると打つ手がありませんね」


 そうは言っても膠着状態に陥っているが、自分の魔力にはまだ余裕がある、まだ暫くは大丈夫。

 そこに隙が生じてしまった。

 突如、エレメンタルイーターがその脚で大地を踏みしめた。


「しまった!下がれ!」


 ゼロが叫ぶと同時にエレメンタルイーターの周囲の大地が盛り上がり、周囲に石礫を撒き散らした。

 ゼロは自分とイズ、リズの周りに防御魔法を展開した。

 スケルトン達は大盾を構えてウィル・オー・ザ・ウィスプを防護するが、礫の直撃を受けた者がバラバラに弾け飛ぶ。

 その間隙を突かれてエレメンタルイーターの逃走を許してしまった。

 逃げ去るエレメンタルイーターを見送ったゼロは周囲を見渡した。


「油断しました、派手にやられました。精霊の力を取り込んでいるのですから、奴が精霊魔法を使っても何の不思議もありませんでしたね」


 周囲は魔力が弱まったウィル・オー・ザ・ウィスプが漂い、バラバラになったスケルトンの骨が散乱している。

 やがてバラバラのスケルトンがカタカタと鳴りだしたかと思うと徐々にそれぞれの骨が結合して元のスケルトンに戻るとゼロの前に集結した。

 エレメンタルイーターに逃げられはしたが、ゼロの方にもこれといった被害はない。


「やれやれ、とりあえず初戦は引き分け、ですか」


 ゼロは目の前に集まったアンデッド達を冥界の狭間に戻した。


「さて、森が死んだ原因は分かりましたが、このままにはしておけませんね。仕切り直しです」


 ゼロの言葉にイズが険しい顔で答えた。


「しかし、ゼロ様への依頼は森の異変の調査です。これ以上は私達が解決しなければならないことです」


 リズも頷くが、ゼロは不思議そうな表情だ。


「?依頼は調査と問題解決ですよね?」

「いえ、原因が分かっただけで十分です。ゼロ様にあのような危険な魔物の対処をさせるわけには」


 しかし、ゼロは惚け顔で


「困りましたね。ちゃんと依頼書に書かれていなかったからでしょうか、見解の相違が生じてしまったようですね。このまま帰ってもギルドから報酬を貰えないかもしれませんから、最後までお付き合いしますよ」

「しかし!」

「それに、ハイエルフにあれだけの大口を叩いてしまいましたからね。途中で投げ出すわけにもいきませんし、何より、もう奴の追跡を放ってしまいましたからね」

「それはどういうことですか?」

「奴が逃げる時に追跡のスペクターを放ったんです」


 ゼロはエレメンタルイーターを見逃したのではなく、密かにスペクターに追跡を命じていたのだった。


「スペクターならば奴を失尾することはありませんし、絶対に近づかないように厳命しましたから、喰われることもないでしょう」


 抜け目のないゼロにイズ達が折れてそのまま共に対処に当たることになった。


 3人は今後の対策を検討した。


「しかし参りましたね。もう一度奴を捕捉しても決め手に欠けます。今のところ火炎攻撃が有効ですが、火力が足りません」


 ゼロの言葉にリズが悔しがる。


「この森には元々サラマンダーが居ないので私の精霊魔法がお役に立てません」


 その言葉にゼロは素朴が疑問が浮かぶ。


「そういえば、リズさんは火の精霊魔法が得意と聞きましたが、そもそも火の精霊が居ないこの森ではあまり意味がないのではありませんか?」


 質問にリズが笑みを浮かべ、赤い宝石が埋め込まれたネックレスをゼロに見せた。


「全く使えないわけではないんです。私が持つこの宝石にはサラマンダーが宿っていて、ここにいるサラマンダーの力を借りて精霊魔法を使うことができます。ただ、この森には自然のサラマンダーが居ませんし、死んだ森のここではまるで威力が発揮できないのです。先ほどのゼロ様のウィル・オー・ザ・ウィスプの半分の力もないでしょうね」


 イズも黄金色の宝石が埋め込まれた指輪を見せる。


「私達エルフは自分と一番相性の良い精霊をこのように宝石に宿らせているのです。ですからこの宝石の中の精霊の力を借りて魔法を使えます。とくに自然の精霊が居る場では宝石の中の精霊と自然の精霊の相乗効果で威力が強まるのです」


 説明を聞いてゼロは思案するが、やはり2人の精霊魔法は期待できない。


「ゼロ様、魔法攻撃に頼らずに通常攻撃はどうでしょうか?」


 イズの提案にゼロは首を振る。


「あれだけの体格です。剣の間合いまで近づくのは危険ですし、普通の剣の攻撃では大したダメージは与えられないでしょうね」


 ゼロは足元に落ちていた枯れた木の枝を拾い上げて眺めながら暫くの間考え込んでいたが、何かを思いついたのか、イズ達に向き直って口を開いた。


「イズさん、死の森から出れば地の精霊魔法を使えますよね?そこの地面に大きな穴を開けることは可能ですか?」

「ノームが居る場所ならば造作もありませんが。落とし穴でも掘るのですか?」

「まあ、そんなとこです。それだけではありませんけどね。リズさんは動いている奴の目を射抜くことはできますか?」

「はい、片目ならば簡単です。両目となると若干の時間差が生じますが、可能です」

「ああ、片目だけで結構です」


 2人の返答を聞いたゼロは冷たい笑みを浮かべながら1人で頷いている。


「作戦を思いつきました。準備に1日か2日掛かりますが、まあ大丈夫でしょう」


 ゼロは2人に作戦を説明し、3人は準備に取りかかった。

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