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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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王都にて

 風の都市はアイラス王国の西方に位置する地方都市である。

 アイラス王国は100年の繁栄を誇り、現在も賢王として名高い国王に統治され、大局的には平和で豊かな国である。

 しかしながら国内に目を向ければ魔物や盗賊等の出現により市民の生活は脅かされていた。

 国としても対策を取っていたが、限られた兵力では手が回らないため、国の機関である冒険者ギルドを設立した。

 冒険者ギルドは様々な依頼を受けて自由業者たる冒険者に斡旋する機関であり、何処かの世界のギルドとは性質が違う。


 冒険者にはその実力に応じて等級がある。

 冒険者登録すると例外なく白等級から始まり茶等級と進む、この2等級は駆け出しの下位冒険者である。

 下位冒険者として生き抜き、経験を積むと青等級に上がり、更に紫等級に上がる。

 青等級と紫等級は中位冒険者としてあらゆる依頼を受けられるようになる。

 依頼の中から自らの実力と能力を照らし合わせて判断できる実力者として認められる。

 更に実績を積むと銅等級、銀等級へと上位冒険者となる。

 銅等級以上になると王家からの依頼を受けられるようになる。

 銀等級を超えると金等級、白金等級への道が開ける。

 英雄や勇者と呼ばれる者達で、王国全体を見渡しても金等級以上の冒険者は8人しかおらず、その中で白金等級は2名だけである。

 彼ら英雄や勇者は国王に謁見する機会も多い。

 そして、もう一つの等級が紫等級から銅等級に上がらずに別に分岐する黒等級である。

 歴とした上位冒険者だが、職業や種族が理由で銅等級に上がることができない者達である。

 その身分は国の機関であるギルドが保証するが、一般的には眉を顰められることが多い。

 黒等級になるとそれ以上の昇級は無くなり、どれほどの実績を上げても黒等級のままである。

 そのような事情で黒等級に上がる前に登録職業を変更する者が殆どである。

 職業は登録変更でどうにかなるが、生まれもっての種族はどうにもならないのか、というとそうでもなく、実力のある冒険者には救済措置がある。

 本来は銅等級に上がれない獣人族やダークエルフ等の冒険者で銅等級への昇級希望者は王都にあるギルド本部での厳格な面接等の試験を経て銅等級に昇級することも可能である。

 つまり、どのような冒険者にも黒等級への昇級を避ける道は開かれているのである。

 現在アイラス王国内で黒等級の冒険者として登録されているのは14名、職業的シーフや呪術師で登録変更をしなかった者、獣人等でギルドの審査を受けなかった者が殆どであり、ゼロもご多分に漏れずその1人である。

 因みに、アイラス王国の冒険者ギルドに所属しているネクロマンサーは黒等級冒険者のゼロ1人であった。


 アイラス王国には聖魔省という機関があり、聖魔省の傘下に聖務院と魔導院が置かれている。

 聖務院はアイラス国内で信仰されている慈愛神シーグル教、知識神イフエール教、武神トルシア教により国の祭事を取り仕切る。

 聖務長官は3年任期で各教から持ち回りで選出している。

 また、魔導院は魔法研究と魔術師教育を司り、長官は宮廷魔術師長を兼任する。

 その他に国の内政を司る内務省、軍務を司る軍務省があり、冒険者ギルドは内務省傘下の組織である。



 今、アイラス王都の聖務院内の一室で各教の大司祭が集まって密談が行われていた。

 現在の聖務長官は武神トルシアの大司祭が務めている。


「風の都市の冒険者ギルドで黒等級のネクロマンサーが誕生したらしい」

「なんという・・・背徳の極みではないか」

「しかし、大半の冒険者は黒等級に上がるのを避けるために職を変えるのではないか?冒険者ギルドは何をしていた」

「冒険者ギルド本部はそれが事実であることは認めたが、その他の見解は示していない」

「しかし、栄えある我が国にそのような邪悪の象徴たる死霊術師が居ることは不名誉極まりない、聖務院としても看過できぬぞ、早々に手を打つべきだ」

「どうしたものか、聖務院特務兵を出して抹殺すべきではないか?」

「いや、いずれにしてもそのような者と一党を組む者も居るまい、単独での行動ならばそう遠くない時期に命を落とすのでは?」

「だとすれば、むやみに事を起こす必要もあるまい。特務兵は何時でも行動開始できるようにしておき、今は静観する方が良かろう」

「「同意する」」


 たかだか地方都市のギルドに所属する1人の冒険者に過ぎないゼロだが、自らが陰謀の渦に巻き込まれることになろうとは、この時には知る由もなかったのである。

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