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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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決戦 二つの死闘3

 ゴッセルとの戦いの中、ゼロが窮地に陥ったその時、地下墳墓の外の小屋の中では未だにレナ達8人が眠りに落ちていたが、その中リズだけが突如として飛び起きた。


「ゼロ様が危ない!」


 リズは直ちに眠っている仲間達を叩き起こした。


「ゼロは俺達を置いて1人で魔王に挑みに行ったはずだ。元々それだけで無謀なほど危険だ。そのゼロが危ないってどういうことだ?」


 装備を確認しながらオックスはリズに問う。

 オックスだけではない、全員が当然の如くゼロの後を追うつもりだ。


「ゼロ様の無事を祈って精霊の加護を込めた私の髪を1本だけゼロ様のローブに編み込んでおいたのです。ゼロ様に危機が及んだ時には私の髪を媒体にして私に伝わります」

「つまり、あの馬鹿野郎はたった今危機に陥っているってわけか!あの野郎、俺達を巻き込まないためだったんだろうが、見くびられたもんだ!一発殴ってやらねえと気が済まねえ!」


 リズの説明にライズは拳を握り締める。

 オックスはリリス、ライズ、イリーナ、イズ、リズ、コルツそしてレナを見渡した。

 ゼロがいない今、皆をまとめるのは自分しかないと考えた。


「聞いてくれ。ゼロは俺達を守ろうとしたのだろう、1人で地下墳墓に潜った。そして今、危機に陥っている。正直言って今から後を追って間に合うかどうか分からない。しかも、そこにいるのは俺達の誰よりも強い、俺達が束になって掛かっても勝てないだろうゼロですら返り討ちにあうような化け物だ。それでも行くのか?」


 皆を落ち着かせようと、努めて冷静に問い掛ける。


「逆に聞くが、あんたはそんな危ねえ場所に何故行こうとするんだ?」


 ライズがオックスを見る。


「俺か?俺はな、彼奴が好きなんだ。ドワーフの俺よりも頑固で馬鹿野郎な奴が。正直、ゼロが勝てない相手に俺は勝てると思わん。それでも今から後を追って、間に合うならばゼロの手助けをしたい。頑丈な俺ならば盾の代わりになるだろう。もしも、間に合わなかった時、その時は魔王から逃げ出して奴の亡骸を連れて帰ってやりたい。ゼロはこんな所で魔王の餌になんかなっちゃいけねえんだ」


 静かに決意を語るオックス。

 ライズは笑う。


「俺と同じじゃねえか。ゼロはこんな所で死んじまってはいけないんだ。人々に蔑まれ、避けられて、それでも愚直に自分の仕事を全うし、多くを守ってきた。その功績の殆どは守られた人々にすら知られていない。そんなことを気にもしないゼロだが、そのゼロがこんな所で誰にも知られることなく死んじゃいけないんだよ。そんなことは神が認めても俺が認めない!まあ、そうは言っても俺はゼロは持ちこたえていると信じているぜ。ゼロには俺達以外にも仲間がいるからな。魔王といえど簡単にはゼロを仕留めることはできないはずだ。なあ?」


 ライズは相棒のイリーナを見た。


「そうね。ゼロは今までに幾度となく危機に陥って、その都度に生き残ってきたわ。ゼロと一緒に戦うとどんな状況でもどうにかなるって思えるの。今だって意地汚く生きているはずよ」


 残りの矢の数を確認しながらイリーナが話せばリリスも笑みを浮かべる。


「私もゼロに死なれると困るのよ。オックスの数少ない友人だから。それに、私達は今までゼロに頼りっきりで何も返せていないし」


 イズとリズも決意の表情だ。


「私達シルバーエルフもゼロ様には返しきれない程の大恩を賜りました」

「私も兄様もどこまでもゼロ様について行くと決めたのです」


 コルツも槍を掲げる。


「小官は連隊長の部下にしていただいて日も浅く、まだ何も学ばせてもらっていません。私を送り出してくれたケルム隊長や他の仲間のためにも最後まで戦います」


 皆が決意を口にする中でレナだけは無言だった。

 それでもオックス達はレナの気持ちがよく分かっていた。

 ゼロを1人で行かせてしまった自分が許せなく、一刻も早くゼロの下に駆けつけたいのだろう。

 オックスは声を上げた。


「今、ゼロを助けてやれるのは俺達しかいない!みんな行くぞ!」


 オックスを先頭に8人は走り出し、地下墳墓の奥へと向かった。


(私が行くまで待っていなさい。絶対に1人で死なせはしない。私から逃げられるとは思わないでよ、ゼロ)


 レナは他の皆とは少し違った覚悟を心に秘めていた。


 ゴッセルとの戦いの中で意識を飛ばして倒れたゼロ。


「私達は主様をお守りします」


 アルファとシールド、スペクターがゼロの守りにつく。


「敵をマスターに近づけてはいけません!」


 オメガを中心にサーベル、スピア、ジャック・オー・ランタンがゴッセルに襲いかかる。


「オメガ、自分を犠牲にしようなんて考えてはいけませんよ」

「当然です。私達はまだまだマスターにお仕えするのです。そのためには決死の覚悟で戦います」


 オメガ達の攻撃はゴッセルには通用しない。

 それでも彼等は攻撃の手を緩めることなくゼロが目を覚ますまでの時間稼ぎに専念していた。

 ゼロの戦いは即ちアンデッド達の戦いでもあるのだ。

 感情が無いはずのアンデッド達によるゼロを守るための戦いが続いていた。

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