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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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一瞬の間隙

 ゼロは偵察に出していたスペクターを呼び戻し、更に上位個体のウィル・オー・ザ・ウィスプを5体召喚した。

 桁違いの魔力を有しているにもかかわらず、スペクターの警戒網にすら捕捉されない程の相手だ、周囲の警戒よりも目の前の相手に集中しなければならない。


「オメガを中心に敵魔人に対して全力攻撃!」


 ゼロの命を受けてオメガとジャック・オー・ランタン、ウィル・オー・ザ・ウィスプ、スペクターがハーレイに向かい、四方八方から間断ない魔法攻撃を浴びせかけた。


「レナさんは防御魔法に専念し、リリスさん達も精霊結界を維持してください。オックスさん達は不測に備えて待機です」


 ゼロの指示を聞いたリリスは笑みを見せながらハーレイに向けて矢を放った。

 リリスの放った矢はハーレイに届く前に焼き消される。


「ゼロ、私達は精霊に結界の維持を任せることができるのよ。だから結界内からの援護を引き受けるわ」


 イリーナもリズもハーレイに向けて矢を射かけ始めた。

 それを見たゼロは頷き、自らは剣を手に魔法防御と精霊結界に守られた空間の外に向かって歩き出した。


「ゼロ!何をする気?」


 レナが慌てて止めようとするのを右手を上げて制したゼロはアルファを従えて防御空間から出てしまう。


「私は自分の魔法防御に加えてアルファの守護があるから大丈夫です。前線でアンデッドの指揮を執りながら奴の首を狙います」


 駆け出したゼロは空中でアンデッドと交戦しているハーレイ目掛けて最大魔力で光熱魔法を放った。

 普段ゼロが敵の牽制のために補助的に行使しているものとは桁違いのそれだったがハーレイに紙一重で躱され、ローブの端を焼き貫いただけだった。


 ハーレイは即座に反撃、ゼロに向かってこれまた桁違いの炎弾を放つが、ゼロ自らの魔法防御とアルファの極冷気の守りの前に消し飛んでしまう。


「我がローブを貫くとは、人の力とは思えぬ。だが、このような無礼をはたらいて楽には死なさんぞ虫けらが!」


 予想外の一撃に怒りを露わにするハーレイだが、ゼロは全く臆する様子もない。


「この程度の一撃を予測できないとは、興ざめですね」

「ほざくな!」


 ゼロの挑発に乗せられたハーレイはゼロに向けて次々と炎弾を放った。

 ゼロはその連続攻撃を躱し、魔法防御で弾き、剣で斬り飛ばしながらハーレイに向けて光熱魔法を放つ。

 その間にもアンデッドの魔法やエルフの矢が絶え間なく撃ち込まれるが、ことごとくハーレイに届かない。

 それでも多方向からの攻撃に気を逸らされ、隙あらば強力な光熱魔法を放ってくるゼロに集中する暇は与えられない。


「忌々しい!ならば・・クッ!」


 ハーレイがゼロから後方の魔法防御の中にいる者達に視線を逸らした一瞬の隙を突いてそれまで魔法攻撃に徹していたオメガがその爪で背後から斬りかかってきた。

 間一髪、オメガの攻撃を躱したハーレイだが、無意識の間に地表近くまで下りてしまう。

 そこに待ち受けていたのはゼロの斬撃だった。

 

「小癪なっ!」


 ゼロの斬撃に対して極限まで収束した炎の槍で迎え撃ったハーレイ、双方の一撃が交錯した。


「うわっ!!」


 ゼロはハーレイの攻撃を受け止めきれずに後方に吹き飛ばされた。

 地面を転がったゼロだが直ぐに立ち上がって再び剣を構える。

 吹き飛ばされはしたものの、魔法攻撃への抵抗は成功しており、ゼロのダメージは皆無だ。

 一方のハーレイは、ローブの右肩が切り裂かれ、肩口に深い傷が生じており、更にその左半身は氷に包まれていた。

 ゼロの剣がハーレイに届いたうえ、ゼロに付き従っていたアルファが氷撃魔法を撃ち込んでいたのだが、どちらも魔人であるハーレイにとって大したダメージにはなっていない。


「貴様ぁ!」


 それでも怒りに震えたハーレイは再び空中に舞い上がった。

 そして自分の周りに多数の炎の槍を作り出す。

 その全てが炎弾など比べものにならない程の強力なものだ。


「来ます!全員防御に集中!」


 ゼロが叫ぶや否や、炎の槍が八方に放たれた。

 数体のジャック・オー・ランタンやスペクターが槍に貫かれて霧散する。

 ゼロは飛来した3つの槍を身を翻して躱したが、その3つを躱した一瞬の間隙を突いてハーレイに時間差で放たれた最後の1つがゼロに襲い掛かる。


「クッ!」


 ゼロはすんでのところで最後の攻撃を躱すことができた。

 だがしかし


「主様っ!」

   バキンッ!!


ゼロの背後からアルファの声と厚いガラスが割れるような音が響き渡る。


 振り返ったゼロが目にしたのは、両手を広げ、胸に穴を穿たれたアルファの姿。

 そして、アルファの背後で胸を押さえて膝をつくレナの姿だった。

 胸を押さえるレナの手は血に染まり、その目はゼロを見つめている。

 レナを守ろうとしたアルファ、そして魔法防御と精霊結界を貫通した炎の槍がレナを貫いたのだ。


「・ゼロ・・・ごめんなさい・・」


 瞳に涙を溜めながら力を失ったレナはその場に崩れ落ちた。

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