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職業選択の自由1 ~ネクロマンサーを選択した男~  作者: 新米少尉
職業選択の自由
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竜騎兵相手の対空戦闘2

 竜騎兵の急降下攻撃とは、まず上空から翼を畳んだワイバーンを目標に向かって急降下させる。

 この時に降下角度が急角度であるほど難易度は高いが、敵からの反撃を受けにくく、攻撃の威力も高い。

 大地に激突する恐怖と戦いながら降下を続け、地面に衝突するギリギリの高度で翼を広げて降下速度を落とすと共に目標をランスで仕留める。

 翼を広げるタイミングが早ければ目標を捕らえられないし、遅ければ地面に激突する、そのギリギリを見極めることが竜騎兵の腕の見せ所だ。


 そんな竜騎兵のランスがイリーナ達を狙う。


「やっと出番だ!待ちかねたぜ!」


 イリーナの前に立ちはだかったライズが迫り来る竜騎兵目掛けて跳躍した。

 獲物を捕らえようと牙を剥くワイバーンの鼻先を踏み越えてその背に騎乗する竜人を狙って剣を繰り出した。

 咄嗟に盾で防ごうとした竜人だが、ライズはその盾に剣を叩きつけた。

 ライズの一撃で盾を弾かれた竜人が視線を前に向けた時には既に手遅れだった。

 彼が目にしたのは真っ直ぐに自分を狙うレンジャーの姿。

 放たれた矢は兜の隙間を抜いて竜人の右目に突き刺さった。

 イリーナの矢を受けて仰け反った竜人の首にワイバーンの背中に取りついていたライズの剣が叩きつけられた。

 首を失ってワイバーンの背から転落する竜人、更にライズはワイバーンの首筋に剣を突き立てるとその背から飛び降りた。

 主を失い、致命傷を受けたワイバーンは一度咆哮を上げると力尽きて墜落した。


「まあ、俺の実力を持ってすればこんなもんだな!」

「ほら、あまり図に乗らないの」


 竜騎兵を仕留めて勝ち誇るライズをイリーナが諫めていた。


 リリスを狙った竜騎兵は姿勢を低くして盾を正面に構えて守りを固めながら降下した。

 自分が狙うエルフが甲冑の上からでも頭を吹き飛ばす程の強力な一撃を放つ弓士だと知ったからだ。

 リリスが放った矢が竜騎兵の構える盾に直撃し、盾が砕け散った。

 盾を犠牲にしながらも弓士の攻撃を捌いたと確信した竜騎兵だが、それも一瞬のことであった。


「おりゃあ!吹っ飛べ!」


 側面に回り込んだオックスが戦鎚をワイバーン目掛けて力任せに投げつけた。

 重厚なオックスの戦鎚はワイバーンに命中、首の骨もろとも頭部を粉砕した。

 墜落したワイバーンから振り落とされた竜人が立ち上がって剣を抜いた時には全てが手遅れであり、リリスが放った第2撃が竜人を貫き、胸に大穴を穿たれた竜人は力尽きて倒れた。


「なんだ、結局はリリスに良いところをかっさらわれたな」

「何を言ってるの。2人の戦果でしょう」


 戦鎚を拾い上げたオックスを見ながらリリスが笑った。


 一方でイズとリズは双子ならではの見事な連携を見せていた。

 リズを狙って降下してくる竜騎兵に向かってリズの矢とイズの精霊魔法で牽制する。

 2人の攻撃に曝されて降下の勢いを殺した竜騎兵だが、それでもリズを仕留めようとランスの狙いを定めた。

 狙いは目の前に立つダークエルフの喉元。

 余計な邪魔が入り降下速度は落ちてしまったが、それでも目の前のダークエルフの女を仕留めるには十分だ。

 リズを狙っていた竜騎兵は最後まで敵を甘くは見ていなかったし、油断もしていなかった。

 ランスを目標に突き立てるまでは全神経を集中していた、筈だった。

 その矛先がリズを貫こうとしたその時、リズがランスを避けて横に飛んだ。

 咄嗟にリズを追ってランスの軌道を変えてしまったのが彼の運の尽きだった。

 リズが横に飛んだ時、その背後からイズが前に飛び出した。

 リズの背後にイズが回り込んでいたことを見落としていた竜騎兵は反射的に横に飛んだリズを追ってしまい、イズに無防備な姿勢を曝してしまった。


「兄様!」

「任せろ!」


 双子である2人に余計な会話は必要ない、互いが互いの考えを一から十まで理解している。

 イズは両手にサーベルを構えてワイバーンに騎乗する竜人に飛びかかった。

 咄嗟にランスを手放して剣を抜き、盾を構えてイズの一撃を受け止めた竜人だが、その肩口にリズの放った矢が刺さる。

 竜人の気が肩に刺さった矢に向いた瞬間、イズのサーベルが竜人の首筋を切り裂いた。

 その間にリズの矢がワイバーンの目を貫き、竜人を蹴り落としたイズはワイバーンの片翼を切り落としてから飛び降りた。


「我々もゼロ様の足手まといにならない程度には成長できたか」

「まだまだです兄様。私達兄妹でゼロ様の背中をお守りしなければいけません。ゼロ様が私達に安心して背中を預けてくれる程に強くならなければいけません」

「そうだな、お前はレナ殿以上にゼロ様のお側にいれるようにならなければな」

「兄様っ!」


 イズにからかわれてイズは頬を赤くしながら膨らませた。


 ゼロは自分に向けて降下してくる竜騎兵の対処をレナとシールドに任せて自分は竜騎兵に狙われている馬車に集中した。

 狙われているのは2台、スケルトンウォリアーの大盾に守られているが、竜騎兵の一撃には耐えられないだろう。

 上空のスペクター達が竜騎兵を追うがとてもではないが竜騎兵の降下速度には追いつかない。

そんな中でゼロは反撃のタイミングを見計らっていた。

 ゼロが狙っていたのは竜騎兵が攻撃を加える寸前にワイバーンが翼を開くその一瞬。

 2台の馬車を狙っていた2騎の竜騎兵はほぼ同時に翼を開いた。


「今っ!」


 ゼロの命令でそれぞれの馬車を守るスケルトンウォリアーが一斉に大盾の防御を解いた。

 防御壁の内側から現れたのはそれぞれ数十体に及ぶ弓を構えたスケルトンウォリアー、その弓から一斉に矢が放たれた。

 流石にスケルトンウォリアー程度の攻撃では竜騎兵相手には威力が足らないが、バカにできないのはその数である。

 ゼロの支配下にあるアンデッド故に一瞬の差もなく同時に放たれる数十の矢の嵐は竜騎兵の勢いを止めるには十分だった。

 一方の竜騎兵は矢を逃れて高度を上げたところをスペクター達やオメガに捕捉されて袋叩きの目にあった。

 もう一方の竜騎兵は矢を避けきれず、致命傷には至らないにしても全身に多数の矢を浴びた。

 更に高度を上げることも出来ずに地面スレスレまで降下したところで待ち構えていたスケルトンウォリアーが次々とワイバーンの全身に取り付いた。

 全身を蟻のように群がるスケルトンウォリアーに身動きが出来なくなったワイバーンは地面に引きずり降ろされ、そこでゼロが新たに召喚したスケルトンウォリアーの槍隊に滅多刺しにされる。

 その間にゼロの背後ではレナの雷撃魔法の直撃を受けた竜騎兵が黒こげになって墜落していた。


「残りは18。悪くはありませんね」


 そう呟きながらもゼロの表情に油断は無かった。

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