褒美と帰還
『グランドマスターから通信が入りました』
「え? 誰から?」
『スライム討伐おめでとうー!』
この声は……マキナ?
『いいねー。その調子で頼むよ!』
その調子でって……もうこんなことはこりごりなんだけど。
『そんなこと言わずにさー。私を助けると思ってやってよ』
自分でできるでしょうよ。
『それじゃあ意味がないじゃん』
いや知らないよ。
てか、やっぱり自分でできるんじゃないか。
『まあそれは置いといて、ご褒美に機体の性能強化してあげるよ』
ご褒美なら、性能強化するんじゃなくて、人間の体に戻してください。
『私のお願いを叶えてくれたら、考えてあげてもいいよ』
そうきたか。
いったいどんなお願いなんだ?
『まだ秘密!』
これ、怒ってもいいよね?
それじゃあ、叶えようがないんだけど。
てか、最初の墜落はなんだったんだ?
あれのせいで俺の体が新品からガラクタに早変わりしそうになったんだけど。
『あれも必要なことだったんだよ』
どこが!?
俺を転生させていったい何がしたいんだ?
『んーそれはまた今度ね。ばいばい!』
おい!
『通信終了しました』
結局何にもわからなかったぞ!
『グランドマスターからのデータ受信を確認。アップグレード設計図を取得しました』
え、何? アップグレード? 設計図?
『時空間航行宇宙船のパーツ並びにスライムを回収します。アップグレード開始』
うわ!? なんだ!?
倒したスライムが俺の体に吸収されていく。
明らかに体積が吊り合ってないけど、ちゃんと俺の体に収まっていく。
どうなってるんだ?
『アップグレード完了。システムを更新。機体をアップデートしました』
おお!?
ところどころスライムに溶かされていた体が完全に直ってる。
なんかいろいろやったみたいだけど、見た目は特に変わったところはないかな。
マキナが言っていたように、性能面が強化されたってことなのかな?
『秘匿情報が一部解禁されました』
え? 情報が解禁? どんな情報?
『先ほどのスライムは神によって作られた神獣だそうです』
スライムの情報かい!
てかあれ神獣だったのかよ!
「んー……」
アイリスが目を覚ました。
「ここは……?」
「起きたか。大丈夫か?」
「え? はい……きゃっ!」
ほぼ全裸の状態で、布を纏っただけの自分の姿を見たアイリスが可愛い悲鳴を上げた。
「あ、あわわわ!」
パニックになるアイリス。
「み、見たんですか?」
「ご、ごめん」
「うわああああああああああん!」
やばい、アイリスが泣きだした。
どうすればいいんだ?
「アイリス、落ち着いてくれ」
「う、うう……」
アイリスが少し落ち着いてきた。
「こ、これはいったいどういうことなんですか!?」
「え? えーと、アイリス。スライムに捕まったのは覚えてる?」
「はっ! そ、そうでした! そのスライムはどうなったんですか?」
「倒したよ」
「そ、そうなんですか? でも、スライムの死体がないですよね? 死の湖も枯れてしまっていますし……」
「あ……」
何て言ったらいいんだ……?
「えーと、死の湖自体がスライムで、倒したら消えちゃったんだよね」
「えー!? 貴重なサンプルが……」
アイリスは残念そうだ。
「あー!」
「どうした!?」
「クレータ―で拾った研究材料がなくなってる!」
「ご、ごめん! スライムを倒すのに使ってしまったんだ」
まあ、だいたいは俺のアップグレードに使われたんだけどね。
「そ、そうだったんですか! なら、仕方ないですね」
そう言いつつも落ち込んだ様子のアイリス。
罪悪感が半端ない。
「えーと、何か着る物は持ってきてない?」
「あ……一応持ってきてはいます」
持ってきてるのか。
「とりあえず、着替えてきたら?」
「そ、そうですね」
俺はアイリスを視界に入れないように背を向けた。
アイリスは荷物から服を取りだして、着替え始めた。
お互い無言だが、衣擦れの音がして妙にドキドキする。
「終わりました」
振り返ると、眼鏡をかけた美少女がいた。
あ、眼鏡の予備もあったんだ。
「また危険な目に会うかもしれないし、早く帰ろうか」
「でも……」
アイリスは湖だった穴が気になるようだ。
「ここにはまた今度来ればいいよ」
「……そうですね」
なんとか納得してくれたか。
二人とも疲れていたが、日が沈む前になんとか町まで帰ることができた。
町に入る際、案の定、門番には蔑んだ目で見られた。
おかしい。ちゃんと冒険者カードを見せたのに。
「疲れましたね……宿に行って休みましょう」
「そうだね。……あ」
宿のお金がない。
「えーと……ごめん、お金貸してくれない?」
「お安い御用ですよ」
アイリスは笑顔でお金を渡してくれた。
『箸にも棒にもかからないとはこのことですね』
借りたお金はちゃんと返すって!
◆ ◆ ◆
「ありがとうございます! 一度ならず二度も助けてもらっちゃって……」
「いや、当然のことをしたまでだよ」
俺とアイリスは宿の食堂で夕食を食べていた。
「今度何かお礼をさせてくださいね!」
「いいよお礼なんて」
「そういうわけにはいきません!」
これは引きそうにないな。
「わかった。期待しておくよ」
「はい!」
食事が終わり、俺とアイリスはそれぞれの部屋で就寝した。
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