調査と死の湖
『休眠モードを解除しました。おはようございます』
「んー……おはよう」
朝になり、サユに起こされた。
かなりすっきりとした目覚めだ。
メンテナンスのおかげかな?
「おはようございます」
「おはよう」
挨拶を交わした後、宿で朝食を済ませた俺とアイリスは、準備をしてから星が降った場所へと調査に出かけた。
森へと入り、サユのナビゲートを頼りに、俺が目覚めた場所までアイリスを案内した。
その間、一切危険な生き物とは出くわさなかった。
サユが避けてくれたようだ。
『マスターもこの程度のことはできるようになってください』
いや、そんなこと言われても、索敵とかできないし、一度来ただけで何の目印もない地形とか覚えられないから。
「これはすごいですね……」
アイリスは、森の中にあるクレータ―と散らばる残骸を見て驚いている。
「この透明なのはガラス? こっちは何かの金属?」
アイリスは落ちている残骸を手にとって、様々な角度から観察しだした。
「とりあえず持って帰りましょう」
持って帰るのか。
「手伝うよ」
ガラスや金属片、よくわからない部品などを、アイリスが持ってきた袋にどんどん詰めていく。
「よし、これで全部かな?」
ちょうど昼に差し掛かった頃、残骸を回収し終わった。
「手伝ってもらってありがとうございます」
「いいよこれくらい」
たいした手間でもなかったしね。
「ここでお昼にしましょうか」
「わかった」
アイリスは肉とレタスを挟んだパンと水筒を取りだした。
「はむはむ……」
アイリスはパンをおいしそうに食べている。
「あれ? ユウトさんは食べないんですか?」
「そうだね」
俺は食糧とかは持ってきてない。
この体は食事を取る必要がないらしいし、金欠だからね。
「どうぞ」
アイリスが手に持っていたパンを俺に差し出してきた。
「え? いいの?」
「はい」
アイリスが笑顔で食べるよう促してくる。
美少女からのおすそわけとか、経験したことないぞ。
「あ、ありがとう」
食べなくてもいいのは分かっているが、好意を無下にするわけにもいかないので、ありがたくいただくことにした。
「あーん……って」
ちょ、ちょっと待って!
こ、これは間接キスでは!?
『気持ち悪いですよ』
そんなこと言われても、気になるじゃん!
というか、今気づいたけど、男女が二人でお出かけって……これはデート言えなくもないのでは!?
やばい! 緊張してきた!
アイリスはどう思ってるんだ!?
「?」
アイリスは小首を傾げている。
アイリスは気にしてないみたいだ。
『マスターのことは眼中にないようですね。ありあえない妄想は大概にしてください』
うん、知ってたよ!
でも、ちょっとは夢見させてくれてもよくない!?
「と、とりあえずいただきます」
俺はパンに齧り付いた。
「うまい!」
ソースがピリ辛で、肉の脂の甘味と合わさりうまい。
柔らかなパンと噛みごたえのある肉とレタスのシャキシャキとした食感もいい。
「これ何の肉?」
「狼の魔物の肉ですよ」
また狼の肉!?
狼そんなにいるの!?
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
結局パンは二人で分け合って食べた。
食事が終わって空を見上げると、まだ日が高く上っていた。
「まだ時間があるので、死の湖を見に行ってもいいですか?」
「いいよ」
俺も気になるし。
『危険だと思いますが』
確かに名前からして危なそうではあるよね。
でも、アイリスを放ってはおけないし。
『それはただ単にマスターがその少女と一緒にいたいだけでは?』
それもあるけど、アイリスには恩があるからね。
『そういうことなら仕方ありませんね。マスターも注意してください』
わかった。
まあ危なかったらアイリスを連れて逃げるよ。
◆ ◆ ◆
「ここが死の湖と呼ばれている場所です」
アイリスに連れられて、死の湖まで来た。
サユの索敵のおかげで、道中魔物には出会わなかった。
湖を覗くと、水面に自分の姿が映った。
「これが俺か」
そういえば自分の顔がどうなっているか確認していなかったな。
湖に映る自分を見つめる。
黒髪黒目で、眉毛や睫毛も生えている。
髭はない。
どうやらちゃんと人間に見える見た目をしているようだ。
高校生くらいの年齢か?
前世の顔よりもシュッとしている。
割とかっこいい見た目かもしれない。
前世の俺は、冴えない見た目だったからな。
顔は肌色で、触った感じ柔らかいし人間っぽいが、サユによると俺の知らない謎の金属でできているらしい。
顔以外は金属鎧みたいな姿で、違和感のないデザインがされている。
「噂通り、生き物が全然いませんね」
「え? あ、本当だ」
アイリスに言われて湖をよく見ると、水は透明なのに、魚はおろか、水草さえ生えていない。
こんなに綺麗な水なのに、なんで何もないんだ?
「とりあえず、水を採取して成分を調べてみないと」
アイリスはガラスのコップで湖の水を掬おうとした。
その時、
「きゃあああああああ!」
「なんだ!?」
湖から伸びた何本もの透明な触手が、アイリスを絡め取っていた。
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