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宿と体の機能



 冒険者ギルドを出た俺は、アイリスと連れだって歩きながら周りを見ていた。


 町は、全体的に中世のヨーロッパっぽい雰囲気だ。

 小説や漫画、アニメ、ゲームで見たような光景が広がっている。


 だけど、よくあるファンタジーな種族は見かけない。

 人間ばかりだ。


「星が落ちた場所までの案内のことなんですけど、明日でも大丈夫ですか?」


「あ、うん」


 そういえばそんな話してたね。


「ユウトさんは宿を取られていますか?」


「いいや」


「それなら、とりあえず宿を取りましょう。私が案内しますね」


「お願いするよ」


 宿か。

 そうだよね。

 泊まるところが必要だよね。

 何も考えてなかったな。


『マスター脳みそ詰まってますか? あ、ないんでしたね』


 ちょっと待って!

 確かに頭回ってなかったけど、脳みその機能を司るパーツは備わってるはずでしょ!


「あそこが私の泊まっている宿です」


 アイリスが指さした先には、木造の建物があった。

 見た感じ、なかなか良さそうな雰囲気だ。


「部屋が空いているといいのですが……」


 そう言いながら、アイリスは宿へと入っていく。


「いらっしゃい」


 宿屋の恰幅のいいおばさんが声をかけてきた。


「部屋は空いてますか?」


 アイリスが聞いてくれた。


「空いてるよ」


 よかった。

 あ、ここからは俺が話さないと。


「あの、1部屋お願いします」


「1泊銀貨2枚だよ」


「はい」


 俺はお金を払った。

 残金銀貨1枚か……。

 稼がないとな。


「部屋は2階だよ。これが鍵ね。出かけるときは、預けに来てね」


「わかりました」


 俺は部屋の鍵を受け取った。

 アイリスも自分の部屋の鍵を受け取っていた。


「よかったですね」


「そうだね」


 アイリスには、何から何まで世話になりっぱなしだな


『マスターも見習ってください』


 そんなこと言われても、転生したばかりで右も左もわからないんだから見習いようがないよ。


『ダメ男ですね』


 アイリスを助けたし、多少は見直してくれない?


『それも含めての評価です』


 あ、そうでしたか。 


「この宿の1階に食堂があるので、部屋に荷物を置いた後、よければ一緒に食事でもどうですか?」


「いいよ」


 美少女からの誘いは断れないし、断る必要もないよね。


「よかったです。じゃあ、あとで」


「わかった」


 アイリスと別れて、鍵を開けて自分の部屋に入ると、ベッドと机と椅子とタンスがあり、トイレと風呂が付いていた。


「結構ちゃんとしてる」


 思ってたよりいい部屋だった。


 窓から外を見ると、だいぶ日が傾いている。


 部屋の確認だけした俺は、特に荷物もないので、すぐに部屋を出て宿の1階の食堂でアイリスを待つことにした。


「お待たせしました」


 アイリスが食堂にやってきた。


「どれにしますか?」


「うーん……アイリスのおすすめで」


「ふふ、わかりました」


 メニューを見てもよくわからなかったので、注文はアイリスに任せた。


 どんな料理がくるのか気になるな。


「はいどうぞ」


 注文した品がきた。


 肉と野菜の炒め物のようだ。


 いい匂いがする。

 とりあえず一口。


「うまい」


 機械の体だけど、味覚はあるみたいだ。


「これ何の肉だろう?」


「狼の魔物の肉ですよ」


「え、これが……?」


 調理の仕方がいいのか、臭みをあまり感じないし、肉質もしっかりしている。

 狼の肉ってうまかったんだな。

 いや、この狼の肉が特別うまいだけで、元の世界の狼の肉がうまいかは知らないけどね。


 また見つけたら、捕まえよう。

 あ、でも殺さないといけないのか……。

 この世界に適応するには、やらないといけないのかな?


「ごちそうさまでした」


 あっというまに完食してしまった。


 あとは、風呂に入ってトイレ行って歯磨きして寝るだけだ。


 あ、トイレって必要なのか?


『いいえ』


 あ、やっぱり?

 尿意も便意も感じなかったからそうじゃないかと思ってた。


 じゃあ、食べたものってどうなってるんだ?


『機体を動かすエネルギーに変換されています』


 そうなのか。

 そういえば、この体って何をエネルギーにして動いてるんだ?


『基本的には、大気中の魔力を吸収してエネルギーに変換しています』


 魔力とかあるんだ。

 じゃあ、魔法が使えたりするのか?


『いいえ。マスターは魔法を使うことはできません』


 マジか。それは残念だな。


「では、私は部屋に戻りますね。明日はよろしくお願いします」


「わかった。また明日」


 アイリスと別れて、俺は自分の部屋に戻った。


 さて、風呂に入るか。


 正直、風呂に入る必要があるのかは疑問だが、入ってみたい。


 まずは服を脱ご……ってそういえば、服着てないんだった。


 この金属鎧の姿が、全裸なんだよな。


 そう思うとなんだか恥ずかしくなってきたな。


『露出狂ですね』


 その指摘はどうかと思う。


 風呂場に入った俺は、シャワーを浴びた。


 あ、やばい!

 今俺って機械の体だった!

 水を浴びたらショートするんじゃないのか!?


『この機体には外部も内部も防水処理が完璧に施されているので、問題ないです』


 セーフ!

 危ない危ない。

 故障したら大変だ。


 備え付けのシャンプーで頭を洗う。


 さらさらとした手触りだが、この髪の毛も金属なんだろうか?


 シャンプーを洗い流して、備え付けのボディソープで体を洗う。


 体が金属だから、つるつるしている。


 ……ん? つるつる? なんか足りないような……。


 下半身に目を向けた。


 な、ない!? 男の象徴がついてない!?


 それに、おしりが割れてない!?


 なんてことだ!


 いや、おしりが割れてないのは正直どうでもいいけど!


 俺は絶望に打ちひしがれた。


『使う予定のない、もともとマスターには不必要なものではないですか。そこまで落ち込むようなことですか?』


 使う予定がないとか決めつけないでくれない!?


 よし俺は決めたぞ!


 人間の体に戻してもらう!

 そして、うはうはな生活を送るぞ!


 でも、それにはもう一度あの二人に会う必要があるな。


 どうすればいいんだ?

 わからん。


 一旦、湯船に入って落ち着こう。


「ふー……」


 落ち着いた。

 温かい。

 湯船に浸かると、ちゃんと気持ちいいと感じれる。


 普通に人間だったときと何も変わらない感覚だ。

 この体いったいどうなってるんだ。


 風呂から上がった俺は、タオルで体を拭き、洗面台に行って歯ブラシで歯を磨いた。


『食べかすも雑菌も消去しているので、歯を磨く必要はありませんが?』


 そんなこともできるのか。

 まあ、こういうのは気分だよ。気分。


「よし、寝るか」


 歯磨きが終わったので、ベッドに向かう。


「あれ? そういえば、俺眠れるのか?」


『眠れますよ』


「でも、眠る必要はないとか?」


『いいえ。マスターが寝ている間に、私が機体のメンテナンスを行うので、多少は寝ていただく必要があります』


「そうなんだ」


 とはいえ、眠気がないから、眠り方がわからない。


『私が休眠モードへと切り替えます』


「あ、そうなんだ。じゃあ、朝になったら起こしてくれ」


『わかりました』


 起きててもどうしようもないし、普通に朝まで寝よう。


『休眠モードに移行します』


 サユの声が聞こえた後、俺は何の抵抗もなくすーっと眠りに落ちた。



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