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アイリスと情報収集

 


 狼との戦いが終わり、俺は腰を抜かしている少女に近づいて声をかけた。


「えーと、大丈夫?」


「はいぃいいいいいい。ありがとうございますぅうううううう」


 少女は涙と鼻水を垂れ流しながら感謝の言葉を告げてきた。


 言葉が通じないかもと一瞬思ったが、普通に会話できたな。


「とりあえず落ち着いて」


「はいぃ……」


 目を擦り、ずびっと鼻水を啜る少女。

 目立ったケガもしてないみたいだし無事でよかった。


「ふー……」


 しばらくして少女は落ちつきを取り戻した。


「あの、助けていただいてありがとうございます。私はアイリス・ブリッジといいます」


 アイリスは金髪碧眼の眼鏡の美少女で、歳は高校生くらいにみえる。

 ただ、今は涙と鼻水で顔をぐしょぐしょにしていて、いろいろと台無しだ。


「あ、どういたしまして。俺はかい 優斗ゆうとっていいます」


「カイ・ユウトさんですね。ユウトさんは冒険者の方ですか?」


 あ、冒険者とかいるんだ。

 ということはもしかして、ここって俺の元いた世界とは違うファンタジーな世界なのかな?


「いえ、冒険者じゃないです」


「そうなんですか? 確かにへっぴり腰でしたけど、狼相手に素手で戦ってましたよね?」


 やめて! そんな純真な目で俺を見ないで! ちゃんと戦えてたと思ってた自分が恥ずかしいから!


「いや、その、たまたま近くにいて悲鳴が聞こえたから、助けようと思って来ただけなんだ」


「え!? わざわざ駆けつけてくれたんですか!?」


「う、うん」


 顔が近いよアイリスさん!

 良い香りもするし、すごいドキドキするんですけど!


『変態ですね』


 いや、違うから! たまたま匂いがしただけで、自分から嗅いだわけじゃないから! 


「あっでも、それならどうしてこんなところに?」


 アイリスがすっごい不思議そうに聞いてくる。


 いや、俺に聞かれても困るんだよね。


 むしろ、俺があの二人に問い詰めたい。


 とはいえ、なんか言わないと。


「ちょっと……いろいろあって自分の体について考えていたというかなんというか」


 嘘は言っていないよ。嘘はね。


「な、なるほど。つまり、森に籠って自分を鍛えていたのですね!」


 うん、全然違うね。


 でも、機械の体になっちゃったとか説明しても理解してもらえるかわからないし、わざわざ訂正しなくてもいいよね。


「ま、まあそんなところかな。アイリスさんはどうしてここに?」


「さん付けは慣れていないので、呼び捨てでいいですよ」


「え? あ、はい」


 女の子の名前を呼び捨てとか、二次元キャラにしかしたことないぞ。

 やばい。意識するとなんか緊張してきた。


『私のことも呼び捨てにしてますよね?』


 あ、そうだったね。

 でも、サユは俺のサブユニットだし、無機質な声が聞こえるだけで姿が見えないから特に緊張とかしないな。


『そうですか。つまり私のことは、いてもいなくてもどうでもいいと思っているわけですね』


 いやいやいや! そんなことないから! サユがいないと困るよ!


『あと、私はこの機体のサブユニットであって、あなたのサブユニットになった覚えはありません』


 ええ!? この機体のメインユニットは俺なんだから、実質サユは俺のサブユニットでしょ!? てか、もうそれただ否定したいだけだよね!?


「あの、どうかしましたか?」


「え?」


 気付くと、アイリスが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「いえ、急に黙ったかと思ったら表情がどんどん変わっていったので、何かあったのかと」


 あーそうだよね。サユの声は俺にしか聞こえてないし、俺もサユとは心の中で会話してるからね。


 傍から見たら黙ってるのに、表情だけころころ変わってたらそりゃ変に思うよね。


「あ、いや、なんでもないよ」


「そうですか?」


「うん、心配かけてごめんね」


「いえ」


 どこかのサブユニットと違って、会ったばかりの俺の心配をしてくれるなんてアイリスは良い子だなー。可愛い。


『私も、こんなに無能なメインユニットで大丈夫かと心配していますよ』


 それはサユが自分の心配をしているだけだよね。


『その通りです』


 あ、肯定するんだ。


 ま、まあ、それはさておき話を進めよう。


「それで、ア、アイリスは、ど、どうしてここに?」


 やばい。女の子の名前を呼び捨てにすることに緊張してちょっとどもった。


「私はもともとは死の湖の調査の為に近くの町まで来てたんですけど、町に滞在しているときに森に星が降ってくるが見えたので、予定を変更して星が落ちた場所へと向かっていたんです」


 アイリスは素直に答えてくれた。


 よかった、アイリスは俺がどもったことは気にならなかったみたいだ。


 てか、死の湖とか星が降ってきたとか、めっちゃ気になること言ってるんだけどこの子。


「じゃあ、星が落ちた場所に向かっている途中で狼に襲われたってこと?」


「はい」


「他の人は?」


「あ、私一人です」


「え? 一人で来たの? 危なくない?」


「その……この森には死の湖があって、死の湖には生き物が近寄らないので安全だと聞いていたので……それに、日帰りですぐに町まで帰る予定だったので……」


 バツが悪そうに言うアイリス。


 ここから町まで近いのか。

 いいこと聞いたな。


「そうなんだ。それで、死の湖って何?」


「死の湖は、生き物がまったく生息していない湖のことです」


 え、何それ。それってただのでっかい水たまりってことじゃないか?


「でも、さっき狼に襲われていたよね?」


「たぶんそれは、死の湖から離れすぎたからだと思います。途中までは生き物とあまり出会わなかったので」


「なるほどね」


 この辺りまでは死の湖の影響がなかったってことかな?


「えっと、星の落ちた場所ってわかる?」


「えっと……たしかあっちの方だったかと……ちょっと自信ないですけど。狼に追いかけられていたのでずれてるかもしれません」


 アイリスの指さす先は俺が来た方角だった。


 ひょっとするともしかして星が降ってきたのって……俺のことだったりしないよね?


「その、星が降ってきたのっていつ?」


「おとといです」


『時空間航行宇宙船が墜落したのと時間帯は一致しています』


 うん、今確定してしまいましたね。


 てか、俺ってば丸2日も気を失ってたのか!?


『そうですよ』


 マジか。

 その間にサユが体を修復してくれてたんだよね?

 どんだけダメージを受けていたんだ。


「そういえば、ユウトさんはこの森にいたんですよね? 何かご存じありませんか?」


 うん、心当たりありまくりだね。


 ただ、アイリスに場所を教えていいものかどうか……。


『特に問題はありません。時間が経てば自ずと発見されるでしょうし』


 あ、そうなんだ。


 じゃあ、伝えておこう。


「ちょっとそれらしきものを見かけたような気が――」


「本当ですか!?」


 めっちゃくいついてきた!


「案内してくれませんか!?」


「えーと……」


 どうしよう。場所を教えるだけのつもりだったんだけど。


「あ、すみません私ったら……ユウトさんにも都合がありますよね……」


 そんな悲しそうな顔されたら、断れないじゃないか。


「……いいよ」


「いいんですか!?」


「うん」


「ありがとうございます! あ、その前にいいですか?」


「ん? どうぞ?」


 俺が許可を出すと、アイリスはとことこと狼に近づき、ナイフを取りだして気絶している狼にトドメをさした。


「えい!」


「え?」


「どうしましたか?」


「いや、なんでトドメさしたのかなと思って」


「殺しておかないと、危ないですから」


 あー、気絶させただけだったからね。


 ってそうじゃなくて。


「命を奪う必要はないんじゃない?」


「でも、ここで殺しておかないと、次また襲われたときに助かるとは限らないですから」


「あー……」


 普通はそうだよね。


 俺は機械の体だから、狼に噛まれても死なないけど、生身だと怪我したり、最悪死ぬよね。


 ただ、平和ボケした日本人としては、命を奪うことに忌避感がある。


 まあ、直接手を下すのが嫌なだけで、前世では普通に肉とか魚とか食べてたんだけどね。


 とりあえず死んだ狼には手を合わせとこう。


 なむ。


「よし、次は……」


 全部の狼にトドメをさし終わったアイリスは、今度は狼の毛皮を剥ぎだした。


 普通はグロいとか思うんだろうが、アイリスの手際が良く、綺麗に剥ぎ取るので、あまりグロいとは感じなかった。


 むしろ、生命の神秘を感じた。


『この少女とマスターを取り換えてもらいたいですね』


 見捨てないでお願いします。


『ああ、今のは単なる独り言なので気にしないでください』


 絶対独り言じゃないよね!? めちゃくちゃ気になるんだけど!


『それはそうと、この少女と話して少しは情報を得てください』


 はぐらかした!?


 とはいえ、これ以上サユと話しても埒が明かない。


 とりあえず、アイリスに質問でもしよう。


「なんで、毛皮剥いでるの?」


「解体しておくと、少し高く買い取ってくれるんですよ」


「あ、狼って売れるんだ」


「はい。毛皮は服や防具、小物などの素材になりますし、肉は食糧になるんですよ」


「え? 食べれるの?」


「はい。おいしいですよ」


 これ食えるのか。

 狼なんて食べたことないんだが。


 あれ? そういえば俺って食事の必要あるのか?


『いえ、食事の必要はありません』


 あ、そうなんだ。

 じゃあ、もうご飯食べられないのか。

 ちょっと残念だな。


『食べれますよ』


 え? 食べれるの?

 機械の体なのに?


『はい』


 マジか。

 すごいなこの体。


「これでよしと」


 しばらくして、アイリスは3匹の狼の毛皮を剥ぎ取り終わった。


「これ、どうするの?」


「どうって、持って帰……あ」


 何かに気付いてアイリスは固まってしまった。


「やっぱり、案内してもらうのは、町に帰ってからでいいですか?」


「あ、はい」


 そうだよね。

 3匹の狼の毛皮と肉を持ったまま探索とかしたくないもんね。


 というわけで、一旦町に帰ることになった。



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