機械の体とサポートAI
「んん……」
目を開けるとすぐ目の前に横に伸びる草が見えた。
空と地面が左右に別れている。
片方の頬、体の側面、両手足からは草と土の感触がする。
どうやら俺は地面に横たわっているらしい。
手足に力を入れてみた。
キィィン。
「お、体の感覚がある」
そのまま起き上がってみる。
キィィン。
「よいしょっと」
しっかりと2本の足で立つことが出来た。
周りを見渡すと木がたくさん生えており、地面には草が広がっている。
少し離れた所にはクレーターがあった。
「どこだここは?」
キィィン。
まったく見覚えのない場所だ。
さっきのは夢だったのか? いや、今も夢の続きか?
『おはようございます』
「うおっ!?」
キィィイイン。
急に声が聞こえて、俺は辺りをキョロキョロと見回した。
だが、人の姿は見えない。
木の裏にでも隠れているのだろうか?
「いないな……」
キィィン。
近くの木の裏を覗いてみたが、誰もいない。
さっきの声は気のせいか?
『気のせいではありません』
また声が聞こえた!?
無機質な女性の声だ。
キィィン。
辺りを見回すも、やはり影も形も見えない。
「誰だ? おばけか?」
キィィン。
俺は身構えながら宙に向かって質問した。
『失礼な。お化けなどではありません。私は低能なあなたをサポートするために、この機体に搭載された高性能サブユニットです』
え? なんかさらっと低能とか言われたんだけど。
しかも、自分のことは高性能とか言ってるし。
「えっと……この機体とかサブユニットとかよくわからないんだけど?」
『二つの節穴で、ご自身の体をよく観察してください』
節穴って……普通に目で良くない?
とりあえず、言われた通り、俺は自分の体を見下ろした。
キィィン。
……すっごいテカテカなんだけど。
金属の光沢が日の光を反射している。
全身鎧を着ているのかと思うほど金属に覆われているが、手で触れると感覚があることから、この鎧のような金属自体が俺の体のようだ。
キィィン。
……そういえば、さっきから体を動かす度に変な音がしてたな。
キィィン、キィィン。
確認の為に手を上げたり足を動かしてみたりすると、体の各部位からモーターのような機械が唸る音が聞こえた。
「これは……もしかして……?」
『ミジンコ並みに低能なあなたにもわかりやすく言うと、あなたは機械の体に転生したということです』
マジか。
機械の体ってことは、俺はロボットになったのか。
てか、もしかしてあの美少女と美女の二人って神様だったのか?
……まあ、なんとなくそんな気はしていたけど。
初対面なのに俺の名前と死因を知っていたし、転生させることもできるんだもんな。
じゃあ、あの摩訶不思議な会話やカプセルに入れられたのも夢じゃない?
「あ、もしかして」
クレーターに近づく。
見覚えのある金属片が散らばっている。
これは……カプセルの残骸だ。
ほとんど原型を留めていない。
カプセルに入れられた俺はここに落ちたってことか?
よくわからんが、これだけ大きなクレーターが出来ているのだから、相当な衝撃だったはずだ。
「よく無事だったな俺」
『いえ、無事ではありませんでした』
「え?」
言われて自分の体をまさぐる。
痛みもないし、どこもおかしなところはないように思うけど。
強いて言えば機械の体になってることがおかしいんですけどね。
『この星に着陸した際に本機体の40%が損傷。当該メインユニットである低能なあなたは意識がなく役立たずだったため、私の判断で自己修復機能を起動し、時空間航行宇宙船のパーツを取り込み機体を完全修復しました』
……なるほど。
つまり、俺がこの機械の体を自由に動かせるメインユニットとやらで、サブユニットはサポートAIみたいな感じなのかな?
そして、おれが意識を取り戻すまでの間に、この自称高性能サブユニットがいろいろやってくれたと……。
「ご迷惑をおかけしました」
とりあえず頭を下げて謝っておく。
『わかればいいのです』
これは許されたのか?
声に抑揚がないから、いまいちわからないな。
というか、クレーターに立って何もない空間に向かってなぜか謝っている全身金属姿の男……傍から見たら相当シュールだな。
「あー……サブユニットさん?」
『なんでしょうか?』
「サブユニットって呼びづらいんだけど、他に何か呼び方とかない?」
『現在、私に個体名称は登録されていません』
「そうなのか」
『適切な名前を付けてくだされば、それで呼んでも構いません』
あ、俺が名前考える感じなんだね。
「うーん……それなら……お前の名前はサユにしよう。サブユニットを縮めてサユ」
日本人っぽい名前の響きだし、個人的には割と良いと思っているけど、どうかな?
安直過ぎたかな?
『サユ、ですか。まあいいでしょう。錆び付いた思考回路の割にはまともなセンスだと褒めてあげます』
うん、意外と大丈夫だった。
でも、罵倒は挟んでくるんだね。
『当該ユニットは名称を〈サユ〉で登録しました』
「よろしくなサユ。俺のことは優斗って呼んでくれ」
『了解しましたマスター』
あれ? おかしいな。俺、名前で呼んでくれって言ったよね? なんでマスター?
もしかして名前で呼ぶの嫌なの?
『そんなことはありませんよマスター』
うん、これはあれだね。
まったく名前で呼ぶ気ないよね。
「はあ……もうマスターでいいよ」
『了解しました。これより私は、低能なマスターを少しは使いものになるように、微力でサポートしていきます』
いえ、できれば全力でのサポートをお願いします。
現時点で頼れるのはサユだけなんで。
それに、サユの話によるとこの星? 世界? に来た時点で俺死にかけだったみたいだし、俺一人じゃとても生き残れなさそう。
てか、大破した後に修復したってことは、せっかくの転生ほやほやの新品ボディが今はカプセルの残骸とのつぎはぎだらけってことだよね?
いや、実際はサユが綺麗に直してくれてるから見た目は何も問題ないし、性能もたぶんそんなに変わってはいないんだろうけど。
『いえ、代わりの部品が見繕えなかった箇所もあるので、完璧に直ったわけではありません。そのため、マスターが転生したての頃より若干性能は下がっています』
……え? まだ何もしてないのに俺ってばスクラップからのリサイクルで劣化してるの? ひどくない?
まあ、元はと言えばあの二人のせいだけど。
いやうん、いくらなんでもこの所業はひどすぎるな。
今度会ったら文句を言おう。
『それはともかく、これからの方針はどうなさるのですか?』
「え? 方針って?」
『ここを拠点に周辺を探索するのか、森を抜けて人を探すのかなどの今後の活動方針です』
「ああ、そういうことね」
とはいえ、わけもわからず放りだされたから、何をすればいいのかわからない。
「ちょっと何したらいいか分からないな」
『では、まずは情報の収集を図るべきです』
「そうだな」
って言っても、人っ子一人見当たらないこんな森の中では何もわからないんだよな。
まずは人を探さないと。
問題は、集落とか村を見つけるために森の中を探るか、町や都市を目指して森を抜けるかだよな。
「きゃああああああ!」
「なんだ!?」
悩んでいると、突然森の中から女の悲鳴が聞こえた。
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