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転生と準備

 


「親方ー! 資材持ってきましたー!」


「おう! そこの空いてるとこに置いとけ!」


「わかりましたー!」


 俺は大学に通いながら建設現場でアルバイトをしていた。

 今はビルの建設現場で資材運びや掃除などの雑用をしている。

 職場の人たちは気の良い人たちばかりで不満はない。


 ただ、寝坊して1時間遅刻したときは親方にしこたま怒られた。

 前日に1話から最終話までアニメを一気見したのがいけなかった。


 バイトが終わって帰ると疲れてすぐに寝てしまう。

 そのせいで勉学がおろそかになりつつある。


 このままではいけない。

 そう思いつつも、たまに出来た休みでついついアニメや漫画、ゲームにうつつを抜かしてしまう。


 自制心がなさすぎる。


 ならバイトをやめてその時間を勉強に充てればいいのかもしれないが、趣味にお金がかかるのでアルバイトをやめるつもりはない。


 あれ? これってやばいのでは?

 まあ、まだ単位落としてないし大丈夫でしょ!


 大学の友人は授業で一緒になったら軽く話す程度で、遊ぶ時間がないので深い付き合いはない。

 時間が作れないので彼女もできない。

 決して見た目や性格のせいではないはずだ。

 きっとそうだ。


 代わりに、むさくるしいおっさんたちとは仲良くなったが、ちょっと複雑な気分だ。

 男に好かれてもな……。


「よし! 休憩入っていいぞ!」


 親方の号令で、休憩時間になった。

 俺は建物の外で休むことにした。


「ふー……」


 ヘルメットを外して額の汗を拭う。

 少し体をほぐすように伸びをした。


「んー……」


 太陽が眩しい。

 ビルの日陰で一息ついていると、ふいに突風が吹いた。


 ガコッ!


 頭上で何か音がした。


 見上げると鉄骨が落ちてきていた。


「危ねえ!」


 親方が焦った表情で叫んでいる。


「え?」


 避けることもできずに呆然と立ち尽くす俺の頭に鉄骨が直撃した。


 ガツン!


「ッ!?」


 頭が砕けた鈍い音がした。


 ありえないほどの痛みが俺を襲い、地面に倒れた。


 そして俺の意識はブラックアウトした。



 ◆ ◆ ◆



 気がつくと、白い空間にいた。

 何もなく、誰もいない。

 天井や床すらなく、ひたすら白いとしか言いようのない空間だ。


 体を動かそうとしたが手足が動かせない……というか体の感覚自体がない。


 辛うじて目線だけが動かせるが、どうやって物を見ているのか自分でもわからない。


「ここはどこだ……?」


 口が動いた感覚はないが、話せるし音も聞こえるようだ。


「夢、か……?」


 そう言葉を発したものの、これが夢であるとはなぜか思えなかった。


 おぼろげながら覚えているさっきまでの出来事が本当なら……。


「俺、死んだのか……」


「即死だったね」


「うおっ!?」


 突然声を掛けられて驚いた。


 誰もいなかったはずのこの白い空間に、いつの間にか人がいた。


「よっ!」


 そう言って、軽く手を上げたのは、これまでの俺の人生で一度もお目にかかったことのないほどの美少女だった。

 銀髪銀眼で、なぜか白衣を纏っている。

 気さくな感じだが、雰囲気に反して表情は乏しく、どこか無機質な印象を受けた。


「えっと……君は……?」


「あたしはマキナ。君の名前は『かい 優斗ゆうと』であってる?」


「あ、はい」


「自分がどうして死んだのか覚えてる?」


「えーと……確か……ビルの建設現場でバイトしてて……それで、突風が吹いたと思ったら上から鉄骨が落ちて来て……それが頭に直撃して死んだ……んだと思う」


「そうだね。それであってるよ。良かったー。ちゃんと自我もあるし記憶も持ってるし、受け答えも問題ないね」


 俺の受け答えを聞いて満足そうに一人で頷くマキナ。


「じゃあ、とっとと始めようか。ユーちゃーん!」


「はいは~い」


「うおっ!?」


 なんかもう一人来た!


 金髪碧眼で、ボンキュッボンの抜群のプロポーションをした美女だ。

 この美女が、マキナの呼びかけに間延びした声で返事をしたようだ。


「どうも初めまして優斗ゆうとさん。私のことはユーと呼んでくださいね」


 妖艶な美女は、慈愛に満ちた表情を浮かべながら自己紹介をしてきた。

 パッと見、母性を感じさせる絶大な安心感があるが、同時に根源的な危険も感じた。


「は、はあ。わかりましたユーさん」


 今の俺の状態がどうなってるのかわからないが、もし表情があったら俺は今苦笑いしているだろう。


「それで、どうだったの?」


「とりあえず大丈夫みたいだね」


「それは良かったわ。それで、今回はどうするの?」


「新しく試作機作ったから、それに入れてよ」


「わかったわ。さっそく取り掛かるわね」


「うん、お願いね」


「いくわよ~えい」


 マキナと一通り話し終わったユーさんが手を振ると、俺の体? が、ふわふわと浮かび上がって何かに吸い込まれた。 


「おお?」


 相変わらず体は動かせないが、視線を動かすと透明な蓋のような物があり、周りを丸みを帯びた金属製の板に覆われているのがわかった。

 どうやら俺はカプセルのような物の中に入れられたようだ。


 透明な蓋越しにマキナとユーさんの姿が見える。


「あらら? これはなかなかのエネルギー保有量ね」


「ふふん♪ 結構力作だからね!」


「これを運用する場所の世界強度はいくつ?」


「7981不可思議くらいだね」


「それくらいあれば星が滅ぶこともないわね」


「ユーちゃんじゃないんだから、そこらへんはしっかり考えてるよ」


「その言い方はちょっとひどくない?」


「本当のことじゃん?」


 マキナにちゃかされたユーさんは、ぶすっとした顔をしたまま何かの作業を続けている。


 え? 何? 不可思議? 俺からすると会話が不可思議なんですが? というか、星が滅ぶとか物騒な言葉が聞こえたんですけど?


 というか何の作業をしてるんですかね?

 めちゃくちゃ不安なんですが。


「あの、何か説明とかないんですかね?」


「行けばわかるよ」


「どこに!?」


 質問してみたが、マキナはちゃんと答えるつもりはないようだ。

 カプセル越しでも会話できるんだな。


「終わったわよ~」


「ありがと。じゃあ最後にちょこっと調整するから少し待っててね」


 ユーさんの作業が終わり、今度はマキナが何か作業を始めた。


「それが終わったら説明してくれるのか?」


「しないけど?」


「しないのかよ!」


「行けばわかるよ」


「さっきと言ってること同じじゃん! 危険なこととかないのか?」


「危険は……ありまぁす!」


「ダメじゃん!」


「大丈夫だって。なんとかなるなる」


 適当だな!


 ユーさんは微笑ましそうに見守っているだけで何も言わない。


 やばい。だんだんと不安が増してきた。


「よし終わった! そいじゃま、出発しようか!」


「ちょっと待て! 出発ってどこに!? 説明プリーズ!」


「じゃあねー」


「いってらっしゃ~い」


 俺の発言をさらっとスルーし、笑顔で手を振るマキナとユーさん。

 そして、俺の入っているカプセルが勢いよく射出された。


「うわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!」



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