表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/40

古代遺跡への挑戦

 翌朝、僕たちは古代遺跡の前に立っていた。

 ケールさんに貰った回復薬を飲んだおかげで、昨日の模擬戦の怪我や疲労も全て無くなり、体調は万全である。

 朝起きた時の筋肉痛は、これまで感じたことのない痛みだったが、それも一瞬でなくなった。

 高級な回復薬なのだろう。

 エルフの秘薬とかかな?



 古代遺跡は、街でよく見るようなレンガや石を積み上げた建物ではなく、一枚の大きな岩をくり抜いて作ったように、つなぎ目がどこにも見当たらない建物だった。

 どうやって造られたんだろう、これ。


「近くで見ると、そんなに大きくないんですね、ケールさん」

 僕はケールさんに尋ねる。

 古代遺跡と言うからには、街が一つ入るくらいの大きさはあるかと思ったが、近くで見ると意外と小さかった。

 僕の村の平均的な一軒家が5軒くらい入る程度であろうか。


「確かに地上部分はそんなに大きくないな。

古代遺跡の本体は地下にあるんだ、チェスター」

「そうなんですね」

「面積で言うと、地上に出ているのは全体の1パーセント以下だ」


 そうなのか。

 この建物の100倍以上と考えると、たしかに大きいな。

 全て探索するのには、かなりの時間がかかりそうだ。


「さあ、こんなところでぼさっとしてないでさっさと入るぞ」


 どこから入るんだろう?

 壁には切れ目一つなく、中に入る場所があるようには見えない。

入口は反対側にあるのかな?



 ケールさんは古代遺跡の一部に手を当てた。

 すると、古代遺跡の壁の一部に薄い光が走り、その部分の壁が消える。


「今のは……?!」

「よくわからん。不思議だよな、古代遺跡って。どんな文明が作ったんだろうな」


 ケールさんは口を開けて笑うと、古代遺跡の中に足を踏み入れた。

 サラとリネールは、躊躇うことなくケールさんの後に続く。


「ほら、お前もついてこい」


 僕は慌てて三人の後を追う。


 古代遺跡の中は、壁全体が青白く発光しているようで、明るかった。

 どういう仕組みになっているんだろう、これ。

 僕は思わず壁をしげしげと眺めてしまった。


「置いてくぞ、チェスター」


 ケールさんの声に振り返ると、すでに奥に向かってケールさんは歩き出していた。

 サラとリネールは数歩歩いたところで、僕の方を見て止まっている。


「今のうちに古代遺跡の探査の基本を教えておくが」

 ケールさんは鞄から金属の棒を取り出すと、カチカチと音を立てて伸ばしていった。

「絶対に不用意に触るな、だ。不用意に触ると、」

 ケールさんは少し下がっておけ、というと、金属の棒で1メートルほど前の地面を突いた。


「うわっ!」

 轟音を立て、勢いよく地面から槍が何本も飛び出してきた。

 穂先は鋭く、あそこに立っていたら串刺しになっていただろう。


「とまぁ、こんな感じで死ぬ」


 ケールさんは鞄からペンを取り出すと、地面に印を書いていく。


「後からくる人たちのために、罠を見つけたら印を書いておくんだ。

本当は解除できればいいんだが、時間がかかるから今日は印をつけるだけだ。

後でギルドの専門の人たちに解除してもらおう」


 印をつけ終わると、ケールさんは槍の間を歩き始めた。


 僕たちもケールさんの後に続く。


「なぜわかった」


 サラがケールさんの背中に声をかけた。

 ケールさんは既に槍が生えている場所を抜けていた。


「なぜ罠があそこにあるかわかったか、って質問だよな?」

「そう」

「簡単に言うとだな、古代遺跡の罠は2パターンに分類されるんだ」


 ケールさんは指を二本立てた。


「機械式と魔力式だな。その名の通り、罠の発動を機械で行なっているか魔力で行なっているかの違いだ。

それぞれで見つけ方が異なる」


「どうやって見つけるのですか?」

 リネールが口を挟む。


「魔力式は簡単だ。明らかに魔力が濃い場所があったら、その周辺に大体設置されている。魔力の感知さえさぼらなければ、大丈夫だ。問題は機械式だ」


 ケールさんは後ろを振り向いて槍の群れを指差した。

 僕が釣られてそちらを見ると、槍が静かに地面の中に戻って行くところだった。


「あの槍も機械式だ」

「……そうですね。確かに魔力は全く感じられません。他の場所と違いは見つけられません」


 リネールは少し集中するように槍のあった場所を見つめると、首を振った。


「この棒を使うんだ」


 ケールさんは先程の金属の棒を取り出すと、僕に手渡してきた。

 手に持った瞬間、ずしりとした重みが僕の手を押す。

 この棒は、見た目よりもはるかに重い。


「重いですね、これ」

「そうだ。ある程度の重さがないと反応しない罠もあるからな」


 僕は先ほどのケールさんを真似して、棒を伸ばしていく。


「その棒で地面を叩いていくんだ。機械式の罠が合ったら反応する」

「……なんていうか、割と力ずくなんですね」

 僕は数歩先の地面を棒で叩きながら、前に進む。


「これ、棒が重いから、かなり手が疲れますね。

ずっと叩いているとなると、かなり厳しい気がします」

「修行にもなるし、安全に古代遺跡を探査できるし、一石二鳥ってやつだな。

まあ、他にもやり方は色々あるんだが、俺はこれが気に入っている」


 他の手段はまたの機会にな、とケールさんは満足そうに何度も頷いている。



「チェスター、敵の気配」


 その時、サラが鋭く声を上げた。


 数秒後、曲がり角の向こう側から足音がしてきた。

 音からすると、それなりの大きさの敵だろう。


「ちょうどいいな。この階にはそんなに強力な魔獣はいないだろうし、力試しだ」


 ケールさんは一歩下がると、お前らだけで戦ってみろ、と僕たちに告げた。


 僕は『異次元』からエルダーオーガの骨を取り出し、構える。


 そして僕たち三人は、僕を敵側の頂点とした三角形を作る。

 僕が敵を押さえ、後ろからサラとリネールが攻撃する、僕たちの最も得意な形だ。


 初戦闘だから、手加減抜きで全力で行かせてもらう。


 僕はエルダーオーガの骨を握る手に力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ