プロローグ
まず初めにこの手記を手に取るものに
なぜ私がこのような乙女のごとき行為に興じる事になったのかを説明せねばならないだろう。
現在魔界は東西南北の四つの地区に別れ、それぞれの地区を別の魔王が統治している。
これは今は亡き大魔王が崩御の際に見つかった遺書に記されてあったことに従ったためだ。
私は東の町"アルパンド"の統治を任された。
つまりは魔王である。
就任から初めの100年程は治安の向上やインフラの整備、法の制定などで忙しく過ごしていたわけだが
それ以降はどうだろう。
部下によってほとんどの仕事は円滑に進み私の仕事はハンコを押すくらいという有様だ。
優秀な者を採用した己の目が恨めしい。
少しくらいポカをしてくれたのなら優しく手を差し伸べて
「きゃー魔王様すてきー!」
などと賛辞を受けていたことは明白である。
最近は部下の目線も心なしか冷ややかなものになっている気がするし、
このままでは愚王として私に死後語り継がれてしまう!
まずいと思った私はペンをとり、これを記すことにしたのである。
私が日々何をして過ごし如何に偉大で崇高な魔王であったかを理解してもらうために!!
この書を私以外の者が読んでいるということは既に私は亡くなっていることだろう。
恥も外聞も気に留めず書き連ねた等身大の私のことを語り継いでくれることを望む。
アルパンド魔王 ヴェニス